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コミカライズ連載中【WEB版】享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜《第11回ネット小説大賞 金賞受賞》  作者: ラクシュミー


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486.金より羊

結局、私はヘイデンさんに用事があるからと言って、食事の誘いを断った。ただ、私から連絡を取るにも魔術で飛ばす文は、お互いに文を送ることを許可しないと飛ばせない為に、リキ経由で返事をした。すると、まだ私が『オアシス』にいる間に、残念だけどまた機会があればとヘイデンさんから伝言がきた。


「なんだか申し訳ない……」

「いや、しょうがねぇだろ。ショウで接したんなら」


ショウの姿を知っているのは限られている。王国内では身内と皇太后様、王妃様、そして飴ちゃんの事件の時にキャシーちゃん、レベちゃん、サンちゃん、そしてカリム。だけど、春季休暇に入ってすぐにレベちゃんからのお願いで、ベルと共に男装をしてカフェにいる所をソウヤとリキに見られた。しかも、男装しているのを忘れて私が声をかけてしまったことで、バレてしまった……。


「あー、いたいた。ジョアンちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど〜」

「どうしました?」

「ちょっとアルバイトしない?」

「「はい?」」


奥からリキママとリキの義姉さんのカレンさんが、一緒にやって来てアルバイトのお誘いをもらった。リキも初耳だったらしく、私と共に聞き返していた。


「あのね〜、この日なんだけど。元から、実家に帰らないといけない用事があったの。でも、予約が多くてね〜。だから、出来たらお手伝いしてもらえないかな?」


カレンさんが予約カレンダーの指差した日は、偶然にも今さっきヘイデンさんの誘いを断った日だった。


「ちょっ、ちょっと、義姉さん!ジョアンは、こう見えても貴族令嬢だよ?」

「リキ!こう見えてもって何よ!」

バシッ「痛てっ」

「こらっ!リキ!!ジョアンちゃんに失礼なこと言わない!!殴るよ!」

「母さん、殴ってから言うなよ!」

「うっさい、リキ!ごめんねぇ〜ジョアンちゃん。でも、本当に申し訳ないんだけど手伝ってもらえない?ジョアンちゃんなら、人柄も知ってるし厨房の中も知ってるでしょう?他に頼むよりは安心なのよ〜」


『オアシス』の厨房内を知っているのは、一般科の時に時々リキパパとリキ兄に前世の料理を教えていたから。だからなのか『オアシス』は王都では唯一 ”食の女神” のご加護がある店だという噂がある。ただコレは、レシピを販売した直後の話で、販売してしばらくすると王都の至る所に『元祖“食の女神”の店』だとか『本家“食の女神”の店』が出始めたらしく、片っ端からお母様がその店に出向き、とーっても為になるお話しをしたらしい。今では、商業ギルドでレシピを購入する際に過大広告をしないという契約が結ばれるようになり、そんな肩書きの店はなくなった。


「良いですよ。私で良ければ」

「ありがとう。給与は貴族令嬢にとっちゃ端金かも知れないけど、ちゃんと払うからね」

「あっ、あの給与のことなんですけど……」

「あら、やっぱり高くないとダメかしら?」

「あっ、いえ、そうじゃなくて、全部樽漬けで貰いたいんですけど」

「「「は???」」」

「あっ、やっぱりダメですよね?」

「「「あっはははは」」」

「お金より樽漬けの方が良いって、ジョアンらしいな」

「あんなので本当にいいの?ご自宅だと、もっと美味しいの食べてるでしょう?」

「えっ?大好きなんですよ『オアシス』の樽漬けが」

「そう言って貰えて嬉しいけど、本当に良いのかい?ウチに気を遣ってないかい?」

「いえ、是非とも魔羊でお願いします!!」


こうして私は、ヘイデンさんに誘われた日に『オアシス』でアルバイトすることになった。ちなみにカレンさんは、その日実母の誕生日だということで、実家でお祝いをするらしい。



*****



ーーーアルバイト当日。


「おはようございまーす」

「あら、ジョアンちゃん。午後からで良かったのよ?」

「カレンさんに、渡したいものがあって」

「えっ?あたし?」

「いつもカレンさんにはお世話になっているので……コレを。ご実家のお母様が誕生日ということなので、ちょっとしたものですがプレゼントです」

「えっ?母さんに?開けていい?」


カレンさんにはベルと私が平民服を選ぶのにアドバイスをもらったり、実家で採れたという山菜などの山の幸を分けてもらったり色々と良くしてもらった。そのお礼という形で、ストレージからマジックバッグを取り出した。

中には、アニー特製のチーズケーキとブランデーケーキ、タニちゃんがザーラさんに習ったフラワーアレンジメント、そしてカリムの実家で作るようになったガラスの四角いグラタン皿にクロエ先輩の実家のチーズをふんだんに使ったジャガトグラタン。


「えっ……こんなに良いの?」

「はい。いつもカレンさんのお母様には色々と頂いているので是非!」

「ありがとう!きっと母さん、喜ぶわ」

「ありがとう、ジョアンちゃん。カレンの代わりにアルバイトだけでなく、プレゼントまで」


リキ兄のアルバさんもやって来て、お礼を言ってくれた。2人は仲の良い夫婦で、今カレンさんのお腹の中には新しい命が。ようやく5ヶ月を迎え安定期に入ったので帰省を決めたそうだ。それでも、やはりアルバさんにとっては心配らしく過保護になっているとリキが言っていた。


「実家までは乗り合い馬車なんだけど、アルバが心配しすぎて大変なの」

「そりゃそーだろ。実家まで半日かかるんだぞ。カレンのこともお腹の子も心配するさ」


カレンさんは一般科で一緒だったボンのお父さんが領主を務めるムジカ領出身。アルバさんとは、学院の同級生だったそうだ。


「あの〜、送っていきましょうか?」

「ジョアン、送って行くってランペイル家の馬車でか?」

「ううん、私の愛馬で」

「は?もしかして‥…」

「リキ、どうゆうことだ?」


アルバさんにスノーのことを説明し、スノーであれば短時間でしかも野盗などに怯えることもなくムジカ領に着けることを提案した。


「まさか、あの “神のペガサス” がジョアンちゃんの愛馬だったなんて。てっきり大聖堂かお城のだと思っていたわ」

「ありがたいけど、それに見合うものを支払えないよ」

「是非、魔羊で!!」

「ジョアン……お前、どれだけ樽漬けが好きなんだよ」


本当は、ベルデであれば一瞬だけど、妊婦というのとベルデのことを明かせないのでスノーでの移動を提案した。このままだと、過保護のアルバさんが仕事に手がつかなくなりそうだったから。





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