49.BBQ③
同時3話更新の3話目です。
「上から失礼しまーす。楽しんでますかー?」
エイブさんに抱っこされたまま、使用人グループに声を掛ける。
「あっ、お嬢様。楽しんでいますよ、ありがとうございます」
「このネーギ塩リモンのタレ、さっぱりしてて食べやすいです」
「そーなんです。食べ過ぎちゃいそうですよ」
みんな楽しんでくれてるようで安心する。
エイブさんに下ろして貰って、準備していた物をストレージから出して侍女達とアニーちゃんに渡していく。
「これ、日頃の感謝を込めて……どーぞ」
油紙に包まれ毛糸で封をされた簡易包装の物を、みんな戸惑いながらも受け取る。
「えーっと、油紙の中にドライフルーツのクッキーとナッツのクッキーが入ってるよ。あと、その毛糸は伸縮する編み方で編んでるから、良ければ髪紐とかで使ってみて?こんな風に」
と、後ろを向いて自分がその編んだ毛糸でポニーテールをしているのを見せる。
「「「「「「ありがとうございます」」」」」」
「お嬢様〜いつの間に作ったんですかー?」
サラが聞いてくる。
「ふふっ、内緒〜。だって、女は秘密の1つぐらいあった方が良いってお母様が言ってたから」
キラさんがやっていたように、口元に人差し指を置きウインクしてみる。
「「「「「「っ!!!」」」」」」
(いやーん、お嬢様が可愛いすぎる)
(奥様の英才教育がスゴい)
(奥様、グッジョブですー)
(5才でこれは……あとあと大変だわ)
(お嬢様とお揃いの髪紐……家宝にするわ)
「お嬢様〜、伸縮する編み方初めて見ました〜」
サラがビックリしている。
あら?この世界では、ストレッチ編みってないのかしら?簡単なんだけどねぇ。
……ってことは、売れる?
お小遣い稼ぐことできるんじゃないかしら?
「ねぇ、サラ。この髪紐売れると思う?」
「もちろんです!!まずは、奥様に話してみましょう!!(勝手に商人と交渉する前に、奥様とナンシーさんに報告しなきゃ、私が怒られるわ)」
「で、男の方にはこっち」
またストレージから同じような包みを出し、エイブさん、アーサーさん、師匠、庭師のトム爺さんとマイクに渡す。
「中はナッツのクッキーとソルトバタークッキーよ。油紙を結んでいるのは、刺繍糸で作ったミサンガっていうお守りアクセサリーなの。手首に巻いておいて。切れたら願いが叶うものだから、つける時に願いを込めてね」
「良いんですかい?わしまで」
トム爺さんが聞いてくる。
トム爺さんは60才だが、元々冒険者だったらしく身体ががっしりとしている。屋敷には街から通いでやってくる庭師。
「もちろんよ。トム爺さんには色々お世話になってるもの。あっ、これはザーラさんに渡してね」
そう言って、髪紐付きの油紙を渡す。
ザーラさんはトム爺さんの奥さんで、街で花屋を営んでいる。
「俺たちだけじゃなく、ばあちゃんにまでありがとうございます。お嬢様」
お礼を言うのはマイク。
トム爺さんとザーラさんの孫で、街でトム達と一緒に住んでいる。
「あーもぉー、みんなお嬢様じゃなくて、名前で呼んでってばー」
ぷーっと頬を膨らませる。
「あはは、お嬢さん、ほっぺ膨らませても可愛いだけっすよ」
師匠から笑われる。
「ほらーまた。名前で呼んで、ダメ?」
私兵団でもやったように、手を合わせながら、あざとく首を傾げる。
「「「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」」
((キュンキュンするーー))
(ヤバい、可愛いすぎるー!)
(ぎゅーってしたい!!)
(持ち帰りたい)
(いや〜ん、あざとさが可愛いすぎる〜)
(頭を撫でてやりたい)
なぜか、こちらでも顔が赤くなってる人がいる。
みんな、飲み過ぎなんじゃない?
「ダメじゃないっす。でも、いいんすか?本当に」
「もちろん!!」
「じゃあ、頑張るっす」
ん?何を?
まぁー、ともかく一応全員に名前呼びをお願いしたから、明日から変わるかしら?
「お嬢……じゃなくて、ジョアン様〜」
アニーが近くに来る。
「アニーちゃんには、様もつけて欲しくないんだけどなぁー。無理よね?」
ぶんぶん音が鳴るんじゃないかと思うぐらい、首を振る。
「ジョアン様、バーベキュー、本当にありがとうございます。家族って言ってもらえて……私、スゴく嬉しくて。何て……お礼を言ったらいいか……わからなくて……」
と言いながら、アニーちゃんは涙ぐむ。
「ど、どうしたの?アニーちゃん、どこか痛いの?」
心配になって聞くと
「違うんだ、お嬢。アニーは孤児院出身なんだよ。奥様が孤児院を訪問した時に、アニーを見初めてここへやって来たんだよ」
「はい、だから……引き取ってもらっただけでも……ありがたいのに……学校も行けて……。しかも……ジョアン様に……家族だって……言ってもらって……初めての家族で……嬉しくて」
泣きながらも気持ちを伝えるアニー。
「そうだったんだ。ごめんなさい、知らなくて。でも、この屋敷にいる人は家族って思ってるよ。みんなに支えてもらってるから、生活できるんだし。だから、泣かないでアニーちゃん。感謝してるのは、私の方だよ」
そう言い、アニーちゃんをぎゅっと抱きしめる。
「うぅー、ジョアンざまぁー。ありがどうございまずぅー」
「ほら、アニー。お嬢が困ってんぞ。もう、泣きやめ。なっ」
エイブさんが宥めるが、なかなか泣き止まない。
「そんなに泣くと、目がなくなっちゃうよー」
しばらくして泣き止んだアニーちゃんは、泣いてお腹が空いたと、また肉を食べていた。
アニーちゃん、逞しいわ。
でも、やっぱり孤児院ってこの世界もあるのね。
今度、お母様が行く時連れて行ってもらえるかしらねぇ。
いつも読んで頂きまして、ありがとうございます。
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