482.騎士科4姉妹
ーーー翌日の卒業パーティー。
「おっ、来た来た」
騎士寮の食堂で、私とベルを待っていたブライアン先生。そこに、着替えの終わった私とベルが納得していない顔で入る。
「「「「「「「「「「おぉ〜」」」」」」」」」」
何故か同級生や他の在校生も待っていて歓声をあげる。しかもその中には、何故か文官科のキャシーちゃん、レベちゃん、ミューちゃん、コッシー、ザック達もいて……。
「なんで、この格好なの?」
「そりゃ『騎士科4姉妹』の見納めだからだろ」
私とベルが着ているのは『騎士科4姉妹』の本の中で、姉妹達が着ているという騎士服。白いジャケットの形はほとんど同じだけど襟部分と裏地の色合いやワンピースのスカート部のデザインが1人1人違うらしい。4姉妹の三女のスペードの私のスカート部は、丈の長さがバックよりフロントの方が短いハイロースカートで、スカートの裏地やジャケットの襟部分が黒。四女のクローバーのベルは、右側が短いアシンメトリースカートで色は深緑。ちなみに、長女のハートのエレーナ先輩は、片側にスリットの入ったロング丈のフレアスカートで色はピンク。次女のダイヤのクロエ先輩は、裾のラインが、ハンカチの角を斜めに垂らした様になったデザインのミモレ丈のハンカチーフスカートで色は赤らしい。足元は、全員ヒールのある白いニーハイブーツ。
「ねぇ?私のスカートのフロント部分短くない?」
「……私のも太腿が見えてるわ」
「あぁー……マーガレット様と彼の御方のデザインだそうだ」
先生まで目を逸らしたよ。お母様と彼の御方って……王妃様だろ、絶対!
前世のアニメのコスプレみたいだもん!
私のスカートのフロント部分は、ニーハイブーツよりも20cmぐらい上。逆にバック部分は、ふくらはぎの真ん中ぐらい。ベルのはアシンメトリーとはいえ、右側だけ私のフロント部分と同じぐらいに短い。淑女が脚を見せるのは恥ずかしいとされるこの世界で、この長さは他では見ない。だからなのか、男性陣は目を逸らすかチラチラとこちらを見ている。そんな中、ガッツリ見ているのはコッシー。その手にはスケッチブックと鉛筆が。
コッシー、また姿絵売る気だ……。
パンパン「はいはい、じゃあ行くぞ」
ブライアン先生が私達を誘導するように先に食堂を出て行くと、キャシーちゃんが近寄り装飾が施された模擬刀を渡された。
「キャシーちゃんまで……」
「ふふふ。楽しんで来て。まぁ、私もアル様と後で行きますわ」
「ゲッ、アルバート殿下も来るの?」
「そりゃあ、フレッド殿下の卒業式だもの。なんだったら、そのご両親もお越しよ」
「ご両親って……暇なのか?あの人達」
パーティー会場に入ると、おぉーだとかキャーッだとかの歓声があがる。そこで私達の登場に気付いたエレーナ先輩とクロエ先輩がやってくると、更に歓声があがった。
「ジョアン、ベル、来てくれてありがとう!」
「「先輩方、ご卒業おめでとうございます」」
「ありがとー。うわ〜2人とも太腿出してるねぇ〜」
「先輩達……ズルい」
「私が1番脚出てるんですけど」
「「あははは」」
私達が固まって話していると、その周りを一定の間隔で周りを囲まれていた。囲んでいるのは、女生徒が多く顔を赤くしたり中には涙ぐんでいる。
「ジョアンにベル嬢、卒業パーティーの参加感謝する」
囲んでいた人垣の一部が、フレッド殿下の登場でモーゼの十戒のように道が出来る。
「フレッド殿下、ご卒業おめでとうございます」
「ご招待頂き光栄です?」
「ジョアン、なぜ疑問文なんだ」
「いや、だって復帰一発目がコレってどうなんです?」
「あははは。しょうがないだろう。エレーナとクロエだけじゃなく、他の学科からの希望なんだから。……それにしても、ちょっと、その、ドレスは、その……露出が過ぎないか?」
「これに関しては、貴方様のお母上に申して下さいませ!」
「それは……申し訳ない」
そんな話をしていると、人垣が一気に霧散した。何かと振り向くと、王族ファミリーとキャシーちゃん、ルーカス様がこちらに向かってくる。
「フレッド?わたくしが何か?」
「い、いえ、何でもありません。母上」
「そう?……ジョアン嬢、久しぶりね」
「はい。ご無沙汰しております。この度は、皆様に多大なるご迷惑をお掛け致しました。帰国の報告が遅くなりまして申し訳ありません」
「良いのよ、あなたが無事であれば」
「まぁ、なんだ。今日は祝いの席。報告については改めて王城にて聞こう」
「はい、陛下」
陛下夫妻が私達の元を離れると、今度はアルバート殿下とキャシーちゃん、ルーカス様が近寄って来た。
「ジョアン嬢、よく帰還した」
「ありがとうございます、アルバート殿下」
「王城にての報告については、後ほど通達致す。……それにしても、そのドレスはどうなんだ?」
「フレッド殿下にも言いましたけど、デザイン案は王妃様ですっ!」
「マジか……」
「マジです」
「でも、似合っているわ。4人揃うと壮観ね」
「ところで、あの2人って……」
途中から、小声でアルバート殿下とキャシーちゃんと話すが、それよりも2人の方が気になる。その2人とは、ベルとルーカス様。挨拶の後、ルーカス様はベルのドレスを見た瞬間にボッと顔が赤くなり口を手で隠しながらもドレスを褒めている。ベルも、チラッと見える太腿を気にして真っ赤にならながらもルーカス様を気にしている。
「我が兄が、あそこまでヘタレだとは思いませんでしたわ」
「キャシーちゃん!?」
「だって公爵家の夜会でダンスをしてからというもの、ベルの事を聞くのに自分からは何のアプローチもしないなんて。男としてどうですの?」
「……アルバート殿下」
「俺に振るなよ。だけど、まぁ俺としてはルーカスの気持ちはわからんでもない」
「あー、殿下も公開プロポーズまでヘタレでしたもーービリッーー痛っ」
「わたくしの両親もベルのことは気に入っているし、さっさと婚約を願えば良いのに「公爵家から婚約申込みしたら、気持ちと関係なく拒否れないだろ。俺は彼女の気持ちを尊重したい」って。じゃあ、さっさと告白すれば良いのに……」
キャシーちゃんが辛辣過ぎる……。




