481.ただいま
ようやく帰って来ましたよ〜♪
ジェネラルの手前で男装から元の姿に戻る。
領都の門には、私兵団一小柄のナットさんと私兵団一大柄なオーキさんの凸凹コンビが立っていた。
「あっ、ジョアン様!お帰りなさーい!!」
「元気そうで良かった」
「ナットさん、オーキさん、ただいま〜」
挨拶もそこそこに、街に入ると顔見知りの領民達がスノーの周りに集まって来た。
「「「「「ジョアン様〜!」」」」」
「スノーもいるー」
「あっパールだ〜」
「メテオー!!カッコいい!!」
「ロッソーー!!」
「ジョアンちゃん、お帰りー」
「元気そうで良かった」
「新商品出来たから、食べに来てよ」
私だけでなく契約獣達にも声をかけてくれる子供達。私の噂を聞いただろうが気遣ってくれたり、新商品をすすめてくれる大人達。本当に領民に恵まれてる。
「ただいま戻りました」
リビングには、兄弟以外の家族が揃い私の帰りを喜んでくれた。どうやらベルデは家に先触れを出した後にファンタズモにも報告をしてくれて、お祖父様達の希望で【転移】して待っていてくれたらしい。一緒にアフタヌーンティータイムをとりながら、各国での話をしたが短時間で終わるわけもなく、夕食後はお土産の各地の銘酒を飲みつつ夜遅くまで話をした。
翌日は、お祖母様と共に王太后様のお屋敷に行き、各国の陛下達からの返書を渡した。そこには各国で私がどう過ごしたのか簡単に記載されていたらしく、詳細を話すと王太后様はコロコロと笑い楽しそうに聞いてくれた。お土産の各地の名産品を渡し、王太后様の任務は完遂した。
*****
ーーー騎士寮。
「あー、疲れた。……もう、腕上がらね〜」
「普通、明日の卒業式の準備の後に卒業生との打ち合いってありえねーだろ」
「だけど騎士科の伝統なんだろ?前日に在校生と最後の練習試合って」
「まぁな。卒業したら正式な騎士団員になる人が多いから、俺らと本気で打ち合えるのは今日までってやつだろ?」
「だけど誰よりもエレーナ先輩とクロエ先輩が容赦なかったな」
「それな。フレッド殿下はいつも通り隙がないしな」
「近衛隊は、殿下よりも強くないといけないのよね?私、無理かも……」
騎士科の伝統の卒業前日練習試合を終えた同級生が、口々に愚痴りながら寮に戻って来た。
「すげぇ〜良い匂い」
「一気に腹減る〜」
「ん?この匂いって……」
「「「「カレーだ!!」」」」
「ジョアン!?」
この騎士寮では、金曜日になると私がカレーを作るのが定番化されていた。なぜ金曜日か。それは、前世のテレビで見た海上自衛隊の習慣を真似たから。
「あっ、皆んなお疲れ〜」
カレーの大鍋をかき混ぜながら、厨房から皆んなに声をかけると皆んながバタバタとカウンターに駆け寄って来た。
「おかえり、ジョアン!」
「元気だったか?」
「戻って来んのおせーよ」
「待ってたぞ」
「お前、帰って来て早々に厨房って……」
「っしゃー!おかえり、ジョアンのカレー」
ベルをはじめ、帰国の事を喜んでくれた。ブラッドだけは、私よりもカレーの復活を喜んでいたけど……。
夕食時には、フレッド殿下やエレーナ先輩、クロエ先輩などの先輩達からおかえりと言ってもらえた。エレーナ先輩とクロエ先輩は、泣きながら卒業式に間に合って良かったと。
その後、帰国の報告を兼ねて職員寮にカレーを持って行くと、ブライアン先生やヘクタール先生だけでなく色々な先生に、頭をガシガシと撫でられた。お土産兼賄賂として各地の銘酒を渡したら、学科長から「でかした!」と今までで1番褒められた。特にエルファの蜜酒は、ツテがないと買えない代物らしく学科長は瓶に頬ずりしていた。だいぶ昔に飲んだ蜜酒が忘れられなかったらしいから、よっぽど嬉しかったんだろうな。
ちなみに、騎士寮でなんとなく人数が減ったような気がして、それとなく先生達に聞いてみると……
「あー、お前が休学する原因になった元侯爵夫人の取り巻きの縁者だ」
「まあ、元から単位ギリギリの奴もいたけどな」
「いやいや、単位落としたとしても留年じゃないの?」
「まあ、普通はな。でも、ただでさえ就職先がないのに留年するなんて無理だろ」
「そうそう、どこの家も余裕ねぇしな」
「は?就職先がないって、何で?」
「「「「「……」」」」」
先生達の話によると、コブちゃんや元侯爵夫人の取り巻きをしていた家の当主夫妻や令息令嬢が色々な茶会や夜会などで、率先して私を虐げる噂を流していたそうだ。そして、騎士科にいたのはその取り巻きしていた家の次男以下。親が虎の威を借る狐だった為に、令息達も騎士科内で同じように下位貴族や平民に対して横柄な態度だったらしい。でも、お父様やお母様そして王太后様までが動いた事で、取り巻きの家も無事で済むはずもなく、ヘイデンさん達から聞いたように商人達からの総スカンやら婚約者の家からの婚約破棄ーーもちろん取り巻きの家の有責でーーが相次いだらしい。
そのバタバタの中、学年末テストで合格点が取れず家の事を考えると留年も難しい。だから、自主退学した生徒が多かったらしい。ちなみに、他の科でも同じようだ。
「あっ、ところで私は?」
「ジョアンは単位も取れているし、今回のテストは王太后様のご意向で免除だ」
「わぁお、王太后様に感謝だわ」
「いや、そりゃそうだろ。一学院生が、国の特別大使として他国に、しかも4カ国に行ったんだから」
「そっか。特別大使だった」
「「あのな〜」」
先生との話も終わり、寮に戻ろうとするとブライアン先生からサラッと言われる。
「あっ、そうそう。明日の卒業パーティー、お前もベルと参加だからな」
「は?何で?」
「エレーナとクロエからの希望だ」
「えー、聞いてないし。しかもドレス準備してないよ」
「大丈夫だ。もう寮に届いているはずだから」
「どこから?」
「そりゃもちろん、マダムの所だよ」
「マーガレット様が纏めて注文したらしいぞ」
「お母様……」




