469.宴
サナダ家から2台の馬車に乗り城へと向かう。向かう馬車の中で、今夜私をエスコートしてくれるのがタイキさんだと教えてもらった。セイカさんとケイさんは、婚約者がいるらしく後で紹介してくれるそうだ。何か気をつけた方が良いかと聞くと、さっちゃんから逆に質問された。
「嬢ちゃんは、奥方の座に興味あるん?」
「は?奥方?奥方って、王妃様ってことでしょ?いやいや、ないない!ぜーーーったい嫌だよ、王族に嫁ぐなんて面倒くさい」
そういうと同乗していた、サイウン様、シラヌイ様、さっちゃんが笑い出す。私が驚きキョトンとしていると、3人はようやく笑い終わり理由を説明してくれた。
「いや、ごめんな。答えが嬢ちゃんらしくてな」
「貴族令嬢は、奥方になりたいと思うのが普通だと思っていたんだが、サチコからジョアン様はそんなの面倒だと言うと聞いていたもんでな」
「本当に母上の言う通りだと思ってね」
「あは、ははは。でも、何故そんなことを聞くの?」
さっちゃんの説明してくれたのは、関わりたくない内容だった。通常、他国からの使者であれば外務大臣やその部下なのに、私が選ばれたのは東の国との政略結婚の為ではないかという憶測が飛び交っているらしい。
正室リリー様の子供は、一男二女、側室チグサ様は三女、メルロス様は二男一女。メルロス様の息子さん達は、双子でまだ10才ということで、王太子はリリー様の息子さんで19才。ケイさんの幼馴染だそうだ。もちろん既に婚約者候補はいるそうだが、私が本当に政略結婚として来ていて婚約者に選ばれたらと、婚約者候補の方達は戦々恐々としているそうだ。
「あーだから、リリー様が私に婚約者はいるか好きなタイプはどんなのか聞いてきたのか」
「ほう。ほんで何て答えたん?」
「私より強くて、浮気をせずに私だけを愛して、お互いに信頼かつ尊敬できる、王族じゃない人。って、答えたらリリー様は苦笑してた」
「「「ぶっ、わっはははは」」」」
「さすが嬢ちゃんや。まあ、嬢ちゃんが言うても周りはそう勘ぐっているのがおるから気ぃつけや。タイキの側におるんやで」
城までの15分の短い間に2回も爆笑され、城の馬車寄せで馬車から下りるとタイキさんがやって来てエスコートされる。エスコートされながらタイキさんに聞くと、エグザリア王国と同じように家格の下から呼ばれるので公爵家のサナダ家は後の方。殿様の話の時に、私の紹介があるそうだ。そして、その後はダンスをするらしいが踊るのはほぼ若い人でドレス、タキシードの人だけ。やはり和装では踊りにくいので、若い人で踊りたくない人はセイカさんのように和装らしい。セイカさんの婚約者も、大人しい方でダンスが苦手だというのできっと和装で来るだろうとのこと。
控え室で、セイカさんとケイさんの婚約者の令嬢を紹介してもらった。セイカさんの婚約者は、和装の似合う美人なキリッとした伯爵家の令嬢で同級生だそうだ。今は、セイカさんのところで秘書をしているそうで、公私共にパートナーだという。ちょっと抜けたところのあるセイカさんとしっかり者の婚約者さんでお似合いの2人。そして近々結婚予定。ケイさんの婚約者は、幼馴染の侯爵家の令嬢で私より1つ下の15才。薄いピンクの似合う可愛らしい令嬢だった。見た目フワフワしたお花畑の住人かと思っていたけど、話してみるとウィットに富んだ会話が出来る子で、“食の女神” が私とわかると目を輝かせて商談に入ろうとするもんだから、タイキさんとケイさんに止められていた。
城の侍従の案内で、夜会の会場に入ると不躾な視線をビシバシ感じる。でもそんなのは気にせず、エスコートしてくれるタイキさんから婚約者候補の令嬢達の情報を聞いていた。
若殿ーー東の国の王太子の呼び名ーーには、婚約者候補が3人。公爵家令嬢、侯爵家令嬢、伯爵家令嬢らしい。今現在、1番婚約者に近いのは公爵家令嬢。若殿とは従兄弟同士で幼馴染、若殿より4才年下だが学力的にも申し分なく、サクッと飛び級し今春卒業らしい。また、礼儀作法や言動も、誰からみても好感が持て、性別関係なく一目置かれている令嬢だそうだ。侯爵家令嬢は、若殿と同級生でこちらも学力はトップクラス。それだけではなく、剣術にも優れていて今は近衛隊にも属しているらしい。そして最後の伯爵令嬢は、6才年下で学力は平均的だが魔力だけはトップクラスで、しかも【ヒールS】を持っているらしく休日には治療院や孤児院などを回って奉仕活動をしているそうだ。
婚約者候補3人は、ギスギスすることもなくお互いを尊敬し尊重し王太子妃教育も切磋琢磨している。もちろん若殿も偏りなく平等に3人と接しているそう。……ただ、3人それぞれの派閥には過激な人もいるらしく、そういう人は如何に他の候補者を出し抜くかしか考えていないという。
殿様の話と私の紹介が終わり、しばらく其々が挨拶や歓談をしていた。私も、さっちゃんとお酒を飲みつつ話している。サイウン様は殿様の近くで挨拶を受けているし、シラヌイ様とリッカ様はあちこちで挨拶をして回っていた。セイカさんとケイさんも婚約者さんと共に、友人の方達と談笑をしているようだ。タイキさんは、強面の男性と少し話すと席を離れると会場を出て行った。
「どうや?東の国の夜会は」
「夜会自体はエグザリアとあまり変わりないけど、あっちでは着物姿は見ないから新鮮な感じやわ。帰りに買うて帰ろかな」
「ほんならウチがご贔屓にしとるとこ紹介するわ。……あっ、知り合いおったわ。ちょ、ここで待っといてや」
「はいはーい。いってらっしゃーい」
さっちゃんが知り合いを見つけ離れたので、私は壁側にある椅子に座り込み会場をお酒を飲みながら眺めていた。そして、ふと気づき胸元に手を当てる。
あっ、ヤバッ。アラン兄様とヴィーから貰ったペンダント忘れた。……まっ、いっか。さすがに他国の使者をどうにかする人なんていないでしょ。
なんて思ったことが、フラグをたててしまったのか、この後私は騒動に巻き込まれることになったなんて、ほろ酔い気分の私には知る由もなく……。
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