467.奥方様達からのお誘い
謁見の後、サイウン様から本丸の中庭にある四阿に案内された。そこでは、3人の和装の女性が既にお茶をしていた。
「リリー様、ジョアン嬢をお連れしました」
「まあ、あなたがジョアンちゃんね。会いたかったのよ」
サイウン様からの紹介に、笑顔で答えてくれたのは金色の髪をポニーテールにし、ロイヤルブルーの瞳とエグザリア王国の王族カラーで、赤地に白い百合が描かれた着物に紺色の袴の女性は、正室のリリー様。
黒髪をアップにし紫色の瞳で、淡い紫地に梅の花が描かれた着物なのは、東の国出身で第一側室のチグサ様。
明るい緑色の髪をハーフアップにし黄緑色の瞳で、緑地に桜が描かれた着物にベージュの袴で、エルファ国出身で第二側室のメルロス様。
「お初にお目にかかります。エグザリア王国、ランペイル辺境伯家長女、ジョアン・ランペイルと申します」
「ご丁寧にありがとう。さあ、座って座って」
「お茶どうぞ」
「お菓子もあるわよ〜」
サイウン様が仕事に戻りリリー様に着席するよう促され座ると、チグサ様自らお茶を入れてくれメルロス様はお菓子を取り分けてくれた。
「お母様とアミー義姉様から話は聞いているわ。本当に、あのご夫人は昔から変わってないのね。呆れたわ。まあ、今となっては元夫人らしいけどね」
「わたくし達も話を聞いて、頭にきていたのですよ。リリー様のお母上様が何もしなければ、皆で乗り込もうかと思っていたところです」
「そうよ〜。ジョアンちゃんの話はサチコ様からよく聞いていたから〜、尊敬していましたのよ〜。だ〜って、あのサチコ様と対等な関係を築けているんですもの〜」
「えっ?さっちゃん?」
リリー様は、学院時代の時からピグレート元侯爵夫人の事を知っていたらしい。もちろん兄のアレクサンダー陛下ーー当時は王子ーーとアミーさん、お父様とお母様、その他の婚約者同士の邪魔をしていたことも知っていた。そして、私が巻き込まれたことも母である皇太后様から聞いて、その事はチグサ様とメルロス様にも話していたそうだ。
まさか東の国までその話が伝わっているとは……。
しかも、さっちゃんって意外と人選んで接してた?
「でもね、わたくしが1番気になっていたのは、ジョアンちゃんの料理なのよ。お母様やアミー義姉様が絶賛していたんですもの」
「ええ、わたくしも気になっていましたわ」
「わたくしもよ〜」
「えーっと、では、ご挨拶代わりに何かストレージから出しましょうか?どのようなものが良いですか?」
希望を聞くと、リリー様はハンバーガーセット、チグサ様は鰻丼もどき、メルロス様は激辛カツカレーライス。
「ん〜美味しい!!これが、ハンバーガーなのね。ずっと食べたかったのよ」
「これがジャイアントスネークだなんて……これからは率先して狩らねば」
「ん〜、スパイスが病みつきになるわ〜。お父様が言っていたように、ジョアンちゃんの料理はただ辛いだけではなく旨みがあるのね〜」
「あの、メルロス様?お父様とは?」
「あら?知らなかった〜?エルファ国の宰相やってるんだけど〜」
「えーっ!?あの宰相様の?あー、だから辛いもの好き」
「そうなの〜。お父様の影響でね〜」
美人すぎる奥方様達は、見た目に反してお代わりをするぐらい料理を気に入ってくれた。
「あー美味しかった。ねぇ?ジョアンちゃん。お礼と言ってはなんだけど、わたくし達がこの国を案内するわ。アミー義姉様やローズからジョアンちゃんのことは聞いていたから、色々と考えていたのよ」
「ローズって、ローズ叔母様ですか?」
「そう、そのローズよ。わたくしと学院の同級生なのよ。それでね、わたくしとは遠乗りはどうかしら?」
「わたくしとは、城下町散策ですわ」
「わたくしとはね〜、狩りなんてどぉ〜?」
話を聞くと、3人共東の国の王妃、側室とはいえ城の中で収まる方々ではなく公務のない時は、城下町に下りて奉仕活動や
慈善活動をしている一方、冒険者ギルドに登録していて討伐なども率先して行っているらしい。
アレクサンダー陛下が妹さんを溺愛してるって言うけど、ただ妹さんがアグレッシブすぎて心配しているんじゃない?
いつ、誰と、どこに行くかは3人の予定に合わせることにした。結果、明日はリリー様と遠乗り。ピクニックも兼ねようということになり、お弁当は私が作ることになった。そして、1日あけてメルロス様と狩りに行くことになった。当日、冒険者ギルド前で集合することになった。そして、その日から2日あけてチグサ様と城下町散策。チグサ様のご実家は、老舗の商店らしくそこも含めて案内してくれるそうだ。
サナダ家に戻り、その事をお茶をしていたさっちゃんとリッカさんに話すと驚かれた。3人全員から目をかけてもらった令嬢は、これまでいなかったそうだ。
理由としては、今回私が誘われた遠乗り、狩り、城下町散策という名の商談は、3人の趣味だが今までどの令嬢を誘ったとしてもやんわりと断られる事柄だったそうだ。東の国の貴族令嬢方もこちらの学園や家庭教師から、令嬢の嗜みとして乗馬や刺繍などを習うがあくまで一般的に出来るというぐらい。リリー様の遠乗りになんて付いて行けるわけもなく、城下町散策にしても才女と誉高いチグサ様に対応できる会話力もない、まして狩猟民族のエルフ族のメルロス様と一緒に狩りに行ける貴族令嬢は皆無だそうだ。
「だから、奥方様全員と同レベルでついていけるのは嬢ちゃんだけやな」
「そうね〜。まあ、奥方様達も周りの令嬢に同レベルを求めてはいないから、それにあえて挑む令嬢もいないしねぇ」
と、さっちゃんとリッカ様が言う。
「まあ、その点嬢ちゃんはあの3人と同レベルどころか上やろうしな」
「まあ、そうなの?ジョアンちゃん」
「そりゃあそうやろ。 "王国の盾" とも云われるランペイルで、『獄炎の魔女』に師事しとるんやから。冒険者ギルドにも登録してCやったか?」
「えっと、ランペイルギルドのBです」
「な?そりゃ、あの3人さんに気に入られるやろ〜。嬢ちゃんは、楽しんだらええわ」




