452.終焉
オリバーさんが詰め寄ったが、元コッカー伯爵代行は反論が出来ず、唇を噛みしめるだけで下を向いていた。先程までの高圧的な態度も、立場が弱いと何も役に立たないらしい。
「か、関係ないって、お父様はこの伯爵のーー」
「まだ分からないのか?その前提が間違っているのだよ。君の父親は子爵家の出であって、このコッカー家の血など流れてはいない。何をしても、この先コッカー伯爵家当主になる事は絶対にありえないんだよ?」
「じゃあ私は伯爵令嬢じゃないの……」
ようやく理解出来たのか、レティも俯いた。
「では、騎士様方宜しくお願い致しますね」
「「はい」」
ジュディー様が言うと、騎士達が元コッカー伯爵代行を両脇から拘束する。
「は、離せ!お、俺じゃない。ど、毒を盛ったのは主治医とレティの母親だ!俺はあいつらに騙されていたんだ!!」
「煩い!」
「暴れるな!!」
チビ禿げ出っ歯が多少暴れたところで、屈強な騎士達には適うわけもなく早々に外へ連れ出されて行った。
「さて、次はあなたですけど……あなたにはわたくしより彼女達の方からお話があるようよ?」
ジュディー様に促され、使用人達の背に隠れながら様子を窺っていた私とアムちゃん、ラビィーちゃんが前へと出る。
「お時間頂きましてありがとうございます、コッカー伯爵様。……学院は貴族、平民関係なく平等とはいえ、散々我がティガー公爵を侮ってくれたわね」
「我がバックス商会への横槍もあなたの指示だったことを、元の取引先が証言してくれたわ」
「わ、私は……あっ、ショウ様!助けて下さい!!皆がわたくしを虐めるんですぅ〜。あぁ、こちらに来て。ショウ様は彼女達に騙されているのですぅ〜」
アムちゃんとラビィーちゃんに詰められていたが、私を見つけると私の方に擦り寄って来た。まるで悲劇のヒロインのように。
「は?どこが虐めになんの?何も間違ってなくない?」
「ショ、ショウ様……?」
「だってさ、アムちゃんの言っていることは、あなたが流した噂によるものだし。ラビィーちゃんの言っていることはバックス商会の取引先を買収するようにあなたが進言したからだよね?」
「え、な、なんでショウ様はわたくしの味方では?」
「何であなたの味方になるの?そもそも私はゴブリンから襲われているあなたを助けただけだし。私の友人を害する人の味方になるはずないでしょう?」
「えっ、ゆ、友人?でも、私の方が可愛いしーー」
「可愛いとか関係ないでしょ。それに、外見がいくら可愛いかったとしても心の醜さが顔に出ている人は勘弁して欲しいね。っていうか、外見にしてもアムちゃんやラビィーちゃんの方が断然可愛いし」
「「「………」」」
そう言ってやると、レティは顔を青くし反対にアムちゃんとラビィーちゃんは耳まで赤くなっている。
「ふふふふ。本当にシア様が話していたように、ジョアン様は無自覚なプレイボーイのようですね」
「も、もう!本当よ。ジョアン様が女性だって忘れるところだったわ」
「ジョアン?女性?」
クラリスさんとアムちゃんの言葉で、更に困惑しているレティ。
「ああ、ちゃんと名乗ってなかったね。……改めて、エグザリア王国ランペイル辺境伯家が長女、ジョアン・ランペイルです。ショウとは、旅をする上での仮の姿ですわ」
バタン。
「ありゃ」「「「まあ」」」「「………」」
名乗る前に変声機とウィッグを外し、挨拶をするとレティは白目を向いて気を失ってしまった。
その後、コッカー家の収支を第三者の機関に厳密に調査してもらい、元コッカー伯爵代行には横領罪や爵位乗っ取りなどの罪状の他に、不良品などを販売していたとして詐欺罪などが追加され、アニア国でも1番過酷だと言われる鉱山送りになった。もちろん元コッカー伯爵代行の手先だったタウンハウスの方の家令や使用人、主治医、リコリス商会の支配人も仲良く一緒に。レティの母親や成人の侍女達は、劣悪な環境で変態専門の娼館へ、レティは失神している間に未成年の侍女と共に1番厳しいと言われる修道院へと送られた。
ちなみにティガー公爵夫妻との約束だった獲物の引き渡しについては、叶えることが出来なかったので謝り倒した。もちろん代わりになる対価を用意して。
リコリス商会は、もちろん閉店した。コッカー伯爵もクラリスさんもリコリス商会には、あまり良い思い出がないということで建物は一度解体し新たに建て直すそうだ。今後は、バックス商会と提携を結び、商品の販売だけではなく飲食関係にも力を入れていくつもりらしい。その際には、ジョウ商会とも取引をしていきたいということで、是非ともお母様に取り次いで欲しいとジュディー様にお願いされた。ちなみに、コッカー伯爵領は木の実や芋類が多く採れるらしいので、こちらとしても有意義な取り引きが出来そうだ。
余談ではあるが、リコリス商会に言われバックス商会から手を引いた元の取引先は、元コッカー伯爵代行が逮捕されたことで再びバックス商会との取引を希望したがマーシィさんに断固拒否されたそうだ。マーシィさんが強気に出れたのは、元取引先で扱っていた商品が海産物だったので、私の口利きでミンコフ領主のウィル様を紹介しそちらと取引をする事になったかららしい。
あっ、そうそうティガー公爵夫妻への代わりの対価とは……スノーでの夜間飛行でした。普通の馬に騎乗出来ない、獣人にとっては騎乗=スレイプニル or ワイバーンになるそうで、スノーを見た時に羨ましいと思ったらしい。通常であれば、私とのタンデムだけど獣人の身体能力の高さを考慮して、ご夫婦でのタンデム飛行となった。
夜間飛行を終えた2人は、高揚感からかとても良い笑顔で私と両手で握手をしてくれた。
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