447.大衆食堂
「もう!止めてよ、お父様!!わたくしが商会に来て欲しいと頼んだのよ。ショウ様に失礼だわ!」
「痛っ、痛い、叩くでない!……はぁ〜。では、金じゃないと言うなら何が欲しいんだ?まあ、ここの商会のものを持っていれば、平民でも鼻が高いだろうしな」
いや、それもいらねー。ゴミとガラクタしかなかったし……。
んなもん持っていたら、笑われるわ。
「コッカー伯爵、ショウは俺の友人だ。失礼な発言はやめて頂きたい。別に金にも物にも困っていない。ここに来たのは、伯爵令嬢からの誘いを頂いた義理を果たす為だ」
ようやく落ち着いたガロンが助け船を出してくれて、私は無言で頷く。
「なんと、ハイロー侯爵令息殿のご友人でしたか。それは失礼した。しかし、娘を助けて頂いたのであれば……そうだ、アレがあったであろう」
コッカー伯爵が支配人に指示をして、持って来たのは1つの木箱だった。
「コレは、先日、聖戦跡のダンジョンから持ち帰ったアーティファクトだ。商会の【サーチ】を持っている人間が鑑定したので間違いない。【サーチ】によると『賢者の遺物』と出たそうだ。コレを、感謝の印として差し上げよう」
「あ、ありがとうございます」
コッカー伯爵、レティ嬢と話も終わり商会を出て、ランチにでも行こうかとガロンと話していると、後ろから呼び止められる。来るかなと予想した通り、レティ嬢が後ろに侍女を連れてやって来た。ガロンとベルデは、先に馬車で待つとその場を離れた。
「ショ、ショウ様。1つお聞きしたい事があるのですが……。せ、先日、ティガー公爵家の方々とバックス商会の娘と一緒にいたようですが、どのような関係なのです?」
「先日?あぁ、カフェの所ですね?ゴールダーともガロンを通じて知り合ったんで、お茶をしたんですけど。何か?」
「あの!……わたくし、ティガー公爵家のアム様から虐げられているんです。シア様がリジャル殿下の婚約者になり、私の姉が婚約者候補から外れたから。だ、だから、ショウ様も嫌な思いをしているんではないかと心配で……。それに、バックス商会のラビィーからも、同じ商会の娘だからか目の敵にされてまして……」
そう言うと、ウルウルとした上目遣いで私を見てきた。その後ろでは侍女が「お嬢様、なんて可哀想な……」と涙目でいる。
「そうなんですか?アム嬢もラビィー嬢とも楽しく会話しましたけどね〜」
「男性には、いつも媚を売っているからですわ。学院内でもそうですもの」
「はあ。なるほど……で、俺にどうしろと?」
「あの……わ、わたくしとも……デ、デ、デートしてくださいませ。キャッ、言ってしまったわ」
おお〜何の脈絡もなく誘うか〜。
飴ちゃんよりも、お花満開だな。ってか、飴ちゃんの場合は常識がある上での演技に近かったからな〜。元気かな?
「あ、あの……ショウ様?」
「あ、ごめん。ちょっと考えごとしてた。それで、デートだっけ?申し訳ないけど、色々と予定入ってて無理だわ。アニア国にいる間にやらなきゃいけない事あってさ。じゃ、ガロン待たせてるから」
「えっ!?」
そう言って、その場を走り去ると馬車へ乗り込んだ。馬車の中にはガロンが1人。ベルデは、先程馬車に乗り込んだ段階で妖精体になって、今は私の肩の上にいる。
「お待たせ〜。んで、何食べる?」
「おー、今のこと何もなかったことにしたな」
「いや、色々と聞いたよ。アムちゃんとラビィーちゃんからイジメられてて、その2人はいつも男に媚びてるんだって」
「は?何だそのガセネタは。ありえねぇな。んで、他は?」
「デートに誘われたから断った」
「は?マジで?」
「マジで。何で私が彼女とデートしなきゃいけないの?証拠はしっかりと録画したし、もういいでしょう?」
私の胸元についているブローチは、録画出来る魔道具でリコリス商会に入ったところから録画している。
「まあ、それで良いならいいけど。で?何食べたい?何でもいいぞ」
「んー、じゃあガロンのおすすめで」
「じゃあ、よくゴールダーと行く所にするか。大衆食堂なんだけど良いか?」
「もちろん!その方が気楽でいいわ」
ガロンの連れて行ってくれた大衆食堂は、昼から賑わっていた。男装も止めようと思ったけど、ガロンに対して変な噂をたてられたら困るだろうからそのままだ。
店の1番人気のスペアリブはタレが絶品で、おかわりをして食べた。その他の料理も美味しかったが、『女神の唐揚げ』という料理には一言もの申したい!!火が通り過ぎて、肉がパサパサ気味だった。唐揚げは、ジューシーなのが1番なのに!それから『女神の卵』という名の卵焼き。いやいや、私が卵産んでるみたいじゃない?こっちも火が強くてボソボソしてる。
「あっ、お姉さん。ちょっと良い?」
「なんだい?こんなオバさん捕まえても、何も出て来やしないよ?」
「いやいや、お姉さんの笑顔だけで十分だよ」
「あら、やだよーこの子は。で、何の用だい?」
「この『女神の唐揚げ』ってヤツなんだけど」
「ああ。何でもエグザリア王国の “食の女神” が考えた料理らしいよ。旦那がレシピを買って作ったんだけどね」
「あーレシピか。あのさ、旦那さんに会える?話ししたいんだ」
「今、忙しいからね〜。もう少ししたら昼の営業終わるから待っててくれるかい?」
「わかった。じゃあ、エールのお代わり2つとお姉さんのおすすめを何か」
「あいよ!」
女将さんがカウンターに消えると、ガロンがボソッと呟く。
「……女ったらし」
「は?どこが?」
「いや、どう見てもそうだろうが。あの女将のあんな笑顔見たことねーぞ」
「そりゃあ、ガロンの対応次第でしょ。女性はいくら年を重ねても女性なんだから」
「そんなもんか?」
「当たり前でしょ」
その後、エールとおすすめのチーズのベーコン巻きとソーセージの盛り合わせがきて、私達は閉店するのを待った。
「お前か?俺と話したいってのは?」
そう言いながら厨房から出てきた旦那さんは、身長が2mはあるだろうデカい熊の獣人さんだった。頬に傷もあり、どう見ても堅気に見えない。ちなみに、女将さんは狸の獣人さんらしい。
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