45.食事改善
ゴクッゴクッゴクッ「ふぅーー」
片手を腰に置いて、アイスティーを一気に飲み干した。
あー喉が痛いわ。説教すると疲れるわねぇ。
にしても、久々に自分より上の人間に説教したわ。昔はこうだったーとか、古臭いのよねぇ。どれだけ自分の時代に誇りをもっているのよ?
「ジョー、落ちついた?」
ノエル兄様が近づいて頭を撫でてくれる。
「格好良かったぞ、ジョー。母様が怒る時と一緒だった」
「ジーン兄様、ホント?似てた?」
「もしかして奥様の真似をしたのか?」
ネイサンだ。
「うん。えへへへ」
「奥様のだけじゃなく、ウチの母さんにも似てた気がするよ」
ザックまで。
「うん、さっき見たナンシーにも似せてみた。でも、ナンシーに似せるなら、やっぱり口だけじゃなく腕もたたなければいけないですよね?」
それだけじゃなく、前世の経験も入っているけどねぇ。
「いや、ジョアン。ナンシーに似なくて良いから、そのままの可愛いジョアンでいて」
ノエル兄様、可愛いだけの女は使えません。
頭も口も腕も、ちゃんと鍛えないと。
ナンシーはもちろん、お母様にも色々と教えてもらいましょう。それからノエル兄様、そんな事言ってると馬鹿な女に捕まるわよ。まっ、私が排除するけど。
「ジョ、ジョアン……。先程は、ごめん。そのー、3人で話し合って、今度エイブに調理指導をしてもらうことにしたよ」
お父様、グレイ、エルさんがやって来た。
「えっ?今度?」
私は聞き直す。
「う、うん、今度」
「今度とは、いつですの?そんな曖昧な約束では無意味です。明確に教えて頂けますか、お父様」
「い、いや、でも、エイブにも確認しないといけないし。今の段階では、今度としか……」
「お父様たち、本当に改善するつもりがありますか?今までやらなかったのに、今度?そんなので信用出来るわけないでしょう。もし、部下の方に指示して『今度やります』って言われて、信用出来ますか?」
「えっ、あっ、いや。ごめんなさい」
「謝るだけでは、何も解決出来ません」
「「「……」」」
大人3人は、黙った。
「「「「……」」」」
それを近くで見ていたノエル達4人は、本能的にジョアンを怒らせてはいけない事を、心に誓った。
「わかりました。じゃあ、私が私兵団の寮に行って調理指導をします!」
「いや、それはダメだ。私の可愛いジョアンを男しかいない寮なんかに、行かせられるわけがないだろ」
「大丈夫ですよ。可愛いって言ってるの、身内の贔屓目ですって」
誰がこんな5才児に、発情するのよ?
私兵団の1番下の人でも、11才よ?せいぜい妹としか思わないわよぉ。
「「はぁー」」
ネイサン、ザック、首を横に振りながらため息って、飽きちゃった?
「ともかく、私が指導します!」
「あのぉーお言葉ですが、お嬢様。そのぉ、料理出来るのですか?」
私の料理を食べたことないエルさんが聞いてくる。
「作れますよ。ちょっと待って下さいね。……はい、どうぞ。私が作ったパウンドケーキです」
ストレージからラムブレープのパウンドケーキを出して、エルさんに渡す。それを見ていた、お兄様たちは
「「ジョー、何それ?」」
あっ、学院に行ってる間に作ったから知らないのね。
「お兄様たちもどうぞ」
ノエル兄様、ジーン兄様、ネイサンに渡す。
ザックにはラムブレープは早いと思ったから、ドライフルーツのパウンドケーキだ。
エルは恐る恐る食べた。
「美味い」
「ね、ちゃんと料理出来るでしょ?」
「いや、しかし……」
お父様の方をチラッとみる、エル。
「じゃあ、初回、ナンシーと一緒に来たらいいですか?」
「えっ!?」
エルがビクッとする。
ん?どうしたのかしら?
元魔物討伐団なら、ナンシーとも顔見知りだから大丈夫でしょ?
「ん、まぁ、ナンシーが側にいるなら大丈夫か」
「えー!!スタンリー様、それだけは、それだけは、どうかお慈悲を」
「エル。すまん、諦めろ」
何故、お父様が謝る?
その後、グレイに聞いたところ、ナンシーはエルの教育係だったらしい。新人の時、かなりハードな教育だった為、それがトラウマなのか、未だにナンシーのことを恐れている。
「あっ、そうだ。まず、みんなで今夜バーベキューでもします?」
「「「「バーベキュー!?」」」」
「外でみんなで火を囲んで、肉や野菜を焼いて食べたりするんです。私たち家族、使用人、私兵団みんなで親睦を深めるためにご飯を一緒にするんです」
「親睦を深めるって、なんで?」
ジーン兄様が聞く。
「だって、みんなランペイル家の家族でしょ?」
「「「「「っ!!!!!」」」」」
「ジョアーン、なんて良い子なんだ。そうだな、みんな家族だな。よし、みんなでバーベキューとやらをしよう」
お父様が決断してくれた。
バーベキュー開始は18刻。
それまでに、色々と準備しましょ。




