442.コッカー伯爵令嬢
アムちゃんとラビィーちゃんから聞いた話はこうだ。
コッカー伯爵家のリコリス商会は、扱っている商品はバックス商会とだいたい同じ。でも、バックス商会が平民から貴族までお客さんがいるが、リコリス商会の店舗は貴族街にありお客さんは貴族のみらしい。
そして、その伯爵令嬢、レティ・コッカーは栗鼠族で小柄だがアムちゃんとラビィーちゃんの同学年でクラスは別。だから接点はないかと思っていたが、コッカー伯爵令嬢は何かと2人に突っかかってくるらしい。だから、話題にあがったことが不愉快でしょうがないと。
「で、どんな事で突っかかるんだ?」
「最初は、顔を合わせたらお互いに挨拶ぐらいはしていたのよ。でも、お姉様がリジャル殿下の婚約者として発表されてからかな?公爵家だから選ばれたとか金を積んだんだとか、変な噂を流し始めて。あっ、でも先生達がちゃんと【番い】だからだと指導をしてくれて噂はなくなったんだけどね」
「知らなかったわ……どうして話してくれなかったの?」
「噂といってもまだ私達の学年ぐらいだったし、先生達の対応も早かったから……。でも、言わなくてごめんなさい」
ゴールダーがアムちゃんに聞くと、変な噂を流していたと聞き驚くシアさん。アムちゃん達が考える噂を流した理由としては、リジャル殿下の婚約者候補にコッカー伯爵令嬢の姉がいたそうだ。でも、シアさんが【番い】と認定された段階で婚約者候補の任を解かれ、今は他家の令息と婚約を結んだそうだ。
まあ、自分の事で妹が伯爵令嬢に突っかかられてるとは思わないよね〜。アムちゃんも、シアさんに心配かけたくなくて言わなかったんだろうし。
「他には?」
「あー、えーと、私の家が同業者なので私に対して、何か思うことがあるようで……」
「そうそう。テストの度にラビィーの点数と自分のを比較したりね。まあ、いつもラビィーの方が点が高いんだけど。でも学力で勝てないから、自分の店では他国のこんなのが売っているとか自慢して、最後に必ず言うのが「どこかの商会とは違って他国にもツテがありますから」って」
「まあ、それに関しては私も家族も気にはしてないんですけどね」
ハァーと溜息をつくラビィーちゃん。私はその表情から、他にも何かあるのかと思い聞いてみた。
「実は、最近になって仕入れていた所から契約解除を言われまして、理由をしつこく聞いたらリコリス商会の方が高く買ってくれるからということなんです」
「それって完全に嫌がらせじゃない!きっとバックス商会に嫉妬しているんだわ」
噂にしても、仕入れ先への横槍もアムちゃんとラビィーちゃんへの嫉妬からの嫌がらせだろうな〜。
ん?そういえば、何で私のこと気付かないんだろ?
「あの、ちょっと質問。獣人は変装しても性別がわかるって聞いたんだけど、コッカー伯爵令嬢は何で私のこと女だって気づいてないの?」
「ん?ああー、だから今日は【結界】を纏っているのか。ちなみに、それって誰に聞いた?」
「そう。えっと、ミンコフの領主のウル・バートン様だけど?」
ゴールダーに聞かれてそう答えると、公爵家の3人は一瞬驚いたものの笑い出した。それを見て私とラビィーちゃんは首を傾げる。
「あー悪い。確かに獣人は鼻が利くから、見た目を変えて香水をかけても匂いでわかる。でも、それは獣人の中でも一部だ。栗鼠族やラビィー嬢のような兎族などの種族はきっと騙されるだろう。だが、辺境伯や我が家など戦闘能力が長けた種族は気づくんだ。辺境伯は、それを注意する為にそう言ったんだと思うぞ」
「まあ、あの方は昔から相手に考えさせる為に、全てを語りませんから」
「うふふふ。相変わらずなのねウル爺は」
ウル・バートン様は、元王宮騎士団に所属していたそうで、軍務大臣を務めるティガー公爵やシアさん達も知り合いらしい。
おい!ウルさんよ。言葉が足りないだろうよ!
まあ、確かにそれを聞いてたから注意するようにはなったけどさ。
「それと、ゴブリンの集団に襲われていたんだろ?だとしたら、ゴブリンの悪臭で鼻がやられていたのかも知れないしな」
と、いうのが冒険者もしているゴールダーの見解。
*****
アフタヌーンティーを楽しみ、カフェから出るとそこにはコッカー伯爵令嬢が待っていた。
「お待ちしておりましたわ、ショウ様」
「は?」
さも当たり前のように私の腕を取るコッカー伯爵令嬢。
「あ、あの、何ですか?俺は約束してないですよね?」
自然に腕を引き抜き距離を取る。
「まあ、約束したではありませんか。我が家に招待すると」
「でも、俺は断りましたよね?」
「ええ、だからここで会えたのは運命なのですわ」
「運命?」
「ええ、わたくしとショウ様は運命のーー」
「あっ、俺そういうの信じてないんで。じゃあ、急ぐんで行きますね」
コッカー伯爵令嬢の言葉をぶった斬って、少し離れた所で待っていた皆んなの元へ小走りで向かう。そして、皆んなを促して路地に入るとベルデの【転移】で公爵家に移動した。
「「「っ!!」」」
「すっげー、これが【転移】!!」
「ごめん、いきなり【転移】しちゃって」
急に転移したことでシアさん、アムちゃん、ラビィーちゃんは驚いているが、ゴールダーは興奮し目をキラキラさせていた。その後、ラビィーちゃんはアムちゃんが馬車で家へと送って行った。
そして、私は準備した後にシアさんと共に王宮へ向かった。
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