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コミカライズ連載中【WEB版】享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜《第11回ネット小説大賞 金賞受賞》  作者: ラクシュミー


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435.ものの1秒で

本年も宜しくお願いします。

「ち、父上、そ、それは、ほ、本当ですか?」


領主の息子さん、バートン辺境伯は興奮のあまり顔が赤く言葉が吃ってしまっていた。


「もちろん事実じゃ。こちらのジョアン嬢のお取り計らいのお陰で、お前達にもフェンリル様の御目通りを叶えてくれたのだ」


と、領主様。

その言葉に、辺境伯御一家のあつい視線が私に集まり、ちょっと引いてしまった。


「え、ええ。領主様の仰っていることに偽りはありません。……パール」


足元に成犬サイズで待機していたパールに声をかけると、パールが成獣サイズになる。


『ジョアンの契約獣、フェンリルのパールと申します』


そうパールが挨拶すると、辺境伯御一家は片膝をつきパールに頭を下げる。


「我がアニア国の守り神であるフェンリル様。この度、ランペイル嬢のお取り計らいでパール殿にお目通りが叶い、大変嬉しく存じます」

『……私はジョアンの一契約獣。ジョアンに命を救われ、主と共にいる。貴殿の国、アニア国の守り神ではない』

「しかし……」


と、中々頭を上げず片膝をついたままの辺境伯御一家に、領主様と共に説明してなんとか頭を上げて貰う。


「ああ、まさか生きているうちにフェンリル様にお会い出来るとは……」

「あなた、これは夢ではありませんわよね?」


辺境伯ご夫妻は未だに夢心地でパールを眺める。その点、子供達は仔犬サイズのパールやロッソ、メテオと部屋の隅で遊んで楽しそうにしている。


やっぱり何にしても子供の方が、対応力あるかも知れないわ。


「ところでジェレミー、明日、王都に向かうのであろう?」

「ええ、定例会議がありますからね。余裕を持って今日、明日にでも出発しようかと」

「ああ、年納めのアレか」


話を聞くと、アニア国では年末に貴族当主が集まり会議をすると言う。ただ会議と言っても王からの有難い言葉を聞くだけで昼からは忘年会のようなパーティーがあるそうだ。

通常であれば社交シーズンでタウンハウスにいる予定だったが、子供達が次々と風邪を拗らせたこともあり、今回はギリギリになったそうだ。


「そんなお忙しいところに申し訳ありません」


と、謝ると辺境伯夫妻は「いえいえ、とんでもない」と首が取れんばかりに横に振る。


「ここから王都までは、どのぐらいの距離なんですか?」

「ここからだと2泊すればいい距離ですが、子供達がいますから余裕を持って3泊予定です」


確かに強行で行くには子供達に負担がかかるもんね〜。

しかも、風邪をひいて病み上がりだと尚更。

ウチのように転移扉があれば楽だろうに……あっ。


「あのぉ〜差し出がましいとは思いますが、本日こちらにお世話になるお礼として、私達に王都まで送らせて貰えませんか?」

「「「は?」」」


ベルデの【転移】であれば、どこへでも行けるし人数も関係ない。それなら一宿一飯の礼として、皆んなで王都へ向かえば良い。


「私の契約獣のベルデが全員を【転移】出来ますから」

「えっ!?【転移】?」

「ランペイル嬢、良いのですか?」


私達も、王都に行かないといけないわけだし。


「はい。私達も王都へ行く予定ですから」

「では、我が家のタウンハウスへお越し頂ければ……。ね、あなた」

「ああ、もちろんだとも」


辺境伯夫妻がタウンハウスへ招待してくれるが、私の宿泊先はすでに決まっていた。


「申し訳ありません。王都では、知り合いのお屋敷にお世話になる予定でして」

「ああ、ティガー公爵の所じゃな?」

「はい。昨日、文を飛ばして連絡しました」

「あの、父上?」


領主にはアニア国へ来た理由やティガー公爵家との関係も話していたが、辺境伯夫妻は私達の会話の意味が分からず2人で首を傾げていた。

その2人に領主様が説明すると納得してくれた。



*****



ーーー翌日。


「「……」」

「「すっげーー!!」」

「「はっやーーい」」


ランチ後、領主様に別れを告げバートン辺境伯のお屋敷から、タウンハウスの玄関ポーチまでものの1秒。

辺境伯夫妻と御者や護衛の皆さんは目をまんまるにし、子供達ははしゃいでいた。


「バートン辺境伯様、辺境伯夫人、大丈夫ですか?」

「あ、ああ……」

「え、ええ……」


その後、辺境伯御一家が到着したことを気配で察知した家令や侍女達がバタバタと玄関ポーチへやって来た。

私は一先ず、応接室へと案内されて辺境伯夫妻とお茶をしながら、【転移】のことやら話していると、家令さんが再びバタバタと応接室へやって来た。


「だ、旦那様!ティ、ティガー、こ、公爵家の方が……」


猫人族の家令さんは、興奮のあまり髪の毛が逆立っている。

それが、何とも可愛らしい。……おじいさん家令だけど。


辺境伯と共に玄関へ向かうと、そこにはティガー公爵家騎士団のゲータさん。そして、その後ろには以前よりも身長が伸びたトニー君が。


「ジョアン様、ご無沙汰しております。トニーです」

「トニー君!身長伸びたね〜」


キラッキラの目で挨拶してくるトニー君が可愛いくて、つい頭を撫でると、トニー君は目を細めて


「えへへ」


と、照れ笑いをし、それを見ているゲータさんは微笑んでいた。


「申し訳ありません、バートン辺境伯殿。この度は到着の連絡を感謝します」

「いえ、ランペイル嬢からお話は伺っておりましたので、到着した旨をお伝えしたまでです」


トニー君は、先に私を見つけて挨拶をしてしまった事を辺境伯様に詫び、連絡してくれたことにお礼を言う。

どうやら辺境伯様が到着してすぐに、ティガー公爵家に連絡をしてくれていたようだった。そして、それを聞きトニー君が自ら迎えに来てくれたそうだ。





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