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コミカライズ連載中【WEB版】享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜《第11回ネット小説大賞 金賞受賞》  作者: ラクシュミー


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431.人助け

ツヴェルク国を出発して、次は獣人の国、アニア国に向かうようです。

『で?次はどこに行くの』


モズとドゥリン公爵家の皆さんに見送られながら、私はスノーに騎乗し王都フンドレを後にした。


「んーとね、まずはここから海の方に向かって船でアニアに向かおうと思う。ベルデの転移でも海を飛び越えられるけど、初めての旅だし、異世界(こっち)の船乗った事ないからね」


『いいわね。海はファンタズモでしか見た事ないもの』

と、海沿いの街ファンタズモ出身のスノー。


「という事で、まずは港街トレッティへ行こう」


ーーー4日目。


私達は、いつも通り皆んなディメンションルームで野営をしなが楽しく旅をしていた。モズからは、王都フンドレから港のあるトレッティまでは、馬でおおよそ5日。その道中には魔獣も出るし山賊も出る事があるらしい。


「キャーーーーッ。た、た、助けてーー!!」


説明しているそばから、助けを求める誰かの声が聞こえる。


「スノー!メテオ!」

私がスノーに指示をすると、スノーは了解と返事をしてスピードを上げた。メテオは、並走して飛んでいたが私の呼びかけで上空へ飛び上がり、周囲を確認してくれた。


『姐さん、前方30mに馬車が襲われてるっす。相手はゴブっすね。1、2……6ゴブに、2ホブっす。あっ、木の影にゴブリンキングもいるっす。1ゴブキンっす』


「ゴブキンか〜。んじゃ、パールに乗り移るわ。スノーは、ちょっと離れていて。ベルデ、ロッソ、スノーを守ってね」

『りょ〜か〜い』

『かしこまりました』


覚醒して本来の大きさになり、並走しているパールにスノーから飛び移る。

「パール、威圧出しつつ向かって」

『了解よ』


フェンリルであるパールの出す威圧を感じ、ゴブリン達が逃げ出すのを期待しつつ襲われている馬車に向かう。馬車が目視出来る位置まで来るとパールの威圧で身動きが取れなくなった6ゴブ。2ホブはなんとかこちらに視線を寄越す。しかし、ひざが震えているのを私は見逃さない。


「ゴブキンは……。あー、あれって隠れてるつもり?」

『いやいや、無理でしょ』


呆れた私とパールの視線の先には、木に隠れながらこちらを見ているゴブキン。でも、その隠れている木はゴブキンの身体を半分も隠していない。なんなら、ガッツリと目が合っている。


「ゴブキンって、知能がゴブよりもあって話したりできるんじゃなかったっけ?」

『まあ、出来るのもいるってだけで……アレは違うでしょ』


おぉ、パールの辛辣な言葉頂きました〜。


「んじゃ、サクッといっときますか。先に雑魚から……メテオ、カウント宜しく〜」

『了解っす。んじゃ、1、2の3……はい、ゴブ終了。パール姐もホブ終了ー。残りゴブキン……って思ったら、逃げたっす』


逃げたゴブキンはパールとロッソにお願いし、私は再びスノーに騎乗して2台の馬車に近寄った。豪華な馬車には、どこかの家紋が付いていた。そして場所の周りには、護衛と思われる帯剣をした人が6人。人型になったベルデが確認すると、全員気を失っているだけ、外傷はゴブリン達の武器で殴られただけのよう。それを聞いてホッとした。ベルデに【ヒール】をかけて貰ったから、まもなく目が覚めるだろう。


トントントン「ひぃ……」

「あの〜、大丈夫ですか?」


恐る恐る開けた窓から、垂れ耳の老齢の男性が顔を出す。

「ゴ、ゴブリンは?」

「片付けました。もう、安全ですよ。護衛の方は、気を失っているだけなのでまもなく気がつくと思います」


ガチャ「危ないところをお助け頂きまして、ありがとうございます」

と、男性が綺麗なお辞儀をする。その姿はグレイやセバスチャンさんのよう。


「じい?」

馬車から可愛らしい声が聞こえる。

男性が返事をしガチャと馬車の扉を開け、手を差し出すとほっそりとした白い手が男性の手の上に乗せられ、可愛らしい耳の女の子が馬車を下りてきた。女の子の他にも、侍女服を着た女性も一緒に。もう1台の馬車からも何人か下りて来た。


「お嬢様、こちらのお方が私達を助けてくれたようです」

「まあ、そうですの?ありがとうございます」

と、女の子が頭を下げる。それに合わせて、他の人達も頭を下げる。


「いえ、お怪我がなくて良かったです。では、俺はこれで」

そう私は今、ジョアンではなくショウ。


「あの是非お礼をしたいのですが、この後はどちらに向かわれるのでしょうか?」

と、老齢の男性が聞く。

「えっと、トレッティです。そこから船でアニア国へ行く予定です」

「まあ、一緒ですわ。わたくし達もアニア国へ帰るところですの。宜しければ、我が家でおもてなし致しますわ。あっ、申し遅れました、わたくしはアニア国、コッカー伯爵家、次女レティ・コッカーと申します」


「ご丁寧にありがとうございます。俺は、エグザリア王国で冒険者をしておりますショウと言います。アニア国へは知人の所へ滞在する予定ですので、申し訳ないのですがお言葉だけで」

と、やんわりと断ろうとしたが、ガシッとレティ嬢に手を握られる。


「それではお礼が出来ませんわ。でしたら、王都にあるリコリス商会にお越し下さいまし。我が家は商会を営んでおりますの。そこで、ショウ様のご希望の物をご用意させて頂きますわ!!」

「そうですな、それが良いでしょう。食品から魔道具など、色々と揃っております。お越しの際は、こちらをお持ち下さい」

男性が胸元から取り出したのは、1枚のカード。そこには馬車に書いてある家紋が描かれている。


「私は、コッカー伯爵家の家令、トラスティと申します。こちらを商会で提示していただけますか」

「あ、ありがとうございます。では、行った際は宜しくお願いします」

トラスティさんの圧が凄くて、つい受け取ってしまった。


まあ、アニア国の食材とかも気になるし、魔道具も面白そうなモノがあるかも知れないし……。


気を失っていた護衛達の最後の1人が目を覚ます頃、成犬サイズに戻ったパールとロッソが戻ってきた。


ーーおかえり〜。

ーーゴブキンは、討伐完了よ。

ーー討伐部位はリュックに。それ以外は、ちゃんと灰にしてきたよー。

ーーありがとう。


ロッソの背負っている小さなリュックは、マジックバッグになっている。元々はロッソのおでこの魔石を隠すために、ロッソの帽子を作っていたメーガンちゃんは、帽子に合わせて服を作り出した。そして、前世の室内犬ばりに服を着こなしたロッソを見て、ジュリー叔母様が可愛さに悶絶し、マジックバッグのリュックをプレゼントしてくれた。


「じゃあ、俺たちはここで」

と、スノーに騎乗しトレッティに向かった。



先に向かう私を見て、レティ嬢が

「……白馬に乗った王子様」

と、呟いていたことを知っているのは、側にいたトラスティだけ。




短編『連勤術師はスローライフを希望する』を投稿しました。

宜しければそちらも読んで、続きが気になって頂けたら『いいね』やコメントを頂けたら嬉しいです。好評だったら、連載も……。

https://book1.adouzi.eu.org/n9446hy/

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