425.何者だと聞かれたら?
酒好きな皆さんが好む料理って言ったら、やっぱりツマミになるのかな〜。
あとは、シメに何かかな?
冷蔵庫とパントリーを見せてもらい、何でも使って良いと許可を貰ったのでそこからメニューを考える。
「んで?何を作るんだ?」
「えーっと、塩リモンの唐揚げ、キノコのアヒージョ、塩昆布キャベッジ、チーズフライ、だし巻き卵かな〜と」
「全く想像がつかねーな」
大まかに料理の説明をすると、興味があるから手伝ってくれるとのこと。だったら、いっそお昼ご飯もそれにしたら?と提案すると、賛成してくれた。
「じゃあ、唐揚げは、ボウルにリモン汁、塩、こしょう、おろしガーニック、おろしションガーを入れ、そこに一口大に切った鶏肉もといルフバードを入れて、10分ほど漬け込む。漬け込んだら、小麦粉と片栗粉を同量に入れたボウルに少しずつ入れて粉をまぶして、揚げたら完成」
「よし、じゃあそれは俺とコイツでやる」
「アヒージョのキノコは適当な大きさに、ベーコンは角切りしにて、鍋にオリーブオイル、ガーニックの薄切り、赤トンガラシ(鷹の爪)を入れてから火をつけて、温まったらそこに具材を入れて弱火で火を通して。最後に塩で味を整えたら完成」
「それは、俺が」
「チーズフライは、一口大に切ったチーズに小麦粉、とき卵、パン粉をつけて揚げるだけ」
「「「「「パン粉って?」」」」」
「あっ、パンをチーズクレーターで削った物……が、こちらです」
と、ストレージからパン粉を取り出す。
「お嬢のストレージ、色んな物が入っているんだな」
と、料理長が言う。
「はいはい、それ、あたしがやりたい」
と、紅一点の料理人が言う。ここでは、あと4人女性がいるけど、休みだったり休憩だったりで、今は1人だけ。
「塩昆布キャベッジは……この塩昆布を手で千切ったキャベッジと和えるだけ」
「そ、そ、それなら僕も出来ますか?」
厨房にいるドワーフの中でも1番小さなドワーフが、そろそろと手を挙げる。
「もちろん!お願いね」
「は、はい!!」
後で、料理長に聞いたところ、この小さなドワーフは入ったばかりで、引っ込み思案でネガティブな子らしくて、さっきのように自分から進んで行動するのが珍しいらしい。
「最後は、だし巻き卵だけど、コツがいるから私がやるわ」
「見てても良いか?」
と、料理長。
私は頷き、ストレージから出汁と卵焼き器ーーというか、四角いフライパンーーを出して、いつも通りに焼いていく。
ジューッ「お、おう……すげぇな。どんどん巻かれて」
ジューッ「慣れたら簡単ですよ」
ジューッ「……いや、その高等技術は俺には無理だ」
ジューッ「はい、完成!」
他の料理も出来上がり、献上するものはストレージの中に入れる。
「じゃあ、味見しますか?」
「「「「「「おーーっ!!」」」」」」
と、料理人達が拳を挙げる。
「「「「「「「うっまーーーっ!!」」」」」」
「こんな料理、食べたことない」
「唐揚げの肉がジューシーだ。ステーキよりもコッチが好きだ!」
「キャ、キャ、キャベッジに混ぜただけなのに、こんなに美味しいなんて……」
「何!?このフワフワの卵!食べると出汁?が溢れるしー」
「オリーブオイルでキノコを煮るなんて考えられなかったが、コレはいけるな」
一通り味見をし、皆んながワイワイと味について感想を言っている中、料理長がおもむろに私に聞いた。
「お嬢、あんたは……何者なんだ?」
その言葉を聞いて、話していた料理人達も私のことを見る。
「何者と言われても……。名前はジョアンで、エグザリア王国の使者で、辺境伯の娘で、料理好きな冒険者?」
「は?冒険者?使者だから貴族様だとは思っていたが……」
「あっ、ドゥリン公爵家の三男のモズとは学院の同級生」
「お、おう。確か留学してるって聞いたな」
「あと……何言えばいい?」
自分を何者か答えるのって意外と難しい。
何を言ったら正解なのかわからん。
「あー、じゃあこのレシピは誰から教えて貰った?」
「(この世界では)誰にも教えて貰ってないよ」
と、私は言い切る。
考えたのは前世の誰かだけど、現世では教えて貰ってないのは事実だから。
「あ、あ、あの、りょ、料理長……」
「ん?どうした?」
あの1番小さな料理人が、恐る恐る手を挙げる。
「ジョアン……様って、あの、エグザリア王国の ”食の女神” と、お、同じ名前かな……って……」
「”食の女神” っていやあ、あの家畜の餌を食べれるようにして飢饉で苦しむ民を救ったり、様々な美味い食べ物を世に生み出したという、あの謎の人か?」
何?その謎の人って?勝手に二つ名付けられただけで、隠してるわけじゃないし。
それに、何?飢饉に苦しむ民って、聞いてないんですけど!
「お、お嬢、もしかして……」
と、料理長が言うと全員の視線が一斉に集まる。
「あー、その謎の人で……す」
「「「「「「おおーーつ!!すげーーーっ!!」」」」」」
バシッ「何で言ってくれなかったんだよ!」
「いったーー!いやいや、自分からその恥ずかしい二つ名言うのっておかしくない?」
背中をバシッと大きくて肉厚な掌で料理長に叩かれて、涙目で反論する。
「まあ、確かにそりゃそうだ。ガッハハハハハハ」
料理人達にお礼を言って、厨房を出ると先程の側近さんとは違う騎士服の人が案内すると言う。その後について行くと先程とは違う部屋に案内される。
促されて中に入ると、バタンと扉が閉まりガチャガチャと鍵を閉められたようだった。
「あー、そういうことですか。」
どうやら私は閉じ込められたようだ。
部屋を見渡すと、小さな窓があり荷物が無造作に置いてあるのでここは物置きらしい。
「んー、扉壊すわけにはいかないよね〜。それに、出たとして見張りがいたら面倒だし。ベルデ、いる?」
『はい。こちらに』
私が厨房にいる間、妖精の姿で王宮を見学していたベルデは、私の呼びかけにすぐやって来てくれた。
『ジョアン様、なぜこんな所に?』
「あー、閉じ込められた」
『では、扉を破壊しますか?』
「いや、よそ様の家だからそれは止めて。そうじゃなくて、ドゥリン公爵の所に【転移】して良いか、聞いて来て欲しいの」
『かしこまりました』
そう言うと、再び部屋から出て行った。
しばらくして、ベルデが戻って来た。ドゥリン公爵に許可を貰ったので、先程の応接室に【転移】をする。
そこには、先程と同じように女性陛下と大臣's が揃っていた。ただ、先程とちがうのは皆んなが黒い笑みだと言うこと。
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