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コミカライズ連載中【WEB版】享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜《第11回ネット小説大賞 金賞受賞》  作者: ラクシュミー


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416.チーズポンム

イジョクさん達を見送ってーーといっても執務室から【転移】したけれどーー再び、執務室にはグレンさんと私とパールだけ。

「感謝する。久々にアイツらの元気な顔見れた。」

と、頭を下げるグレンさん。

「いえ、でも本当に内緒ですよ。」

「もちろんだ。バレたら俺も責任を取らないとならなくなるからな。」

そろそろ帰ろうかと思うと、グレンさんが胸元から装飾され、柄の部分に紋章がある短剣を出した。

「これをお嬢に渡す。」

「は?これは?」

「我が家の紋章が入った短剣だ。これを見せれば、俺の家の者だという証明になる。余程のことがなければ丁重に扱われるはずだ。」

「えー!?何で。」

「これから王都に行くんだろ?なら、あった方がいい。武力なら心配はいらんが、他国の人間に当たりが強い所もあるからな。」

「ありがとうございます。じゃあ、お礼にコレを。」

と、ストレージからどぶろくを取り出す。

「コレは?」

「私の作った、濁り酒です。ガンダルさんからは、お墨付きを貰いましたよ。」

「あの酒豪が、お墨付き……。ありがたく貰う。」



*****



冒険者ギルドを出た後は、ロッソの希望の屋台巡りをした。

屋台では串焼きや魔獣の煮込み、揚げジャガトなどツマミになりそうな食べ物が多く、それより多いのはお酒を販売している屋台。さすがドワーフの国。まだ、昼だというのに飲んで赤ら顔の人が多い。そして、そんな酔っ払いをターゲットにしたスリも多く、先程から私にもぶつかって来ようとするが、寸前のところでかわすので、もれなく舌打ちされる。


『ジョアン、あった。あそこ行こう。』

私の肩の上からずっと何かを探していたロッソが、私の頬をペチペチ叩きながら言う。ロッソが指す方向を見ると、1つの屋台があった。近づくと、その屋台からは甘い匂いがする。

「すみません。これは、何ですか?」

店員のお姉さんに聞く。

「いらっしゃい。これは、ポンムというお菓子よ。」

よく見ると、生地をたこ焼き器の様な鉄板の窪みに入れて焼き、火が通ると生地が膨らむ。いわゆるベビーカステラだ。

「じゃあ、それをーー」

「20個買ってくれたら、3個オマケするわよ。」

「マジで!?じゃあ、30個でオマケ5個に!」

「ん〜、特別よ。じゃあ、300D(ダラー)ね。」

「ありがとう。早速……ん〜、ふわふわで美味しい〜。」


ちょうど店の隣にベンチがあったので、そこで焼きたてのポンムを食べていた。

「ふふふ。お嬢さん、美味しそうに食べるわね。」

「いや、だって美味しいですもん。この、優しい甘さが好き。」

「嬉しいわ〜。でも、みんなお菓子よりツマミの方が好きでね〜。中々、売れないのよ。」

と、お姉さんが嘆く。

「じゃあ、ツマミにしちゃえば良いのに。」

「どういうこと?」

と、首を傾げるお姉さん。

「例えば、中にチーズを入れるとか。生地の甘さとチーズの塩気で合うと思うんですけど。後は、トメット入れたり。」

「あら、それ美味しそうね。ちょっと、やってみようかしら?

チーズ買ってくるわ。」

「えっ!?」

私が驚いてある間に、お姉さんは何処かへ走って行った。

「どっか行っちゃった……。」

『モグモグ……大丈夫じゃない?誰も……モグモグ……来ないし。』

と、ポンムに夢中なロッソ。その横では、近くの串焼き屋で買ってきた肉を、頷きながら食べるパールとメテオ。


しばらくすると、お姉さんが戻って来た。

「ごめんね〜。チーズとトメット買って来たわ。」

そういうと、手際良くチーズポンムとトメットポンムを焼きだした。周りの生地から溢れたチーズの香ばしい匂いがしてきた。

「まずは、試作品第一号ね。はい、どうぞ。」

「えっ?私も良いの?」

「もちろん!考案者だもの。どれどれ……あつっ……ハフハフ……あっ、ヤバッ。コレ、美味しいわ。」

「あっつ……ウマッ……良いですね、コレ。」

焼きたてのチーズポンムは、ひと口食べるとチーズがいい感じに伸びる。それも、また面白いし、冷めたらきっとそれはそれで美味しいはず。


「トメットは……あーっつ!!コレは、トメットの汁が出て危険ね。口の中がヒリヒリするわ。」

「あー、火傷ですね。コレ、飲んで下さい。」

ストレージから出したのは、【アクア】の冷水。トメットの汁で火傷するのは予想出来たのに、教えなかったのは私の落ち度だから、治療ぐらいはさせてもらう。

ゴクッゴクッ「あら?ヒリヒリしなくなったわ。ありがとう。」

「どういたしまして。ん〜、作る手間や材料費を考えたりすると、まずはチーズだけの方がいいですかね?」

腕組みをしながら話すと、お姉さんはこちらを見て驚いている。

「お嬢さん、冒険者だと思っていたけど、何か商売でもしたことがあるの?」

「あー、はい。自分の所の領で、少し。あっ、チーズポンムが軌道に乗ったら、中身をソーセージや串焼きの肉か煮込みの肉でも良いかも知れないですね。もしそれをするなら、どこかの屋台と卸す契約とかをしてーー」

と、1人で話しているとガッとお姉さんに手を握られる。

「お嬢さん!!凄いわ!!」

「へっ!?」


色々と提案した事で、店員のお姉さん、ナールさんからとても感謝された。

「売れるかしら?」

店頭には、新商品チーズポンムと目立つように書いたが、皆んなチラッと見るだけで立ち止まってはくれない。

「ん〜。ナールさん、試食してもらいましょ!」

「試食?」

「はい。お試しで食べてもらうんです。」

「そうね。このまま、ボーッとしてるよりは良いかも知れないわ。」


ナールさんが作ったチーズポンムを、一つずつ串にさしてお皿に並べた。

「新作のチーズポンムでーす!あっ、そこのお兄さん、試しにおひとついかがですか?お試しは無料ですよー。」

「んあ?チーズポンムだと?」

呼び止めたおじさんは興味を示してくれた。

「はい。ほんのり甘い生地にチーズの塩気がマッチしてますよ。はい、どうぞ。」

「お、おう。……ん?美味い!!これは、酒にも合うな。よし!姉ちゃん、これを10……いや、20くれ。」

「はい、まいどあり〜。ナールさん、20個でーす。」

「は、はーい。」


私が男性をターゲットにする横で、ベルデが女性をターゲットにしていた。お陰で、先程まで閑古鳥だった屋台は、長蛇の列となった。




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