393.リーダス監獄
《リーダス監獄》
東のリーダス辺境伯領にある、海上に浮かぶ孤島にある監獄。島を取り巻く海流の速さと海水温の低さから、泳いで逃げることが難しいことから、主に、スパイ行為ーー他国に自国の情報を流すなどーー、殺人などの終身刑の受刑者が独房に収容されている。全ての受刑者には、GPS機能と魔法封じの魔道具が身体に埋め込められるそうだ。そして、その監獄は、代々リーダス辺境伯一族が担っている。
リーダス監獄は、脱獄不可能な監獄、前世でいう所のアルカトラズ島のような所だったはず……。
飴ちゃん、そこでやって行けるのかな?
魔力暴走だって、したくてやったわけじゃないのに……。
この処罰が重いと思うのは、私だけ?
「あー、ちなみにキャンディ・ブランは受刑者には変わりないが、独房に入るわけでなくリーダス監獄島で下女のような職に就かせる。」
宰相様の話では、極刑の受刑者や再犯の可能性のある受刑者は独房らしいが、それ以外の受刑者でしかも刑の軽い者は、食事の調理や掃除などをする受刑者がいるそうだ。飴ちゃんは、それに該当するそうだ。
「つまり、終身刑でリーダス監獄からは出ることは出来ないが、それ以外は通常の暮らしが出来ると言うことですか?」
と、フレッド殿下。
「そういうことになります。」
と、宰相様。
良かった……。それなら、大丈夫かも……。
あとは、現実を受け入れてくれるだけ……。
*****
ーーー1週間後。
今、私は、王城の地下にある牢獄の入り口前にいる。ここの貴族牢に飴ちゃんはいる。貴族牢とは、罪を犯した貴族が一時的に入る牢屋。
5日後、飴ちゃんはリーダス監獄へ移送される。その前に、私と話したいと飴ちゃんが希望したと言うことで、授業が終わった後、王城へやって来た。
「本当に大丈夫か?無理しなくていいんだぞ?」
立会人として私に付き添ってくれる、アルバート殿下が心配そうに聞く。私達の後ろに控えているルーカス様やリュークさん、メルヴィンさんも心配そうな顔をしている。
「はい、大丈夫です。」
地下牢の牢番に案内され、飴ちゃんの入っている貴族牢に入る。貴族牢に入ると、8畳ぐらいの部屋の中に金属で出来た柵があった。柵の中は6畳ぐらいで普通の部屋のように、ベッドやソファー、机が配置されている。中にある扉は、トイレがあるそうだ。柵は太い金属の棒が格子になっていて、とても頑丈そう。その柵の入り口には鍵が付いていて、こちら側には出て来ることはできない。
飴ちゃんは、ソファーに座り読書をしていたが、私を見ると本を閉じて柵の近くまでやって来た。
「……本日は、あたしの為にすみません。」
先日の夜会とは違って、か細い声で話す飴ちゃん。
「いえ、何か私にご用事でしょうか?」
「あの……この前は……ごめんなさい。……それから……ありがとう。」
飴ちゃんが頭を下げる。
「頭を上げて下さい。……身体は、大丈夫?」
「はい。……ここがゲームの中じゃないことも、ちゃんと理解出来ました。」
「そう。それなら、良かった。」
「あの……どうして、あたしを助けてくれたの?あたし、あなたにもあなたの使用人にも酷いことしたのに……。」
私を見る飴ちゃんの目は不安そう。
「ん〜。どうしてかな?あっ、ザックはもう元気になって、学院通ってるから大丈夫よ。で、どうして……ん〜、私が後悔したくなかったからかな。」
「後悔?」
「ええ。ブラン嬢がゲーム内と混同して、その通りにしようと周りを振り回すのは許せなかったけど……。でも、ブラン嬢の魔力暴走で誰かを傷つけるのも、ブラン嬢が傷つくのも嫌だったの。だから、自己満足かも知れないけど後悔したくなかった。」
「そうなんだ……。」
「それに、出会い方が違えば友達になれたかも知れないなって思って。」
「え?あたしと?」
「ええ、そう。」
チラッとアルバート殿下を見ると、ため息を吐きながら頷く。
「……私もね、前世の記憶があるの。」
「えっ!?嘘?日本人なの?」
「そうよ。とは言っても、享年82才のおばあちゃんだけどね。だから、乙女ゲームはやってなかったわ。あっ、でもラノベは孫から勧められて何冊か読んだけどね。」
「82、孫……。超おばあちゃんじゃん。」
「そうよ。だから、敬いなさい!」
「いやよ、今は10代でしょ!」
「それでも、あなたより年上よ。だから、色々とあなたのこと心配なの。……これから、今までと違う生活が待っているのよ?」
「ええ、それもちゃんと聞いたわ。終身刑なんでしょ。下女の仕事をするって。あたし、元平民だから家事は手伝っていたから大丈夫。やる時はやるんだから!」
「ふふふ、そう。やる時はやる子なのね。」
「そうよ!」
と、言い切った飴ちゃんの笑みは、今まで見た中で1番年相応で可愛い笑顔だった。
「そうだ。餞別じゃないけど、何か食べたい物とかある?」
「何?急に。でも、食べたい物……。ハンバーガーかな。いつも塾帰りにファストフードで夕食取ってたんだ。」
「えっ?家で用意してくれないの?」
「塾の時間が遅いから、あたしの分はなくてお金くれてた。」
「は?何それ?親としてどうなの?出来ることなら、その前世のご両親に説教したいわ!!」
「きゃははは。ちょー説教してもらいたい!」
「ちなみに、何バーガー好き?」
「よく食べてたのはテリヤキかな。」
飴ちゃんの答えを聞いて、私はストレージからテリヤキバーガーを取り出す。
「お客様?ご一緒にポテトはいかがですか?」
と、ポテトも取り出す。
「えっ!?マジで?」
「マジ、マジ。」
牢番にお願いして、柵の小窓から中に入れてもらう。ちなみにドリンクは、ミランジジュース。
「わっ、パンも柔らか!こっちのパンって硬いのばかりだと思ってたのに……。いただきます。……うっま。同じ味だ……ううっ……美味しい、美味しいよ……。」
飴ちゃんは、口の周りにテリヤキソースを付け、泣きながら頬張っている。飴ちゃんが食べ終わる間、私達はお茶をする。ストレージから、テーブルと椅子を出し柵の手前に置いて、お茶を入れてアルバート殿下とルーカス様とお茶をする。
「美味しかった……って、何してんの?」
「え?お茶だけど。ちなみにリップルティー。」
「いや、そう言うことじゃなくて……普通、ここで茶する?」
「だって、待ってるだけじゃあね〜。」
「だからって、テーブルと椅子まであるし……。チートすぎるでしょ。ずるくない?」
「そうかな?で?美味しかった?」
「……まあね。ねぇ、他にも日本食あるの?」
それから、私と飴ちゃんは日本食についてや前世の家族の事を話し、いつの間にか「ジョアン」「飴ちゃん」と呼ぶ仲になるぐらい仲良くなった。
それを見ていたアルバート殿下からは、「相変わらず人たらし」と言われた。
解せぬ。
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