386.恐るべし我が弟
もう、8月も終わりですね〜。
早いなぁ〜。
アニア国の使者達が訪れてから1週間ほど経った土の日、私は久々に朝からサラを筆頭にチーム侍女に磨かれている。大変だから程々にと言うと
「ジョアン様を磨けるのは、本当に嬉しいんですよ?」
「毎日、やりたいぐらいです!!」
「私達の楽しみを奪うのですか?」
と、口々に言われてしまった。それを見ていたライちゃんは、肩を震わせて笑っていた。その横では、テトが手にメモ帳を持ちながら、真剣に先輩侍女の技を見ている。
「お姉様、眉間に皺が寄ってますよ。」
「だって……。」
「お姉様、普通であれば婚約者がいてもおかしくない年なんですよ?ただ、我が家が政略結婚をしないだけで。お兄様達が、釣書を燃やしたり、粉々にしたり、氷漬けにしなければ。」
えっ?釣書って突き返したとかじゃなく物理的に?
お兄様達、何やってんだか……。
「まあ、今までの釣書は読む価値もないものだったから、良いですけどね。」
「えっ?ライちゃん?」
「大丈夫です!釣書はお兄様達だけじゃなく、私もフウも選別していますから。」
「フウちゃんも?」
「当たり前です!お姉様を託す方ですもの。顔だけ、家格だけなんて以ての外ですわ!安心して下さい、お姉様。私達が選んだ後に、お兄様達が確認しますけど、その間に《影》からの情報が入りますから。間違いないですわ。」
私の相手探しに《影》まで使うって……。
さすがに、やり過ぎじゃないの?
「それに釣書審査が終わった後には、実技試験としてお兄様達や皆んなとの打ち合いがありますから。」
「は?皆んなって?」
「「「私達です!!」」」
マッサージをしてくれているサラ達が言う。テトも頷いている。
「サラ達が?」
「ええ、もちろん使用人だけではなく私兵団もですよ。」
「いやいやいや、何の試験なのよ?婚約者なのよね?私兵団の新入団員ではないでしょう?」
「ランペイル家関係になる方は強くなければ!」
「「そうです!!」」
「ちなみに、未だ実技試験まで進んだ者はいませんわ。」
と、胸の前で腕を組み勝ち誇ったように言うライちゃん。
「さいですか……。」
婚約ねぇ〜。この世界はなんでも早いわ。
16才なんて、前世ではまだ高校生だし結婚なんて考えていない時期だもん。
「まずはお姉様の希望から、外れている人から切り捨ててますから安心して下さいね。」
「え?」
「お姉様を幸せにする為なんですもの。お姉様の希望を聞かない相手なんていらないでしょう?お姉様の夢である魔物討伐団入団に難色を示した段階で、アウトですわ。」
「ライちゃん……。」
本当に私のこと考えていてくれた。
私が幼い頃から魔物討伐団入団が夢なのも、ライちゃんまでちゃんと考えていてくれた。
「あらあらジョアン様、涙はダメですよ。せっかく綺麗になったのですから。」
「サラ……ありがとう。」
「とても綺麗ですよ、ジョアン様。」
シュッ「はい、コレで完璧!」
「ライちゃん……今のは?」
「もちろん、フウの香水ですよ。」
「えっと、何番の?」
フウゴの香水:ジョアンSPは、効果が違うものが何種類かある。No.1の綺麗さ重視、No.2の可愛さ重視、No.3のエロさ重視、そしてNo.4の男装用。
「うふふふ。新作ですわ、お姉様。」
「新作!?」
「ええ、No.1の香料の濃度を上げた、No.5ですわ。濃度を上げたので、長時間でも香り続けますわ。だいたい半日ぐらいですけれど。」
マジか……。今まで2~5時間のオードトワレだったのに、6~12時間程のパルファンを作ったの?
まだ、10才のフウちゃんが?恐るべし、我が弟。
*****
軽食を食べて、リビングに行くとお父様とお母様、双子ちゃんがお茶をしていた。
「お父様、お母様、お待たせ致しました。」
「おぉ〜、ジョアン。いつも以上に綺麗じゃないか。」
「ええ、本当に。綺麗よ、ジョアン。」
「姉様、綺麗です。」
「ありがとうございます。ニッキーさんとライちゃんのプロデュースのお陰です。フウちゃんも、香水ありがとうね。」
「ん?フウゴの香水?……何番だ?」
と、お父様。
「No.1の濃度を上げた、No.5です。」
「まあ、濃度を上げることに成功したのね?」
「はい、母上。」
「では、特許を取らなければね。」
「そこは、ジュリー叔母様が申請済みだと言ってました。」
「さすが、ジュリーね。」
と、お母様は満足そうな笑みを浮かべた。
「そう言えば、今回の参加者はどう言った方達なのですか?」
と、私が聞けばお父様が教えてくれる。
「今回は、アニア国の皆様がお帰りになる為の夜会だから限られた者だけだな。上位伯爵家までだが、ジョアンの知っている所では、ホルガー公爵家、カッター公爵家、ディーゼル侯爵家、リバークス侯爵家、バースト伯爵家、ロンゲスト伯爵家、レルータ伯爵家、それから特例のティーダ男爵家だな。」
特例としてダッシャー商会のティーダ男爵家が今回の夜会に招待されているのは、夜会での料理にお茶の葉を使ったスイーツを提供することになったから。料理についての説明を求められた際に答えられる様に、そしてアニア国での販路を開拓する為にだ。もちろん、販路開拓については陛下推奨で行うそうだ。
「父上、ラムディール殿下に宜しくお伝え下さい。」
と、フウちゃん。
「ああ、伝えておこう。……あんな事が起きなければ、このままエグザリアにおれたものを。」
「お父様、それはラムディール殿下の自業自得ですわ。自分の護衛を撒いて、行動したのですもの。しかも未成年で飲酒などと……。」
と、ライちゃんはご立腹。
ラムディール殿下は、お茶会で伯爵令嬢の誘いにのってイデアさんに強力な睡眠薬入りのドリンクを飲ませて撒き、強要されたかと思っていた飲酒は自ら行ったらしい。そして、伯爵令嬢と共に学院をサボったことを自白した。しかも、学院に欠席を届けてバレない様に企てたのも、ラムディール殿下本人。その自白を聞いた時の、リジャル殿下の威圧を込めた咆哮は凄かったらしい。ラムディール殿下の療養している客室の窓ガラスは全て割れ、室内にある花瓶など割れるものは全て割れたらしい。さすが獅子人族と思っていたら、スキルのようなもので全ての獅子人族が出来るわけではないらしい。だが、今回リジャル殿下が使者として選ばれた理由の1つが、この咆哮ができることだったらしい。昔から、ラムディール殿下がリジャル殿下を怖がっていたと言うのも、咆哮でよく怒られていたから。
面白い、もっと読みたいと思ったら、『いいね』でも、ページの下にある【☆☆☆☆☆】でもタップして下さい。あわせて、ブックマーク&評価も宜しくお願いします!
お気に入り登録や感想、メッセージも頂けたら嬉しいです
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




