381.痴話喧嘩
案内されたのは、いつもの会議室。
中に入ると、陛下、王妃様、宰相様、リバークス侯爵、お父様、アルバート殿下と攻略対象者が揃っていた。皆んな、心配そうな顔で私を見ている。私と彼は空いていた席に座る。
「ジョアン、大丈夫か?」
お父様が声をかけてくれる。
「はい。大丈夫です。」
「では、記録用の映像を見てみましょう。」
宰相様が言うと、先程の御者が時計台に設置していた記録用魔道具と、私が馬車に乗った後に外したヘアピン型の魔道具を何かの魔道具の上に置く。すると、プロジェクターのように壁に映像が写し出される。
映像には、私が時計台の階段を登るところから始まり、飴ちゃんの独り言、手摺りが壊れて私が落下するところ、そして彼に助けられ馬車に乗り込むまでが流れた。
映像を見終わると、お父様が勢いよく立ち上がる。
「ジョアンを助けて頂き、本当にありがとう。リバークス侯爵令息。」
と、彼、カズール先輩に頭を下げた。
「いえ、私は頼まれただけですから。」
その後、図らずしも関係者となったカズール先輩に、今までの経緯を説明する。もちろん、私の前世の記憶持ちのことやスキル、契約獣についても。
「……そんなことが。」
「ああ。申し訳ないが、リバークス侯爵令息にも、神殿契約をしてもらうことになる。」
「かしこまりました。」
*****
ーーー王妃様の部屋にて。
一旦休憩となり、話があると王妃様に連れて来られた。
「ねぇ〜ジョアンちゃん?もしかして、リバークス侯爵令息がタイプ?」
「えっ!?な、な、な、なんで?」
王妃様の急な質問に、激しく動揺した。
「「「「……。」」」」
王妃様と侍女トリオが、生暖かい目で私を見ている。
「うん。今のでわかったわ。」
「……そんなにわかりやすい?」
「かなりね。リバークス侯爵令息を見る時の目が乙女よ。……確かに、L系だものねー。」
王妃様が言うと侍女トリオも頷く。
「リバークス侯爵令息と言えば……『ドキ花』には、隠しルートがあるのよ。正規の攻略対象者全てとある一定の親密度になると、隠しルートの攻略対象者が出てくるのよ。私は、そこまでやり込んでなかったんだけどね。アレって、もしかしたら、リバークス侯爵令息だったかも……。」
「えっ?カズール先輩が隠しルートの攻略対象者?」
「いや、わからないわよ。私も、ネットのファンサイトでチラッと見ただけだったし。でも……銀髪で黒目でしょう?他にはいない気がするのよねぇ〜。」
「あっ、だから、飴ちゃんがあんなにも驚いた顔をしていたのは、カズール先輩を見たから?」
「たぶんね。」
「ちょっと、それ、陛下達には?」
「まだ、話してない。」
「はい、行くよ!!スージーさん、先触れをお願いします。」
「かしこまりました。」
「ほら!早く!!」
「え〜、面倒なんだけど。」
中々動こうとしない王妃様に、セーラさんとピアさんも呆れ顔。
「んじゃ、夕食は私が作るから!」
「よし!行こう!!」
「えっ、ちょっ、待っーー」シュン。
やる気になった王妃様の行動は、早かった。急に立ち上がり、私の手を取ると転移した。
転移先は、会議室だった。
そこには、先程のメンバーと、先触れをお願いしたスージーさんが、こちらを見ていた。
「王妃、転移して来たら先触れの意味がないと思うのだが……。」
と、陛下。
「申し訳ありません。事が事だけに、急がなければと思いまして。」
と、白々しく話す王妃様。
いやいや、さっきまで面倒とか言ってたよね?
事が事だけにって、夕食の事だよね?
私のジト目をきれいにスルーした王妃様は、隠しルートの事を話した。もちろん、確定ではないことも含めて。
「えっ?俺が?」
「ま、まさか、息子まで……。」
さすがに『鬼の軍務大臣』と呼ばれている、リバークス侯爵も、子供のことになると動揺するわよね〜。
「では、やはり来月の夜会ではリバークス侯爵令息にも参加して貰わねばならんだろうな。」
と、陛下。
「そうなりますね。」
と、宰相様。
宰相様からの説明によると、私と王妃様がいない間に、夜会に誰が参加するかを決めていたようだった。社交界シーズン開始の王家主催の夜会は通常であれば、貴族の当主と嫡男やそれに準ずる者、そしてそのパートナーだけでも良いらしい。だが、今回はノア先輩、ヴィー、エド、カリム、私は関係者として参加予定になり、カズール先輩の参加をどうするか考えていたところだったらしい。ちなみに、我が家の嫡男ノエル兄様は、魔術師団として警備にあたるそうだ。
私も参加かぁ〜。また、お母様ドレス選びに張り切っちゃいそうだよね〜。
それにしても、パートナーか……いないんですけど。お父様はお母様でしょう?ノエル兄様は仕事だし、ジーン兄様もたぶん仕事。アラン兄様も仕事として会場入りよね?ってことは、ヴィーかな?
「ーーという事になるな。では、皆、当日はそのように頼む。」
「「「「「「「「「「御意に。」」」」」」」」」」
「っ!?」
ヤバい、夜会のこと考えていて、全然話聞いてなかった……。
「じゃあ、ジョアンちゃん。お願いね?」
「へっ?」
王妃様に話しかけられて、つい聞き返してしまった。
「へ?じゃなくて、ご、は、ん。作ってくれるんでしょう?」
「あ、はい。」
「何?ジョアン嬢の料理か?それは、楽しみだ。ここ最近、食してないからな。」
「陛下、嘘をつかぬよう。先日、アルバート殿下がジェネラルに行った際に、頂いているでしょう!私こそ、食していないのに!!」
「しかし、あれは土産であってーー」
「土産だとしても、食べてるではありませんか!!」
私の料理で、陛下と宰相様が言い争ってる……。
周りで見ている私達のこと、忘れてる?皆んな呆れているの、気付いて〜!!
「えーっと、そんなにジョアン嬢の料理は美味しいのですか?」
この中で、私の料理を食べた事のないリバークス侯爵が聞く。
「「美味い!!」」
陛下と宰相様が声を揃えるのに、リバークス侯爵以外は苦笑する。
「父上、本当にジョアン嬢の料理は美味しいですよ。」
「なんだカズールも食べた事があるのか?」
「はい。騎士寮で頂きました。」
「うふふ、ジョアンちゃん、みんなに振る舞ったら?」
と、王妃様。
「はい。私の料理で宜しければ。」
私が言うと、宰相様だけではなくノア先輩やエド、カリム、ソウヤ、マッさんも小さくガッツポーズをしているのに、苦笑してしまった。
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