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コミカライズ連載中【WEB版】享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜《第11回ネット小説大賞 金賞受賞》  作者: ラクシュミー


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375.ザックの怪我

飴ちゃんが動き出したようですよ?

飴ちゃんを見張るも目立った行動がなく、こちら側が気を緩めた頃、ある事件が起こった。


その日、キャシーちゃんが午前中から王城にて、王妃様の執務の手伝いをすると言う事だったので、私達は通常通り騎士科で授業を受けていた。午前中の授業が終わり先生が教室を出てすぐバースが走り込んで来た。

ガラガラッ「ジョアン様!いらっしゃいますか!?」

「バース?」

「あっ、ジョアン様!ザ、ザックさんが、怪我を!!」

「えっ!?ザックが?」

「「「「「「「えっ!?」」」」」」」


私とソウヤ達は顔を見合わせ、急いで文官科棟に向かう。医務室に向かう途中、バースに話を聞いた。

その日、ザックは午後からの授業で、食堂でランチを取る為に早めに学院に来たようだった。食堂へ向かっている所、バースとテトが教室から出てこちらに向かって来ていたので、呼びかけようとすると、バースとテトの後ろから何本か《火矢》が飛んで来るのが見えた。咄嗟に「危ない!」と叫び、バース達の元へ駆け寄り庇ったが、何本か掠ったと。バース曰く、犯人は見えなかったが、嗅いだことのある匂いがしたと。


医務室に着くと、ノックも忘れて飛び込んだ。

「ザック!!」

「ん?ジョアン?えっ?ソウヤ達まで、何で?」

私達が入って来たことに、ザックは驚いていた。その傍らでは、テトが泣いている。

「バースから、怪我をしたって聞いたから。」

「ああ、悪い。……上手いこと避けれなかった。」

「で、どうなの?具合は。」

「ちょっと、背中を火傷したぐらいだ。大した事ない……痛っ。」

ザックの後頭部を叩いたのは、医務室の年配エルフ先生だった。

「何が大したことないだ。格好つけやがって。ちゃんと話すんだ!ここまで心配して来てくれているんだぞ!!」

「………。」


無言を貫くザックの代わりに、医務室の主、見た目は30代の年配エルフのクルゴン先生が話す。

「《火矢》による火傷は大したことがないんじゃが、どうやら矢の中に痺れ薬を塗った矢もあったようでな、それが左肩を掠めて、今、左手が痺れている状態じゃ。それが、どのぐらい持続する毒なのかわからない。」

「「「「「「「「「えっ!!」」」」」」」」」

ザックは、俯きこちらを見ようとしない。

「【アクア】!」

私は、まず解毒をしようとザックに飲ませる。そして、ザック

に確認を取り【サーチ】をする。

「【サーチ オープン】」



----------------------------------------------------------------------


[ザック]

ランペイル領出身。ランペイル家従僕見習い。16才。


状態:背中…火傷。

   左腕…麻痺。


補足:火傷は《火矢》によるもの。

   左腕の麻痺は【アクア】で解毒可能。

   回復までおよそ1ヶ月。

   早期回復には回復魔法が有効。


----------------------------------------------------------------------



「これは凄いな……。ここまで詳しい【サーチ】は見たことがない。さすが、ランペイル家じゃな。」

見た目は30代のクルゴン先生は、実はお祖父様の同級生。魔術師団退団後、学院の医務室で勤務することになり、お父様をはじめランペイル家関係者が一度はお世話になっているようだ。クルゴン先生に、お礼を言い医務室を出る。


学院の外に出ると、ちょうどランペイル家の家紋の入った馬車が止まった。中から出て来たのは、ナンシーとネイサン。

「「ザック!!」」

「あっ、母さん、兄貴。……ごめん。しくじった。」

「それで?大丈夫なの?」

「ああ、左腕がちょっときかないけど……。」

「「えっ?」」

「ナンシー、ネイサン、ここでは何だからひとまず帰ってベルデから治療を受けて。バースとテトも一緒に帰りなさい。」

「えっ?俺たちもですか?」

「ええ、荷物は私が持って行くから。ね?」

「「わかりました。」」

馬車を見送ると、私は呟いた。

「……許さない。」

「ジョアン……。」

ベルが、そっと背中をさすってくれる。

「ジョアン、俺たちも手伝うぞ!!」

ソウヤが言うと、皆んなが頷く。

「皆んな……ありがとう。」


早速、私達は行動した。まずは、バース達の荷物を受け取りがてら現場検証と聞き込みをしようと移動する。

文官科1-Aの前では、ダッシャー商会の娘アリーシャちゃんがキョロキョロしていたが、私達を見ると駆け寄って来た。

「ジョアン様ー!!バースとテトは?それに、2人を庇ったザック先輩は?」

「2人共大丈夫よ。ザックはちょっと火傷したぐらいだから。」

「はぁ〜、良かった……。」

「あっ、バースとテトの荷物を取りに来たんだ。」

「わかりました。少々、お待ち下さい。」

私とベルがアリーシャちゃんを待っている間、ソウヤ達は廊下に出ている生徒たちに、先程のことを何か知らないか聞き回ってくれていた。


「お待たせしました。こちらです。」

アリーシャちゃんが荷物を持って来てくれた。後ろには知らない子が2人。そして、辺りを見回した後、私にそっと近づいてきた。

「先程のことで、ちょっとお話が……。」

「後ろの子達もかな?……じゃあ、場所移動しようか。」

アリーシャちゃんの後ろの子も頷くので、人目があるこの場から移動を提案する。ソウヤ達も、ひと通りの作業は終わったと言うことで、騎士科寮の食堂にアリーシャちゃん達を連れて来た。初めての騎士科の寮をキョロキョロとしている3人を、可愛らしいなと思いながら、テラス席に案内してバングルを発動させる。


ちなみに、騎士寮の食堂は、朝練する生徒も多いことから、朝7刻から19刻まで開いている。19刻以降に食事をとりたい場合は、前もって食堂のおばちゃんに伝えれば用意してくれるが、おばちゃん達も通いの主婦が大半なので、生徒も気を遣い外で買ってくるようになっている。でも、同級生や私の知り合いは私がいると、私に依頼をしてくる。その場合は、ちゃんと報酬を準備してくれる。報酬は、スパイスだったり野菜だったり、討伐した魔獣の肉や実家の特産品だったり、それは嬉しいのでwin-winの関係だった。



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