372.飴ちゃんとソウヤとエド
それからしばらく経ったが、飴ちゃんがこれと言って大きく行動しない。それが、嵐の前の静けさなのかわからないが、平穏な日が続いている。
私はと言うと、キャシーちゃんの授業がなく王城にいる時は、通常通りに騎士科の授業を受けている。ちなみに護衛中も、騎士寮で生活中。そして、護衛中の授業はクラスメイトに騎士寮で復習がてら教えてもらっている。
「「「「うん……うん……なるほど。わかりやすい!」」」」
と、言うのは授業を受けていない私とベルではなく、受けているはずのソウヤ、リキ、ダガーにブラッド。で、教えているのは私。なんで?
「はぁ〜、何で休んでるジョアンに教えて貰ってんだよ。」
「逆だろ?逆!」
と、呆れて見ているのはカリムとエド、ベル。
最初は、その2人に食堂で教えて貰っていたところ、冒険者ギルド帰りの4人がやって来て「何で、それが解けるんだ?」と言われ、解き方を教えたところ、4人がようやく理解したのが今。
「で、どうなんだ?アレは。」
と、ソウヤ。ダガーとブラッドは、夕食を食べて自室に戻ったので、誰もいない食堂のテラスにいる。ここには攻略対象者のソウヤとエド、事情を知るカリムとリキ、護衛をしている私とベル。念のため、バングルの盗聴防止と認識阻害を発動させている。
「あー、大人しいもんであれからキャシーちゃんには絡んで来ないよ。」
「「「「だろうな。」」」」
ベル以外が声を揃える。
「「えっ?」」
「こっちに来てるんだよ。アイツ。」
と、ソウヤ。
「こっちって、騎士科に?」
「ああ、誰かに聞いたんだろうな。俺たちが騎士科にいる事。」
「マジか。で、実害は?」
と、聞くとエドとソウヤはテーブルに突っ伏し、リキとカリムは苦笑している。
「ソウヤはさ、まだ【変化】と【隠密】使えるから、寮から出るのも大丈夫なんだけどな。」
と、リキ。
「エドは、ここ最近、寮と校舎だけだ。一度、実家からの馬車に乗ろうとしたら、わざとらしく馬車の目の前で倒れたらしく、顔が見えなかったから助けたらアイツだったらしい。」
と、カリム。
「「あぁ……。」」
「じゃあ、ソウヤだけはバレてない感じ?」
「いや、ソウヤはエドよりも先に会ってる。ソウヤのばあちゃんのスパイス屋に用があって、行ったらどうやら張っていたらしくて、俺とソウヤが入ってすぐに店に入って来た。」
「うっわ、こわっ!」
「まあ、その時はタイキさんが来て、連れ出してくれたから良かったものの、あのまま絡まれてたと考えると、寒気がする。」
と、リキが自分で身体を抱きしめていた。
「で、2人共何か言われたの?」
ノロノロと顔を上げたソウヤとエド。
「アイツ、俺のこと色々知ってて、さも当たり前のように話しかけて来たよ。
「おばあさんの腰が悪いから、お手伝いしているんですよね?偉いですぅ〜。尊敬しますぅ〜。もし良かったら、私が神殿に連れて行きますよぉ〜。」
って。は?って感じだよな。だって、ばあちゃんどこも悪くないんだぜ?ここ何年も風邪ひいてねぇし。腰が悪いなんてありえねぇよ。【身体強化】して、俺より重いもの持ってるぜ?」
と、ソウヤが言うのを聞いて、思い出した。
「もしかして……。」
「何?なんか知ってるの?」
と、ベル。
「ソウヤ、学院の入学前で私が初めてスパイス屋に行った時、おばあさん、腰を痛めたよね?」
「ん?あー、あったな。確か、転んで腰強打したところをジョアンと王妃様が治療してくれたこと。」
「そう。もしかしたらゲームの中では、治療してなくて腰が悪かったのかも知れない。」
「「「「「あっ。」」」」」
「だからか、ばあちゃんがなんともなく元気だって話したら、首傾げたの。」
「その後、なんか言ってた?」
「あーっと、確か「ここも違ってる」とか何とか呟いてたな。」
と、リキ。
「エドの時はどうだったの?」
「俺の時は、馬車の前で倒れたから駆け寄ったら、お礼言われて……
「そう言えば、エルファ国って食糧難なんですよね?大変ですよね〜。でも、パンがなかったらクッキーとか食べれば良いんですよぉ〜。あたしお菓子作るの得意なんでぇ〜良かったらレシピとか教えてあげましょうか〜?」
ってよ。食糧難だったのは間違いないけど、もうその危機は脱してるから必要ないって断った。何かブツブツ言ってたけど、そのまま立ち去ったよ。つうか、お菓子作るぐらいなら、どう考えてもパン作るだろ?」
「「確かに……。」」
飴ちゃんの前々前世あたり、もしかしてマリー・アントワネットの生まれ変わり?
パンもお菓子も材料ほぼ一緒だしな。そりゃ、パン作るよ。
「ん?あれ?」
「今度はどうした?」
と、リキ。
「エド……エルファ国の食糧難ってつい最近危機を脱したとか?」
「あ?そうだけど?小麦が不作で、代わりにソバー……。あーーー!!」
「「「「っ!!」」」」
「なんだよ、エド!驚くだろ。」
と、ソウヤ。
「……食糧難が解決したのは、ソバーの食べ方が他にあることがわかったからだ。しかも、ダイエットにも効果があるとアニア国からも購入依頼が来たから、財政も潤い小麦を輸入できるようになった。」
「それって、まさか……。」
ベルが恐る恐る聞く。
「あぁ、ジョアンがソバーの食べ方を教えてくれたから。」
と、エドが言うと皆んなは私を見る。
「あははは。偶然でしょ、偶然。」
「いや、偶然がこんなにも続くわけないだろ?」
と、カリム。
「そうそう、偶然が続けば、それはもう必然だって。」
と、リキ。
「……マッさんもかな?」
「「「「「えっ!?」」」」」
ベルの呟きに、私達は驚く。
「いや、だってここまで偶然が続いてたら、もしかしたらマッさんルートだっけ?それも、もしかしたらジョアンが関係あるのかな?って。」
「「「「「……。」」」」」
「まだ門限じゃないから、俺、連れてくる。」
「あっ、念のため俺も行くよ。」
と、リキとカリムがマッさんを呼びに行った。
「じゃあ、私、何か作ろうかな?何か、小腹空いてきちゃった。」
「私、手伝うよ。」
私とベルが立ち上がり、厨房へ向かう。




