369.緑の精霊
ようやくギガトレントと契約するみたい
「いや〜、何か無理を言ったみたいで悪かったね。」
そう悪びれた様子もなく、笑顔でいうのはアルバート殿下。その後ろには、苦笑しているキャシー兄で側近のルーカス様とアラン兄様とリュークさん。
そう思うなら、来なきゃ良いのに……。
「何だ?ジョアン、言いたいことがあるなら言ったら良い。」
と、アルバート殿下は言うが、言えるわけないでしょうよ。
「い、い、え、何、も。」
「クッククク、お前も昔から変わらないな。」
「え?変わりましたよ。見るからに大人の女でしょう?身長も165cmになったし、胸も大きくなりましたよ?見るからに、ボンッ、キュッ……痛っ。アラン兄様、痛い。」
久々にアラン兄様から手刀を食らった。
「確かにボン…‥うっ。」
リュークさんが、何か呟いたようだけど、振り向くと鳩尾の部分を押さえて苦痛に耐えてるようだった。
「クッククク。ジョアン、そういうところだ。外見が変わっても中身は昔から変わってない。保護者も大変だな、アランドルフ。」
「はっ。」
「アラン兄様が保護者ですか?」
「ジョアン様、ご存知ないですか?」
と、ルーカス様。
「えっ?何がですか?」
「ジョアン様にくる釣書は、ことごとく潰されている事に。」
「えっ?釣書?私に?」
「ええ、ここにいるアランドルフ、その弟のヴィンス殿、ジョアン様の兄上2人が、ジョアン様がご覧になる前に潰しているようですよ。」
「えーっ!!」
驚き振り向いてアラン兄様を見ると、アラン兄様はすっと目を逸らす。
「釣書も全く来ないので、モテないかと思ってました。意外とモテモテですね、私。」
「で?お前は結婚する気はあるのか?」
「そりゃあ、いずれは?でも、その頃には誰にも相手にされなさそうですよね〜。あははは。」
と、笑うと
「通常の貴族令嬢なら婚期が遅れないように焦るが、お前はお前だな。」
と、アルバート殿下。
「そうですね。誰もいなかったらパール達と楽しく暮らします。」
そんなどうでもいいような話をしているここは、ジェネラルの屋敷の中庭。
飴ちゃんの行動が一旦落ち着き小康状態なので、以前から予定していたギガトレントの契約を行う為。見学したいが為に、公務を前倒しで終わらせてやって来たアルバート殿下と中庭でお茶をしている。
「そろそろではないか?」
アルバート殿下の視線を辿ると、中庭の噴水の奥に見え隠れするギガトレントがこちらの様子を窺っている。
「あははは、こちらに呼んでいいですか?」
「ああ、もちろんだ。」
アルバート殿下に許しを得て、ギガトレントを呼ぶ。ギガトレントは、頭部?と手?の枝を揺らしながら私達の方へやって来る。
『デンカ ホンジツハ ゴキゲン ウルワシュウ ゴザイマスカ。』
「ああ、ギガトレントも変わりないか?」
『ハイ。オカゲサマ デ。』
本当に、どこでそんな言葉覚えて来るんだろう?
誰かが、教えた?
「では、ジョアン。頼むぞ。」
「……はい。じゃあ、ギガトレント、こちらへ来て。……最後に聞くけど、本当に良いの?」
『イイ。ジョアン 二 シンカ サセテ モラッテカラ ズット ネガッテ イタ。』
「そう。そこまで……ありがとう。じゃあ、あなたの名前は《ベルデ》。」
『ワレ ハ ベルデ。』
ギガトレント改めベルデが、名前を受け入れるとパーっとベルデが光出す。契約獣と契約の際にはいつも光るので、いつものことだと思っていたのに、今回はいつもより長くそして光が強い。眩しくて目を瞑り、しばらくすると光が止み目を開けると、そこには、今までいなかった青年が立っていた。
身長は190cmほどで腰まで長い濃緑色の髪の毛に、エメラルドのような瞳、中性的な顔立ちの青年だった。その男性は、前世のテレビで見たインドの男性用の民族衣装クルタのようなものを着ていて、裸足だった。
「えっと……どちら様?」
アルバート殿下とルーカス様、私が困惑しているが、パールとロッソは平然としている。アラン兄様とリュークさんは抜刀し臨戦態勢に入っている中、意を決してその青年に話しかける。
『ジョアン、我だ。ベルデだ。』
との答え。
「「「はーー!?」」」「「っ!!」」
『『やっぱりね。』』
どういうこと?
なんで?なんで木が人になっちゃうの?
「ジョアン、なぜギガトレントと契約すると、人になるのだ?」
「……わかりません。」
『ジョアン【サーチ】してみたら?』
「そうだな。ロッソの言う通りだ。【サーチ】なら理由がわかるかもしれない。」
「はい。じゃあ【サーチ オープン】」
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[ベルデ]
ドライアド。緑の精霊。
元ギガトレント。
契約者:ジョアン。
属性:地
緑
状態:健康。
補足:契約した為、進化。人間との会話可能。
ジョアンとだけ念話可能。
緑の精霊は植物、動物との会話可能。
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「「「「「……。」」」」」
私達は、目の前のサーチに固まった。
緑の精霊?木でも人間でもなく、精霊!?
なんでーー!?
「……緑の精霊とは、文献によると森の守り神であり、喜べば花が咲き乱れ、怒れば地が枯渇するという。あの精霊か?」
『ええ、そのようです。我も、契約した瞬間に知識が頭に流れ込んできましたので、未だよくわかっておりませんが……。』
アルバート殿下の問いに、ギガトレントの時とは違い流暢に答えるベルデ。
そこへ何も知らずに、仕事を終えて中庭へ来たお父様とグレイ。
「アルバート殿下、申し訳ございません。外せない仕事があり……ん?ジョアン、こちらの方は?」
と、ベルデに気付き私に聞く。
「えーっと、ベルデです。」
「ベルデ殿……。スタンリー・ランペイルと申します。貴殿はどちらの?」
『この姿では初めてご挨拶します。旦那様。契約獣となりました、ベルデと申します。元ギガトレントです。』
と、ベルデはお父様とグレイに挨拶をする。
「「はーーーーー!?」」
中庭に、お父様とグレイの声が響きわたった。
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