362.コスプレ
「あー、カリム。私、そろそろ自室に帰るわ。」
「ん?あ、悪い。考え事してた。でも、どうやって帰るつもりだ?その格好じゃあ無理だぞ?」
「ヅラ取って、変声機外してもダメ?」
「いや、そーなると。制服でショウがジョアンの変装だとバレる。」
「あー、そうか。じゃあ、一旦屋敷に帰るしかないか。」
私が帰ろうと立ち上がると、カリムが
「その前に、その変声機一度見せてくれないか?」
「いいよー。……どうぞ。」
チョーカーを外して見せると、カリムは自分の首に巻こうとするが私のサイズにしてあるので長さが足りなかった。
「やってみたかったんだけどな。」
「カリムが付けたら、女性の声になるのかな?」
「さあ?知らね。……ってか、自分でつけられないのか?」
「あっ、ごめん。上手いこと金具にはめれなくて。」
「ったく、ほら、後ろ向け。」
私がチョーカーを取り付けるのに、あたふたしているとカリムが手伝ってくれた。付けて貰いながら気になった事を聞いてみる。
「……ふと思ったんだけど、カリムがここに文官科の男を連れ込んだって事にならない?」
「は!?何言ってんだよ。」
「だって、普通他の科の友達来ると食堂で話すじゃない?でも、今回は自室で盗聴防止をかけている……。」
「っ!!」
「そ、その時は、ジョアンだって言えよ!」
「いや、変装バレるし。」
「ジョアンの変装より、俺が男色だって思われる方が困る!!」
「いやいや、よく考えてよ。私だってバレたら、女を連れ込んだって事になるから。ん?ってか、私も怒られる?」
「……間違いなくな。」
騎士寮の規則では、寮内で男女が個室に籠ることは違反。扉が少しでも開いていたらセーフ。違反した場合は、即実家に報告されて、謹慎1ヶ月。
「それは、ヤバい……。あー、もうしょうがない。カリム、今からのこと、内緒にしておいて。」
「何をだ?」
「転移する。」
「は?」
「じゃ【テレポート】」
私は、自室に転移して急いで私服に着替える。と言っても、ワンピースとかではなく、シャツにズボンスタイル。着替えが終わると、何食わぬ顔で下へ下りる。小腹が空いたので、食堂で何か作ろうかと、行くとリキ達が何やら騒いでいた。
「どうしたの?」
「あっ、ジョアン。聞いてくれよ、カリムが文官科のヤツと部屋に籠って出てこないんだけど。」
と、リキ。
「ぶ、文官科?」
「ああ、ショウってヤツ。」
「あっ、あー、ショウなら帰ったよ。」
「えっ?いつ?ってか、ジョアン知り合いか?」
と、ダガー。
「う、うん、母方の従兄弟。カリムから文が届いて、王都の屋敷に来てもらったんだ。」
「じゃあ、カリムは1人で部屋にいるだけか。」
「なんだよ。まあー、良かったよ。男色の噂でもたてられたら可哀想だから、心配してたんだ。」
と、ブラッド。
「えー、カリムにソレはないでしょう。1人で、読書しながら寝てるんじゃない?あっ、これからパンケーキでも作ろうかと思ったから、呼んで来たら?」
「マジで?俺、呼んでーー」
「呼んだか?」
リキが、呼びに行こうとすると、カリムが2階から下りてきた。
「おっ、ちょうど呼びに行こうと思ってたんだ。ジョアンがパンケーキ焼いてくれるってよ。」
「へぇ〜、じゃあ、俺は3段重ねだな。……さっきの事もあるし?」
と、挑戦的な目を向けてくるカリム。
「い、いいよ。ジョアンスペシャルを作ってあげる。絶対、残すなよ!」
「あー、いいぞ。」
それから、私はカリム以外には2枚ずつ焼き生クリームとプルーベリージャムを添えて、カリムには3段重ねで間にカスタードクリームとフルーツ、上には生クリーム増し増しのパンケーキを作った。……が、カリムは苦しい顔も見せずに、ペロッと食べた。
「クッソー!食い切ったかー。」
「あー、美味かった。また、頼むな。」
そう言いながら、私の頭をポンポンとすると食堂を出て行った。
「ジョアン知らなかったのか?アイツ、甘い物大好きだぞ。」
と、呆れ顔のリキ。
「でも、あの量を平気で食うカリム、すげぇな。」
と、ダガー。
「見てるだけで、気持ち悪い……。」
と、ブラッド。
「次は、負けない!」
「って、お前ら何の勝負してるんだよ。こんな時にソウヤかエドがいりゃあな〜。」
「あっ!!ヤバッ。出掛けるんだった。片付けお願いねー。」
王城に行くことを思い出して、慌てて自室に戻る。その背中を見て、リキ達は苦笑する。
「ジョアンも、相変わらずだよな。黙ってりゃあちゃんと貴族令嬢なのにな。」
「まーな。でも、大人しいジョアンとかジョアンじゃねーよな。」
「それは、言えてる。」
*****
「遅くなりました。申し訳ありません。」
会議室に案内され入ると、すぐに頭を下げて謝る。
「ジョアン、大丈夫だ。まだ時間前だし、陛下から遅れると伝言があった。……というか、制服で来たのか?」
アルバート殿下の声で頭を上げると、会議室には殿下2人とルーカス様、アラン兄様そしてキャシーちゃんとエレーナ先輩しかいなかった。
「はい、急いでましたし、制服が無難かな?と。」
「キャシー。」
「かしこまりました。ジョアン、着替えましょう?」
「へっ?いや、大丈夫ーー」
「ではないわ。アルバート様、少々お時間頂きます。」
「あー、構わない。」
「えっ、キャシーちゃん?えっ?あーーっ。」バタン。
ーーーしばらくして。
「お待たせ致しました。ほら、ジョアン。」
「うぅ……。」
キャシーちゃん付きの侍女、ビビさんを筆頭に湯浴みさせられ揉みに揉まれ、なぜ知っているのかわからないけど、ストレージからフーちゃんの香水、ジョアンSP改を出させられシュッシュッと振りかけられ、いつの間に用意したのか私のサイズにピッタリな首元がVラインでシルエットはAラインの水色のドレスと靴を着せられ……今に至る。
まさか、本日2回目のコスプレするなんて……。
「ほぉ〜、着飾ればちゃんとご令嬢のようじゃないか。」
と、アルバート殿下。
「……着飾らなくても令嬢です。」
「クッククク、いつもの勢いがなくなるんだな。」
と、フレッド殿下。
「でも、綺麗だよ。ジョアンちゃんのドレス姿は、俺の卒業式以来だけどあの時よりも綺麗になったね。」
と、ウインクをしながらノア先輩がいう。
「はあ……ありがとうございます?」
「クッククク、何で疑問形なの?君たちもそう思うよね?」
「「「は、はい。」」」
ノア先輩に聞かれた、ソウヤ、エド、マッさんはなぜか顔を赤くしていた。
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