361.お花畑
「地味デブメガネ……私が?」
呟いた私を皆んなが見る。そして、全員首を横に振る。
やっぱり、あの男爵令嬢はここが乙女ゲームだと思っている。しかも、乙女ゲームと違うことはバグっていて、後々補正が効くと思ってる?
「「っ!!」」
バースとテトが、同時に窓の外を見る。
「どうしたの?」
「……窓の外に、あの令嬢がいます。」
と、テト。
その言葉に、どれどれとララノア先生が窓に近づく。私もヅラを被り直してカーテンに隠れながら、そっと窓の外を見てみる。2階にある先生の部屋の窓の近くには、大きな木があり、その木の下でピンクのツインテールが上を見ながら何か話している。
「……あれ?やっぱりいないな〜。どこにいるんだろ?フレッド様。」
「「「「っ!!」」」」
呟くバースの言葉に私達は驚き、バースを見る。
「えっ、あっ、あの、そう言ってます。あの人。」
私達に見られて慌てて窓の方を指差してバースが言う。獣人族は、人族よりも耳が良いらしく、この距離なら窓ガラスがあっても聞こえるらしい。
王妃様の話では、ヒロインと第二王子の出逢いの場所は大きな木の所だった。と言うことは、飴ちゃんはフレッド殿下狙い?
「ジョアン【サーチ】!」
「あっ、そうだった。【サーチ オープン】」
ザックに言われて、急いで飴ちゃんをサーチする。
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[キャンディ・ブラン]
ガルサイ出身。元平民、現ブラン男爵令嬢。14才。
【火】属性。
前世の記憶持ち。
状態:健康。頭の中お花畑。
スキル:魅了。
補足:この世界を乙女ゲームと思い込み中。
フレッド狙いだが、あわよくば逆ハーレムを希望。
スキルの発動は、相手の目を10秒見る。
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「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」
おう。相変わらず、お茶目な私のサーチ。
何でも教えてくれるんだ。でも、頭の中お花畑って……。しかも、あわよくば逆ハー希望なんだ。
「えーっと……一応私の任務は完了かな?」
「え、ええ、そうね。」
キャシーちゃんもサーチの結果に動揺している。
「じゃあ、一度、騎士寮に戻ってから王城とジュリー叔母様に報告しに行くわ。あっ、バースにテト、もしまた絡まれる事があったら報告を。」
「「わかりました。」」
「じゃあ先生、お邪魔しました。……あっ、コレ。良かったら食べて下さい。」
と、ストレージからクッキーミックスを出して渡す。
「きゃーーっ。久しぶりのジョアンさんのクッキー。良いの?良いの?もう、返さないわよ。」
「あははは、大丈夫ですよ。一応、今見たことは内緒で。」
「ええ、ええ。もちろんよ。」
ララノア先生は、クッキーの入った瓶に頬擦りしながら、笑顔で了承してくれた。
ララノア先生は、一般科の頃、ジョアンに貰ったクッキーにハマり、毎週のようにクッキーを強請っていた。ちなみに王都で普通に売っているクッキーよりも、甘さ控えめで更に色々な種類があるジョアンのクッキーは、先生たちに好評で差し入れをすると争奪戦が行われるぐらい人気な事をジョアンは知らない。
*****
一旦、騎士寮に戻ると玄関ホールでリキ達に会った。
「ん?一般科?文官科?」
と、リキ。
「ここ騎士科の寮だけど、誰かに用?」
と、カリム。
ヤバッ、変装したまま帰って来ちゃった。
んー、どうしよ。あまり、変装のことバレたくないんだよな〜。
私がどうしたものかと考えていると、他にも生徒達が何だ何だと玄関ホールに集まって来た。
「えっと、ベルいる?」
そう言うと、なぜか周りから威圧が出始める。
「あ?お前、ベルとどう言う関係?」
なぜか喧嘩腰のダガーに詰め寄られる。
「えっと、友達。」
「友達だあ?名前は?」
ブラッドにも詰められ、後ろに下がりつつ答える。
「ジョ……ショウだけど……。」
「ん?……あーーーっ!」
「うわっ!何だよ。カリム、いきなり大声出すなよ。」
カリムの声に、隣にいたリキは驚き文句を言う。
「あっ、いや、ごめん。えっと……ショウだっけ?」
「あ、ああ。」
もしかして、バレた?ここでは、明かして欲しくない。
お願い、カリムーー。
願いが通じたのか、目は口ほどに物を言うのか
「あー、ごめん。俺、コイツ知ってるわ。」
と、カリムは周りに聞こえるように言ってくれた。
「んだよ、先に言えよ。……悪いな、最近騎士科の女子達に会いたいって人が良くくるからさ。」
と、リキ。
「えっ?なんで?」
「お前、知らないのか?『騎士科の4姉妹』って本が、流行ってること。」
「あ、ああ、アレか。」
「そう言えばアレが、今度書籍化するらしいぞ。この前、街を歩いてたら本屋の所に広告出てたからな。」
と、ブラッド。
「はーーっ!?マジか……。」
「あーそういや、ベルは今日出掛けてるぞ。」
「あ、そう言えばそんな事言ってた……。あ、ありがとう。」
「いや、俺たちも疑ってごめんな。じゃあな。」
と、カリム以外が玄関ホールから去って行った。
「「………。」」
カリムが私をジッと見て何も言わない、私もカリムの出方を待って何も言えない。
「フッ……ともかく、ここじゃ目立つから俺の部屋来る?同部屋のエドいないし。」
「あっ、エドなんだ。悪いけど、頼む。」
カリムとエドの部屋は、東棟の2階の角部屋だった。中に入れてもらうと、すぐに盗聴防止を発動させる。
「本当ごめん。助かった。変装したまま帰って来ちゃって、でも、バレたくないし。」
「何でバレたくないわけ?あそこで、明かしたらあんなに注目浴びることなかっただろ?あー、適当に座ってって言ってもベッドぐらいしかないか。」
カリムに言われて、ベッドに腰掛ける。
「ありがとう。明かしたくなかったのは、今後の活動に影響するから?」
「は?何、今後の活動って。」
「ほら、お忍びとか諜報とか?」
「あー、なるほどな。……で、今回はどっちなわけ?」
「……お忍び。」
「ふ〜ん、まあ、良いや。でも、変装するにも、目の色でわかる人はわかるぞ。俺も目でわかったし。」
「そっか……。カラコンか変色出来るメガネがあればなぁ。」
「何それ?」
私は、カラコンつまりカラーコンタクトレンズについて説明すると、ガラス製品を特産しているスミス領令息としては何か思うことがあるらしく、考え始めてしまった。
あー、ヤバい。帰るタイミングがなくなってるわ。
どうしようかなぁ?屋敷に帰れば良かったな。
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