36.怒らせちゃいけない人
朝食を取るためにダイニングへ。
朝食の手伝い、途中で投げ出しちゃって大丈夫だったかな?
朝食が運ばれてくる。
「うぉー何これ、美味すぎるー!!」
ジーン兄様は、フレンチトーストを気に入ったようだ。
「いつものスープが味気なく感じるな」
お父様はスープを。
「サラダも彩りキレイだし、美味しいわぁ」
お母様はサラダを。
「オムレツにチーズが入ってる。美味しい!あぁージョーを寮に連れて行きたい」
ノエル兄様、それは無理な話です。
朝食は、みんなの口にあったようで良かった。
後で、作ってくれた厨房のみんなに感謝しないとねぇ〜。
*****
「ノエル兄様、ジーン兄様、お約束のクッキーとドライフルーツです。あとネイサンも」
ストレージから、頼まれていたものを渡す。
グレイとナンシーの長男ネイサンも、ノエル兄様と同じ年なので一緒に王都に行く。
「ありがとう、あぁージョーと離れたくない。一緒に行こうよ、ダメ?」
そう言いながら、ノエル兄様はハグをしてくれる。
甘ー-い、甘過ぎる!!
砂糖、吐きそうよ。
ハグは良いのだけど、時折り頭にキスするのはアウトでしょう?それは彼女さんにするべきよ。
「ジョー、大事に食べるからな。また帰ってきたら、美味しいもの食べさせてくれよ」
ジーン兄様、ノエル兄様を目を細めて見るなら助けておくれよ〜。
「はい、色々練習しておきますね」
「ジョーありがとう。俺の分まで」
「ネイサンも頑張ってね」
ネイサンはジョアンの頭をポンポンする。
「ノエル、良い加減にしなさい。遅れるわよ」
お母様に言われ、渋々私を離すノエル兄様。
「「「行ってきます」」」
そう言うと、扉を開けて入っていく。
その扉は、王都にある屋敷に繋がる扉だった。
通常、王都までは馬車で3日はかかるのだが、そこは元魔術師団の副師団長のお母様が、馬車は面倒だからの一言で作った逸品だった。
まるで、未来から来た青いロボットのピンクのドアみたいだなぁ〜と感じた。ちなみに、ウチの扉はピンクではない。ボルドーだった。
その扉があるおかげで毎週末、兄達は屋敷に帰ってくる。
学院に通えなくはないのだが、『学院だけでは学べないことを、寮生活で学ぶ』と言う規則のため、仕事についていない生徒は寮生活だった。
お父様もお母様も、執務室で仕事があるという事なので、私は食堂に向かった。
ナンシーと約束したからだ。
タッ、タッ、タッ……。
バンッ。
「おっはよーございまーす」
「お嬢様、扉を開ける時は静かにしましょうね」
ナンシーが笑顔で言う。ただ目は一切笑ってはいない。
「は、はい。ごめんなさい」
「あはは。おはよう、ジョー。どうしたの?」
「あっ、おはよう、ザック。昨日作ったクッキーとドライフルーツ持ってきたの。みんなにも、あげたくて」
ストレージからクッキーとドライフルーツを出す。
「やったー。食べたかったんだ。お父さんは食べたのに僕らにはなかったからさぁ」
「ザーック、まずはお嬢様にお礼を言いなさい」
「あっ、ごめんなさい。ありがとう、ジョアン」
「うふふっ、どういたしまして。みんなも食べてね」
他の使用人たちも、口々にお礼を言ってくれる。
それだけでも、作った甲斐があった。
あっ、メイド達はドライフルーツを我先に確保している。きっと、食べた効果を知っているのねぇ。
ナンシーまで、ブレープとナババを中心に食べてる。
後で、こっそりドライフルーツミックスで追加を渡しておきましょうかね。
ナンシーこそ、怒らせちゃいけない人で、賄賂が必要だもの。
あっ、柔らかいパンのこと話しに行かないと。
天然酵母は面倒だけど、美味しいご飯のためだ。




