351.八つ当たり
八つ当たりはほどほどに(笑)
20階は、最初のセーフティエリアと転移陣がある。手前に転移陣があり、ランクEなら、ここの転移陣で上に戻るだろう。何組かのパーティが転移陣を使う為に、順番を待っている。
「じゃあ、ここでランチにしよう。」
奥のセーフティエリアは、どういう仕組みかわかないけどちゃんと灯りの魔道具があり、屋敷ほどではないが相手の顔がちゃんとわかるぐらいに明るい。地面もちゃんと整備されている。ここにも何組かのパーティやソロの冒険者が休憩を取っていた。私達は、邪魔にならないように周りに人がいない所で、ストレージから敷物を出し、座るとバングルの盗聴防止を稼働させる。
「何、食べたい?」
『カツ丼が良いわ。』
『僕はね、ナポリタン。』
『俺は、唐揚げが良いっす。』
「はーい、どうぞ。」
ランチを食べ終え、皆んなで今後の予定を考える。
「今日は、40階のセーフティエリアで1泊かな?」
『そうね〜。頑張れば、もっと行けそうだけど……。』
と、パール。
『えー、初ダンジョンだしゆっくりで良いんじゃない?』
と、ロッソ。
「そうだね、初ダンジョンだし。ゆっくりペースで。」
『姐さん、誰か来まっせ。』
「ん?」
メテオに言われて顔を上げると、確かに男性が2人こちらに来る。
「こんにちは〜。」
人懐っこい笑顔で、挨拶して来た男性というより……男の子だった。
「えっ?あ、こんにちは。」
「……ソロ?」
もう1人は、逆によく言えばクール、正直に言えば無表情な男性。
「あー、契約獣と一緒だから、一応パーティ?」
「あはは、君、面白いね。ねーねー、この後さぁ、一緒に潜らない?」
は?面白いって何?事実ですけど?
「えーっと、あまりよく知らない人とはちょっと……。」
遠回しに一緒に行きたくないと言う。
「あー、そっか。だよね〜。ごめん、ごめん。僕は、ラムダ。14才で、アニア国から来たんだ。で、こっちがイデア、19才で僕の従者。ね?これで知らない人じゃないでしょ?」
と首を傾げる。
うわっ、あざといし強引だわ。前世から、この手の子は苦手なんだよね〜。
アニア国から来たって、あっ、よく見たらラムダのフワフワの髪の毛の間から、チラッと人間とは違う耳が見えるわ。
「はあ、そうですね……。」
「……嫌なら、無理することはない。」
イデアが私の気持ちを察してか、フォローしてくれる。
あー、良い人だ。
イデアさんは、とんがった耳だから狼系かな?
「ちょっと、イデア何言ってんの?嫌なわけないじゃん。もう友達になったんだし、それに可愛い子がソロなら僕達が守らないとでしょー。ねぇ〜?」
と、断るわけないと勝手に決めて話すラムダ。
ーージョアン、はっきり言ってやりなさい。
ーーそうだよ〜。僕は、やだよー。
パールとロッソが念話で話しかけてきた。
「えーっと、ごめんなさい。私達だけで行きます。今日が、初ダンジョンなので、自分の実力を試したいんです。あっ、それと名前伺ったのに言ってませんでしたね。ジョアンと言います。ジェネラル出身です。」
「えーっ、ショックなんだけどー。僕の誘い断るなんて。ねぇ〜ジョアン、一緒行こうよ。イデアと行くより、ジョアンと一緒に行きたいよ〜。」
「すみません。次回どこかで会ったら、また考えます。じゃあ、お先に失礼します。」
「えっ、あっーー」
ラムダが何か言ってるけど、それを無視して走り出した。
途中で、パールに騎乗して一気に26階まで来た。21階からは25階はゴブリンやコボルトがいたようだったが、構わず走り抜けた。
「ありがとう、パール。はい、水。」
『良いのよ、食後の良い運動になったわ。』
一息ついたところに頭上を旋回していたメテオが
『ホブゴブリンっすよ。3ホブっす。』
と、教えてくれる。私は、スッと立ち上がりホブゴブリンに向かい走り出す。
「チッ、邪魔なんだよっ!!」
と、叫びながら一体を袈裟斬り。
「ゴギャー!」
「こっちは、イライラしてんのっ!!」
そのまま、次の一体の腹に剣の刃を上に突き刺し、逆袈裟斬り。
「ガギャーッ!」
「他国に来てナンパしてんじゃねーよっ!!」
距離を取っていた最後のホブゴブリンの所に、一気に距離をつめる。ホブゴブリンは棍棒を振り上げて攻撃をしてくるが、それをかわして背後を取り、軽くジャンプをして首元に左一文字切り。
「ギャ?」
切れ味が良く、自分の首を切られたことに気がついていないホブゴブリンが首を傾げると、そのまま頭部が地面を転がる。
「ふぅ〜。」
と、呼吸を整えながら剣を振り、ついたホブゴブリンの血を飛ばす。
「さすがイジョクさんの剣だわ。切れ味抜群だし、全然刃こぼれしない。」
『それにしても、ホブゴブリンは完全にとばっちりよね。』
『あれは、八つ当たりだよ。』
「う……。だって……イライラして。」
『姐さん、よっぽど嫌だったんすね。』
八つ当たりしたホブゴブリンには申し訳ないけど、いくらか私のイライラは収まり次へと進んだ。
その後、ウォーリアーゴブリンやらオーク、オークキングを討伐しつつ39階に到着。
「へい!中ボス、カモーン!!」
「ブモーーッ!!」
「あっ、豚肉だ!」
『ビッグボアよ。』
パールから冷静にツッコまれる。
《ビッグボア》
イノシシの魔物。
クマのような巨体で頭部に角があり、攻撃の際には魔力が集まって赤く発光する。赤くなった角を切り落とすとそのままの状態で残り、貴重な素材として高値で取引される。
『でも、倒せるの?』
ロッソが心配そうに聞いてくる。
「何で?倒せるよ?」
『だって、ビッグボアjr.と仲良いでしょ?』
「あー、あの子は別よ。あっちは友達、こっちは豚肉。」
『『『あー、食材扱い。』』』
「倒したら、今日はションガー焼きだよ。」
契約獣達の目が鋭く光る。
『『『殺る』』』
「お、おう。頑張れ?」
『行くわよ!』
『『おーっ!!』』
言うや否や、メテオはビッグボアの目を攻撃して視覚を奪い、パールは足元を凍らせて足止めをする。そこにロッソの【風刃】で赤くなっている角を落とし……豚肉もといビッグボアは、ものの10分足らずで肉の塊となった。
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