350.初ダンジョン
ソウヤ達は、我が家に10日程滞在して帰宅した。帰りは馬車ではなくて、転移扉で。ベルは、私とパールが送り届けた。
皆んなが帰ってしまって暇になった私は、朝から冒険者ギルドにいる。
「ん〜、どうしようかな?」
『何を悩んでるの?』
肩の上のロッソが聞いてくる。
「夏休みだし、泊まりがけの依頼を受けたいなぁ〜と思ったんだけど……。」
『それって、ママさん許可したの?』
「もちろん!じゃなきゃ、探さないよー。でも、1泊までって言われたから、馬車の護衛はダメでしょ〜。あとは、討伐かな?」
『そうねぇ〜。受付で聞いてみたら?』
パールの提案に受付に向かう。ちょうど、リリーさんが空いたところだった。
「あら、ジョアンちゃん。」
「こんにちは、リリーさん。相談なんですけど、1泊ぐらいの依頼で、おススメあります?」
「1泊ねぇ〜。あっ、これはどうかしら?」
リリーさんにお薦めされたのは、イーストウッズの奥に最近できたダンジョンの攻略。
「あっ、この前できた所?イェーーイ!初ダンジョンだ。」
「うふふふ。じゃあ、ダンジョンについて説明するわね。」
春の季にできたばかりのダンジョンは、地下80階。
セーフティエリアと転移陣は、20階毎にあるそうだ。最下階に行くには、ランクA相当の実力が必要らしい。
今までランペイル領には、ダンジョンは久しく現れていなかった。前にあったのは、私が産まれるだいぶ前だったらしい。今では、各地から冒険者が集まりダンジョンに潜っている。そのお陰で、ジェネラルはいつになく大賑わいだった。
「まだ、先の話かも知れないけど、ジョアンちゃんのランクAの昇格試験もダンジョン攻略になると思うわ。」
ダンジョンが出来たことで、ランクC以上の昇格試験は、ダンジョン攻略となったらしい。ランクBには60階攻略、ランクAには80階攻略が条件となったと。もちろん、監視役として先輩冒険者が一緒について回り、万が一の時は先輩冒険者が助けに入ってくれるそうだ。
私は、一旦屋敷へ戻り、お母様たちにダンジョンに行くことを報告し、準備をして、イーストウッズへ向かった。パールに騎乗して、およそ20分。ダンジョンの入り口付近には木製の柵と門が出来ていて、門の横には小屋があった。小屋の前では、鎧姿の人とギルド職員が冒険者カードを確認、その間に冒険者が台帳に必要事項を記入していくらしい。この2人は面識がないので、もしかしたらダンジョンが出来た際に、王都から派遣されて来たのかも知れない。
「はい、カードの確認をします。えーっと、今日はソロですか?」
「はい。あっ、契約獣と一緒です。」
「……テイマーのランクB。まあ、大丈夫でしょう。帰還予定は……明日ですね。お気をつけて。」
「ありがとうございます。」
鎧姿の人が、いってらっしゃいと門を開けてくれて中へと進む。
「うわ〜、真っ暗だねぇ〜。」
『そりゃそうでしょう?ダンジョンだもの。』
「あははは、確かに。ロッソお願い。」
『はいはーい。【ライト】』
徐々に広くなっていく洞窟は、しだいに縦も横も広がり、大型トラックが横に並べるほどの広さになった。どんどん進むも、何も出て来ない。
「この階は、何もいないのかな?」
『姐さん、何言ってんすか。スライムやら、大ムカデやらいっぱいいるっすよ。』
と、メテオ。
「えっ?そうなの?」
『パールがいるから、皆んな隠れちゃってるんだよ。』
と、ロッソが言う。
「あー、そう言うこと。」
そのまま5階までは、ただ単に散歩をしている状態。6から10階は、ホーンラビットなどの小動物系の魔獣が出てきた。11から18階は、ティッグピッグのような中型魔獣。
そして、19階はこのダンジョンの小ボス的な魔獣がいると聞いた。
「さあ、小ボス、カモーーン!」
「シャーーーッ!!」
「返事した!?って、キラーマンティス!?」
《キラーマンティス》
体長およそ2mの巨大なカマキリの魔獣。
前肢には鋭いカマがあり、先端は針のように鋭く硬い。
好戦的な性格の反面、警戒心が非常に強く、身の危険を感じるとカマを大きく振り上げ威嚇の姿勢で警告をしてくる。
「キシャー!」
キラーマンティスは腕を大きくあげて、交互に切りつけてくる。それを左右に体をかわし、キラーマンティスの片腕が振り切れた瞬間に剣を振った。しかし、もう一方の片腕のカマで防がれた。
キンッ「クッ、硬っ!!」
一度、体勢を整える為に、後方にジャンプをする。
虫だから、燃やせば楽だけど、討伐部位はカマだしなぁー。
んー、じゃあここは……。
「パール、カマだけ凍らせて。」
『はーい。どうぞ。』
パールは、いとも簡単にキラーマンティスのカマを凍らせていく。
「シャッ!?」
両腕が凍りつき重くなった事で、キラーマンティスは腕を地面に下ろした状態で動けず、困惑している。
「では……お疲れ様でしたっと。」
キラーマンティスの背後に周り、背中を踏み台にして跳躍。首元を狙い一気に剣を振り抜いた。
キラーマンティスのカマと魔石をストレージに収納する。後処理を終えて、私は後ろを振り向き契約獣達を見て苦笑いした。
パールの横には、ポイズンタランチュラが3体積み上がっていた。
《ポイズンタランチュラ》
黒い体にオレンジ色の毛がふさふさと生えている大蜘蛛。
体長は脚をたたんで2m、伸ばすと8mくらいになる。
毒液を吐く。
ハチミツを舐めているロッソの周りには、ジャイアントビーの死骸が。一際大きいのは、ジャイアントクイーンービー。
《ジャイアントビー、ジャイアントクイーンビー》
大型の蜂の魔獣。
巣を作り集団で暮らしている。お尻の針には毒があり、翅で飛ぶので風魔法を使ってくる。ジャイアントクイーンビーにはフワフワの毛が生え、他の個体よりも大きく強い。
取れる蜂蜜は高級品。
メテオが啄んでいるのは、ケイブモウル。
《ケイブモウル》
洞窟やダンジョンに住む、もぐらの魔獣。
前足の爪は長く、それで獲物を切り裂くことが可能。
……私のキラーマンティスが霞むわ。
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