347.初見ですけど?
ーーー翌日。
「宜しくお願いします!」
「「「「「「「お願いします!」」」」」」」
私兵団の鍛練に、私達は参加した。ちなみに、今日の指導役はナットさんとマーティンさん、ガンさん。既にこの2人はjr.を卒業して、今は新しいjr.の指導役になっている。新しいjr.の中には、ルーとデニス君他3名。
「全員、騎士科なんだよな?じゃあ、まずはウォーミングアップとして演習場を20周。終わった者から腕立て伏せ200回、足上げ腹筋150回を5セット、素振り左右150。」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
ウォーミングアップのランニングをしていると、私の横にルーがやって来た。
「ジョアン……様。本当に、一緒に鍛練するのか?」
「ルーから、様付けされた……。」
「いや、だってしょうがないだろ?子供の時は許されたが、今はランペイル私兵団の団員なんだから。」
「まあ、確かに。……で、やるよ。毎年やってるから。」
「マジか?」
「マジだ。ところで、私兵団の生活はどう?昔は冒険者になって、生活するって言ってたけど。」
「ここの生活は、大変なこともあるけど、充実してるよ。孤児院出でも、受け入れてくれるし。勧めてくれたジョアンに感謝だよ。」
「そっか、じゃあ良かった。……他のjr.との関係は?」
「……。」
私の質問に、無言になるルー。
「どうしたの?」
「あー、その、俺とデニス以外は貴族の令息なの知ってるか?」
「あー、チラッと聞いた。それが?あっ、もしかしてルーとデニス君に対して当たりが強い?」
「まぁ……。ジョアン達は、学院で一緒だったんだろ?」
そう言われて、だいぶ後ろを走っている新しいjr.を見てみる。あちらは私が見ている事に気付くと、ヘラヘラした笑みを見せてきた。
「……んー、知らない人達だわ。」
「そうなのか?あっちはジョアンのこと、親しいって言ってたぞ?あっ、3人のうち2人な。1人は、俺達にも普通に接してくれる。」
「は?何それ?親しさで言ったら、あっちは見たこともない人で、ルーとデニス君は幼馴染だけど。」
「……そっか。」
「あっ、もしかして私の知人だと思って色々と我慢してた?」
「……。」
「ごめん、もっと早くにルーと話せば良かった。」
「いや、いいんだ。俺もデニスも真に受けてたんだから。」
ウォーミングアップが終わり、一旦休憩になる。
「どう?」
ベルやソウヤ達に聞くと、満面の笑みで
「「「「「「楽しい!」」」」」」
「あははは、良かった。……ところで、あそこで座りこんている2人のこと、知ってる?」
「ん?……あー、知ってるって言うか、騎士寮では有名だったぞ?」
「えっ?本当?私知らないや。ベルは?」
「あー、話だけは聞いたことあるけど、詳しくは知らないわ。」
「どうかしたのか?」
エドに聞かれて、ルーから聞いた話をする。
「あー、なるほどな。あの2人は、ずっとB組でしかも下の方らしいぞ。でも、どちらも子爵家令息であることを鼻にかけて、平民を下僕のように従えてたんだ。それは、寮でも同じで食事の配膳とかを当たり前のようにさせてたな。」
と、エド。
「えっ?でも、私見たことないよ?」
「そりゃそうだよ。あの人ら、A組の伯爵家以上の令息がいる時は、大人しいか食堂に来ないからな。それにヴィンス先輩と同じ学年だし、ジョアンはヴィンス先輩と良く一緒にいたろ?だから、会わなかったんだよ。」
と、ソウヤ。
「あっ、そういうこと。でも私、いつの間にか親しい間柄らしいんだけど?いつから?」
「ぶっ!俺も知らなかった。親しいのか?」
と、リキ。
「いや、今日が初見なんですけど?しかも、幼馴染のルーとデニス君がそれで虐められてるのは許せないな。2人は、私を貴族令嬢じゃなくて、一個人として接してくれたんだよ。」
「ジョアン様、鍛練再開しますけど?ん?どうしました?難しい顔して。」
私達を呼びにナットさんがやって来た。
「ちょうど良いところに、ナットさん。ちよっと聞きたいんですけど、新しいjr.のルーとデニス君以外って、何でここに来たの?」
「あー、俺も詳しく知らないっすけど……男爵家の子は以前ジェネラルに来た時に、治安の良さや領民の人柄の良さで、ここに住みたいと思ったらしいですよ。子爵家の2人は、確か嫡男でもなくてどこにも行く当てがなくて、ちょうど募集をかけていたウチに来たらしいっす。あれ?でも、ジョアン様と親しいって聞いたっすけど?」
「あー、それ誤情報だから。今日が初見だし。」
「は?マジっすか?アイツら……。」
ナットさんから威圧が漏れ出す。
「あー、ナットさん。この事は、あの2人には言わないで。」
「何でですか?一言ガツンと言っておいた方が良いっすよ。」
「大丈夫、大丈夫。明日、ガツンとやられるから。」
「明日?あっ……もしかして、恒例の?」
「そう。だから、今日ぐらいは好きなように、ね。」
「ジョアン様が言うなら、わかりました。」
その後、指導役のナットさん、マーティンさん、ガンさんとの打ち合いや、筋力トレーニング、利き手を縛った状態での戦い方の訓練などをきっちり3刻間ほど行い、本日の鍛錬は終了した。
「「「「「「「「ありがとうございました。」」」」」」」」
「お疲れ様。いや、さすがジョアン様のご友人ですね。普通、初日の鍛練が終わると、最後の挨拶なんて言葉にならないのに。」
と、ガンさん。
「そうそう。動けなかったり、吐いたりするもんな。凄いよ、お前ら。ジョアン様もベル様も、相変わらずストイックだし。」
と、マーティンさん。
「……ガンさんもマーティンさんも、もう、ちゃん付けでは呼んでくれないの?」
「「えっ!?あっ、いや、さすがに……。」」
慌てる2人が面白い。
「クッククク、冗談ですよ。もう、正式な団員ですもんね。」
「あー、すみません。前みたいに、ちゃん付けで呼んだら……ノエルに殺されます。」
「俺も、ジーンに。」
「は?何それ?え?なんで兄様達?」
マーティンさんとガンさんの理由に、今度は私が慌てる。
「うふふ、相変わらずノエル様とジーン様に愛されてるわね。」
「「「「「「あっははは。」」」」」」
ベルとソウヤ達からも笑われる。
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