344.捨てる勇気
屋敷へ着くと、皆んなと顔見知りのザックが久々の再会を喜び、そのまま客室へ案内する。私とベルは、一足先に応接室へ向かう。応接室には、既にお父様とお祖父様、お祖母様が待っており、お茶をしていた。
「ただいま戻りました。今、ザックが客室へ案内してます。」
「おかえりなさい、ジョアン、ベルちゃん。」
お祖母様に座るように促されて、ソファーへ座る。
しばらくして、身支度を終えた皆んながザックに案内され応接室にやって来た。応接室に入ると、お父様達の存在に気付き表情を固くするソウヤ達。
「ようこそ、ランペイル領へ。さあ、お座りになって。」
お祖母様が、私達の近くに座るように促す。ザックは、グレイと共に扉付近に立つ。
「「「「「「はい!失礼します!!」」」」」」
「長旅、疲れただろう?私は、ジョアンの父、ランペイル辺境伯だ。こちらは、私の両親だ。ジョアン。」
「はい。こちらからーー」
お父様達に、ソウヤ達を紹介する。
「まあ、そう緊張せんでも良い。ジョアンがいつもお世話になっているようだ。ありがとう。」
ガチガチのソウヤ達にお祖父様が声を掛けるが、逆効果だったようだ。更にピンと背筋が伸びてしまった。
「君たちは、我が家の私兵団との鍛練を希望していると聞いたが、間違いないかね?」
「はい。こちらの私兵団が、国内でもトップクラスの実力だと聞いております。ぜひ、鍛練をご一緒させて頂きたく、ジェネラルまで参りました。」
お父様と面識のあるカリムが皆んなの総意を伝える。
「では、私から質問を良いかしら?ジョアンからの話では、あなた達は、騎士科の同級生でもトップ10の中に入るのでしょう?それでも、ランペイル私兵団との鍛練を希望するのはどうしてかしら?そのまま、学院での授業や鍛練でも、今後支障はないのではないの?」
そうお祖母様に言われて、ソウヤ達は顔を見合わせる。通常であれば、ちゃんと自分の気持ちを話すのに、やはりお父様達の前だからなのか、どう話したら良いのか困っているようだった。
「わっははは。このままでは緊張が解けぬようだ。」
「ええ、そうですね。君たち、いつも通りで構わないよ。ウチが貴族だからとか、気にせずにね。」
「ちょっとスタンリー、そんな事言っても無理よ。あなた達がいつもの口調でも、不敬には問わないから安心して。だから、ちゃんと自分の考えを話して欲しいわ。」
そう言われても、なかなか話さないソウヤ達に
「なんで、そんなに緊張してるの?騎士寮では、フレッド殿下もいるし、そこまで緊張してないじゃない?」
「いや……フレッド先輩は、その……騎士科の先輩って感じだから……。」
と、ソウヤが言う。
「じゃあ、同じじゃない。お父様もお祖父様もお祖母様も騎士科卒業だもん。先輩でしょ?」
「「「「「「あっ……。」」」」」」
「えっと……じゃあ、その……畏まった言葉遣いは出来ませんが、それでも良いですか?」
「ああ、構わないよ。」
「えっと……俺達は、学院の授業や鍛練だけでは、今以上の力がつかないと思ったんです。実際に、ジョアン……嬢やベル嬢とは、打ち合いで負けることの方が多いですし。なあ?」
とソウヤ。
「えっ?あっ、はい。俺らなんて、全然彼女達の足元にも及ばなくて、なあ?」
ソウヤにいきなり振られたリキも何とか話す。
「そ、そうっす。だ、だから、その……恥を承知で彼女達のやっている鍛練を一緒に受けたいとお願いしたんです。」
と、ダガー。
「君たちのプライドを捨てても一緒に鍛練をしたい気持ちは、今後も大事にした方がいい。プライドを持つことは良いが、誰しもプライドを捨てることには、躊躇してしまうもんだよ。自分を良く見せたいからね。捨てる強さを持っている君たちは、これからもっと強くなれるよ。心身共にね。頑張りなさい。」
「「「「「「あ、ありがとうございます!」」」」」」
お父様の言葉に、ソウヤ達は感銘を受けたようだった。
「では、明朝から鍛練を始めるで良いかしら?ジョアンもベルちゃんも大丈夫?」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
「じゃあ、今夜の夕食はいっぱい食べなさい。明日からは、食べることも出来ないかも知れないから。」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
「ジョ、ジョアン?どう言うことだ?」
ブラッドが小声で聞いてきた。
「あはは。まあ、初日の鍛練後は、食べるのもキツいかも知れないからね。」
「ウソだろ……。」
「大丈夫、大丈夫。なんとかなるって。」
「ジョアン、パール達のことは紹介したのかい?」
「いえ、まだですけど……良いのですか?」
「パール達については、致し方ない。閉じ込めておくわけにもいかないのだから。」
「わかりました。……じゃあ、みんな紹介したい子達がいるから、場所移動しよう。」
そう言って、皆んなを厩舎に案内する。
スノーとブラウが馬番のイアンに連れられて、厩舎前に来たところに、タイミング良くザックがパールとロッソ、メテオを連れて来てくれた。ソウヤ達は、何が始まるのかとキョロキョロしている。
「えっと……私の契約獣を紹介するね。」
「「「「「契約獣!?」」」」」
「エドは、パールやロッソ、メテオには会っているけど、スノー達は初めてよね?」
「うん。でも、ただの白馬じゃないのか?」
「あー、まー、普通の白馬じゃないかな?えーっと、じゃあスノーから。」
『初めまして、ジョアンの契約獣、ペガサスのスノーと申します。』バッサー。
『同じく、ジョアン様の契約獣、ペガサスのブラウと申します。お見知りおきを。』バサッ。
『ジョアンの契約獣、フェンリルのパールよ。』ムクムクッ。
『ジョアンの契約獣、カーバンクルのロッソだよ。』
『姐さんの契約獣、ホワイトデーモンオウルのメテオっす。』
スノーとブラウは翼を広げ、パールは通常サイズに。見た目だけでも目を疑うのに、言葉まで話す契約獣達に、ソウヤ達は目を見開き、口を大きく開けたまま固まった。
「えーっと、ウチの子達です。てへっ。」
首を傾げて照れ笑いする私を見て現実に戻ってきたソウヤ達は、仲良く声をそろえた。
「「「「「「はーー!?」」」」」」
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