341.劇的ビフォー◯フター
夏季休みに入り、ジェネラルに戻って来た。
ルーティンの朝練をこなし、朝食を取った後に街へやって来た。奴隷事件の直前にお願いしていた、ジョウ商会のリフォームを見るために。ちなみに、ジョウ商会は休業しているわけではなく、店舗の前に仮店舗のようなものを作り、そこで軽食のみを販売していた。仮店舗と言っても、運動会で見るようなタープテントのようなものだ。木材の骨組みに防水加工された布を屋根として張っているだけの仮店舗。
最初、リフォーム中は完全休業しようと思い、商業ギルドに説明したところ、ギルマスのイケメンエルフ、マイローさんから「どうか仮店舗を!!」と懇願された。
話に聞くところ、ジョウ商会の軽食は、冒険者だけではなく各ギルドスタッフも多く利用しているらしい。まあ、パン屋以外でテイクアウトできるような食事を売っている所がないジェネラルでは、ジョウ商会の存在は大きいらしい。その代わりと言って、時間停止付きのマジックバック大を貸してくれた。
……という経緯もあって、仮店舗で軽食を販売中。
新店舗は、リフォームの間、店舗周囲に足場を組み全面をテントの屋根と同じ、防水加工の布で囲っている。棟梁たちからは、「何でそんな事するんだ?」と不思議そうにされた。
理由は、2つ。まず、前世では当たり前だった、工事中の落下物防止と粉塵飛散防止。街のど真ん中ということもあり人通りが多い。そんな場所での工事で、通行人や街の人に怪我させたりするのは店の評判にも関わる。それは棟梁達にも言える事。
もう1つの理由は、どんな店舗が出来るのか、皆んなにワクワクしてもらいたいから。隠されると知りたくなるのは人間の心理。要するに、“鶴の恩返し”状態。現に、毎日のようにカバーの中を覗こうとする人はいるらしい。でも、残念ながら結界を
張っているために、登録した人間しか中に入れない。だから、覗いても真っ暗で、覗いた人は皆んな首を傾げる。
ちなみに、この結界を張ったのは、私。
学院に入学してから月2回、ジュリー叔母様の所で、魔術鍛練という名の実験用マウスをした結果、高位魔術師の極一部が使えるという【結界】を使えるようになった。……というと私が頑張ったように聞こえるけど、実際は違う。
高位魔術師が使える【転移】が使えるんだから、【結界】も使えるんじゃない?と言う、何気ないジュリー叔母様の言葉で、アシストちゃんに聞いてみると……。
ーーA:【結界】?欲しいの?
ーーJ:いやいや、使えるのか聞いただけ。
ーーA:じゃあ、それをデビュタントのお祝いにするよ。
ーーJ:はいーっ?
ってな感じで、この前から使えるようになりました……。
ジュリー叔母様は、大興奮で何度も何度も【結界】を張らされた。もちろん、お父様が頭を抱えるのは予想できたが、話を聞いた宰相様まで頭を抱えたのは予想外。ちなみに、陛下は「さすが規格外!」と笑っていたそうだ。
私の【結界】は、遮蔽などの【シールド】と、災害や攻撃などから身を守る【バリア】がある。新店舗に張っているのは【シールド】で、登録した人間以外を対象にしたもの。ちなみに【シールド】が、こんな風に登録出来るのは私だかららしい……。なんとなく、わかっていたけど。
そんなわけで、リフォーム中の新店舗は、ランペイルの領民もオープンを今か今かと期待して待ってくれている。
今日は、夕方からプレオープンとして、ランペイル家の使用人達を含む家族、ニッキーさんファミリー、ガンダルさん、各ギルドからギルマスと他1人、ガンさんファミリー、マーティンさんファミリー、孤児院の院長、診療所から2人にお披露目をする。
私は、オーナーとして最終確認に、新店舗へやって来た。
*****
囲いの中に入ると……
なぁぁんというぅことでしょぉぉぉ~~!!
外装のペンキが剥がれボロボロになっていた壁は、孤児院の子供達の手で再び真っ白な壁に元通り。立て付けが悪くなっていた入り口の扉は、片手開きの扉から引き戸へと代わり、引き戸の小窓にはスミス領で作られた色ガラスで作られたステンドグラスが嵌め込んである。段差があって店内からの出入りで躓く事多く、長年の雨風で床板が腐っていた所があり危険だったウッドデッキは、カマロさんの手で店内からの出入りもしやすいバリアフリーに。更に雨風が避けられるように、ウッドデッキ全体を特殊なガラスで囲んでいる。そこはまるでサンルームのよう。もちろん、天気の良い日はフルオープンになる。そこに並ぶのは若手の木工職人達が作ったテーブルとベンチ。
裏手にあった立ち飲み屋の場所も商会になり、今までよりも広くなった店内。壁面には可動式の棚、店内中央には大きなテーブルがあり、孤児院の子供達が内職した商品が並んでいる。
このリフォームで、特に力を入れたのは厨房とカウンター。厨房とカウンター内だけで、およそ20畳。
厨房には、作業台の下は冷蔵庫。以前は2口だった魔道コンロが5口。その他に、揚げ物用のフライヤーを導入した。
カウンターには、ダッシャー商会から購入したコーヒーメーカーが2台。カウンター下は一部、ドリンク用の冷蔵庫と製氷庫。カウンターの横には、特殊ガラスで作られた冷蔵庫。そこに並ぶのはケーキやプリンなどのスイーツ。
以前の店舗と違うのは、上のフロアに繋がる階段が厨房の中にあること、厨房にスタッフ専用出入り口があること。
2階は、店長のケイト夫妻が住んでいたが子供の出産を機に近くに新居を構えた。リビングだった所は、スペースを広げて従業員の休憩室に。冷蔵庫とミニキッチンが付いている。中央にはダイニングテーブルセット。壁面には、本棚を置いた。その他に、商品のストックを置くパントリーを作った。シャワールームはそのまま、トイレは2つ作った。
さらに、3階建てになったこと。3階は、孤児院出身の新しく雇ったスタッフの部屋がある。1人部屋で6畳ぐらい。シングルベッドと小さな机と椅子、クローゼットがあるだけ。この部屋を、ニューフェイス達に紹介したら、涙を流して喜んでくれた。なぜ、そこまで喜んでくれたのかというと、孤児院では1人部屋などなく、産まれて初めての自分の城ということからだった。
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