333.使者達
お父様が、私に話し掛けようとした時、陛下達が部屋へ入って来た。私達は、その場で男性は頭だけを下に向けてお辞儀をし、女性は膝を曲げて小さくカーテシーをする。
「皆、頭を上げて良い。」
陛下の言葉に頭を上げると、陛下と王妃様、アルバート殿下そして被害者達と共にアニア国の使者と被害者のご家族、エルファ国の使者と被害者のご家族、その後ろから宰相様とリバークス侯爵が入室してきた。リバークス侯爵はカズール先輩のお父さんだが、私とは面識がなく、貴族名鑑でしか顔を見たことはなかったが、目元が先輩と似ていた。
全員が座り、陛下が話し出す。
「まずは、アニア国とエルファ国の方々を紹介しよう。こちらからアニア国の宰相補佐であるガドラ・ティガー公爵令息殿、そしてティガー公爵家騎士団長のバギーラ・オーダイル子爵殿だ。そしてラビィ嬢のご家族のマーシィさんだ。」
トニー君のお兄さんは、黄色の髪に耳、吊り上がった黒い瞳の虎人族。バギーラさんは、黒色の髪に耳、眼力の強い黄色の瞳が印象的な黒豹人族。マーシィさんは、垂れ耳の妹、ラビィちゃんとは違い、ピンと立っている焦茶色の耳に髪の毛、ワインレッドの瞳で、場の空気に飲まれているのか先程からキョロキョロとしている兎人族。
「そして、エルファ国の外相であるティリオン・エデーン侯爵だ。」
エデーン侯爵は、外相でありサエルミラ嬢のお父さんだという。薄緑色の長い髪を緩く三つ編みにし、薄茶色の瞳のエルフ人族。そして、レルータ夫人の長兄、エドの伯父さん。
次は、こちらの紹介だが、お父様とレルータ子爵夫妻は、既に顔合わせをしているそうで、私とエドを紹介してくれた。
「陛下、発言を失礼致します。もしかしてこちらが……。」
ティガー公爵令息が、私と陛下を交互に見る。
えっ?私?何かしたっけ?
「ああ、こちらのジョアン嬢が今回の事件の功労者だ。」
「やはり、そうでしたか。この度は、尽力頂きましてありがとうございました。」
「い、いえ、私は【サーチ】の情報を話したまでで……。謝辞は私よりも、捜索や犯人を捕獲された方にお願いします。」
「ジョアン嬢は人格者ですな。ええ、もちろんそちらには既に、礼は述べております。しかし、ジョアン嬢が最初に猫人族の双子を助けてくださったお陰で、事件が発覚したのも事実。本当に礼を言う。」
ティガー公爵令息が言い、次いでエデーン侯爵が
「私からも、お礼を。娘達を助けて頂いてありがとうございます。ランペイル領で保護頂いた時にも、ジョアン嬢のお陰で治療が出来たと聞きました。また、妹だけではなく甥もいつもお世話になっているようで。ありがとうございます。」
「いえ、レルータ伯爵夫人にもエドラヒル様にもいつも良くして頂いております。お礼を言わなければならないのは、私の方ですわ。」
その後、宰相様より事件のその後を説明されて、場所をテラスに移しガーデンランチパーティーとなった。そこでは、堅苦しい話ではなく、主に被害者達が退院した後、どう過ごしていたかを話していた。
「兄上、僕、お空を飛んだんですよ。」
「ん?空を?どういうことだい?」
トニー君の話を、嬉しそうに聞くティガー公爵令息は首を傾げる。
「ジョアン様の契約獣のペガサスに乗せてもらったんです。ゲータは、怖がったけど、僕は平気だったよ?」
「は?ペガサス……?」
ティガー公爵令息は、目を見開き私を見る。
「事実ですわ。私の契約獣にペガサスがおります。」
「なんと……ペガサスを契約獣とは凄いですな。」
「ジョアン様は、他にも契約獣がいるんだよー。」
トニー君。お願いだから、パールのことは内緒だからね。
お願いだから、それ以外は言わないでー!
なんて、私の心の声がフラグになったのか……
「カーバンクルとー、ホワイトデーモンオウルとー、あとねーフェンリル!」
「フェンリルー!?」
「あっ……。」
ティガー公爵令息の驚いた声に、トニー君は内緒だということを思い出したようで、口を押さえたが時既に遅し。
Oh my gosh!
トニー君よ、やっちまったなぁー。
「ジョアン嬢、トニーが言っていることも本当だろうか?」
「は、はい。本当です。」
「そのフェンリルを見せてもらえないだろうか?どうかお願いしたい。」
「えっ!?」
「あ、兄上、ジョアン様からパールを、フェンリルを取り上げないですよね?」
「ん?当たり前だろう?……ああ、そうか。トニーとジョアン嬢はその事を心配していたのだな。アニア国でフェンリルが崇められているから、取り上げるのではないかと。」
「「はい。」」
「あっははは、そんな事はしないぞ。確かにアニア国の祖であるフェンリルは崇められているが、それはフェンリルに対して危害を与えてはいけないだけだ。契約獣となっているフェンリルを契約者から無理矢理離したら、それこそ危害を与えてしまうではないか。……とは言っても、アニア国でもここ何十年とフェンリルは目撃されていないんだがな。」
「そうだったんですね。僕、間違えて覚えていたみたいで……。ジョアン様、ごめんなさい。」
「いいえ、謝らないでいいのよ。私はパールと離されなければ良いのだから。」
私達の話は、周りにいる人にも聞こえていたようで、トニー君を温かい目で見守っていた。
「ジョアン嬢、どうだろう?ティガー宰相補佐殿に、パールに会わせてみたら?」
「アルバート殿下。実は、今回パールはジェネラルに置いて来たのです。その……連れて行かれては困ると思いまして……。」
「そうか……。それは致し方ないな。」
「ジョアン嬢、ランペイル辺境伯殿、宜しければジェネラルを訪ねても構わないだろうか?」
ティガー公爵令息は、パールに会いたいのもあるが、トニー君達被害者を治療してくれた診療所にお礼を言いたいと言う。それを聞いたエデーン侯爵も、それだったら私もお礼をと言う。
お父様は、チラッと陛下の方を見ると宰相様と共に頷く陛下。
「わかりました。では、明日であればご案内致しましょう。」
「急で申し訳ないが、宜しく頼む。」
ということで、明日、ジェネラルにアニア国、エルファ国御一行がやって来ることになった……。
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