330.サエルミラ嬢とラビィちゃん
「うふふ。エドはね、昔はここまで食に興味がなくて、病気がちだったのよ。騎士科に進んでから、どんどん筋肉もついたようで、授業や鍛練が楽しいって話してくれて、いつの間にかこんなに食べるようになっていたのね。」
レルータ伯爵夫人がゲータさんと競い合うように食べているエドを優しく見守りながら話してくれる。
確かに、一般科だった時はもっと線が細かったなぁ〜。
寒くなると風邪もよく引いていたから、毎年ハチミツリモンやションガー湯(生姜湯)を渡してたっけ。
「母上、風邪を引きにくくなったのも、食に興味を持ったのもジョアンのお陰ですよ。騎士寮では、厨房にジョアンがいると聞くと、自然とみんな食堂に集まるんですよ。」
「あら?ジョアン様は寮の厨房を使われるのですか?」
「あー、はい。騎士寮には4人しか女子がいないのですが、女子会で私の作った料理やお菓子を出すので、時々厨房を借りてます。」
「まあ、女子会?良いわね〜。ん?でも、どうしてエド達が集まるの?」
「母上、それはもちろんお裾分けを期待してです!」
エドさんや……胸を張って言うことではないと思うけど?
ほら、レルータ伯爵夫人もうちのお父様も呆れ顔だわ。グレイは、背を向けているけど肩がバイブ機能だわ。
トニー君とゲータさんへ簡単な質問したり、レルータ夫人と料理について話したりしていると……
「ん……ふぁ〜よく寝たわ。ん?あれ?ここどこ?」
と、可愛らしい声が聞こえる。
「っ!!ミラ?サエルミラ?」
「ん?あれ?叔母様?エド兄様も?え?何で?私……。」
「ミラは、アニア国で奴隷商に捕まってエグザリア王国に連れて来られたんだよ。覚えてない?」
エドが優しく聞いている。
「あっ……そうだわ。地下牢に入れられて……あの日、上が騒がしくなって髭のおじさんに来いって言われたけど、ラビィと一緒に結界を張って……ラ、ラビィは?ラビィは無事なの?」
私は、2人のベッドを仕切っていたカーテンを開けると、サエルミラ嬢はラビィを確認した。
「まだ、目を覚まさないの。でも、怪我もなく魔力枯渇だけよ。」
「良かった……。」
レルータ伯爵夫人に説明されて、安心したようだった。
「エデーン侯爵令嬢、私はここジェネラルの領主、スタンリー・ランペイル辺境伯と申します。こちらは、娘のジョアン。」
「初めましてジョアン・ランペイルです。こちらをどうぞ。」
私は、カップに入った【アクア】の白湯を渡す。
コクッ「……ありがとうございます。」
「ミラ、ジョアンは俺の同級生なんだ。そして、ミラ達を助けてくれたのは、ランペイル辺境伯のお力添えがあったからなんだよ。」
「お2人共、本当にありがとうございます。私は、サエルミラ・エデーンと申します。」
私達の挨拶が終わり、後ろに控えていたトニー君達を紹介すると、サエルミラ嬢は2人の状況に驚く。
「もしかして……あの時のスープ?」
「ミラ?何か知っているのか?」
「ええ、助けられる日の夕食に出された、何かの肉の入ったスープ、あれを私とラビィは食べなかったの。それで2人に食べて貰ったのよ。じゃあ2人の声が出なくなったのは、私のせい……ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
サエルミラ嬢が2人に謝る。2人は、首を横に振って、頭を上げるようにジェスチャーで伝える。
「サエルミラ嬢、2人は明日には声が出るようになるはずです。ご安心下さい。」
「ほ、本当ですか?」
「はい、私の【サーチ】の結果です。」
「【サーチ】でそんな事がわかるのですか?」
「えーっと、私のは【サーチS】だからですかね……。」
「まあ、Sだとわかるのですね。凄いですわ。」
「あは、はは、は……。」
はい、そこのエドー!
ジョアンだからだろ?とか、呟かない!
「ん、んー。何〜、ミラ?もう朝?」
「ラビィ!?良かった、本当に良かった……。」
「えっ、ミラ?泣いてるの?どうしたの?ん?あれ?トニー君?ゲータさん?……あれ?ここどこ?」
私達の話し声で目を覚ましたラビィちゃん。サエルミラ嬢が泣き出したのもあって色々困惑中。お父様がラビィちゃんが目覚めるまでのことを説明する。説明を聞きながら、驚いたり地下牢での事を思い出し苦しそうな顔をしている。
サエルミラ嬢とラビィちゃんが落ち着いたところで、改めて私達の自己紹介をする。そして、アニア国とエルファ国からの使者が来るまで、どうするか話し合った。現状、女の子2人は栄養失調、トニー君とゲータさんは明日には声が出る予定。
そこで、レルータ伯爵夫人は女の子2人はレルータ伯爵家のタウンハウス、王都の屋敷で療養させるという。
トニー君とゲータさんに、良ければ我が家に滞在しないか聞いてみたが、声が出ない為2人で相談する事も出来ない。なので明日、また考えを聞くことにした。
ちなみに、今回事件が発覚した経緯と共にバースとテトの存在も伝えた。最初はバースとテトが発見された状態を嘆いていたが、我が家で失声症も風邪も治り、丁重に保護していること伝えると、安心してくれた。
そして私達は、屋敷へ戻って来た。
レルータ伯爵夫人とエドは、一度タウンハウスに帰ると言うことで、転移扉で帰って行った。
サラとザックの話では、バースとテトはずっと客室から出ようとしなかったらしいが、お母様が声を掛けて温室や演習場などを散策したそうだ。演習場では、ちょうど私兵団が演習をしていたらしく、バースは目を輝かせて演習を見ていたらしい。
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