33.フレンチトースト
「アレンジって何するんすか?」
「フレンチトーストにしようかと思って」
「何すか、フレンチトーストって?」
「硬いパンをフワフワのパンにするの。一つ、作りますね」
そう言って、硬いパンを切って、卵液…卵、牛乳、砂糖を入れ混ぜたものに、浸していく。パンが卵液を吸ったところで、熱したフライパンにバターを入れ、パンを焼く。
ジューッ。
「うっわー、すげぇーいい匂いっすね」
「両面を、焼いて……はい、出来ました」
モグモグ。
「「美味い!!」」
「ハチミツとかかけても良いんですけど、朝食なら、これだけでも十分だと思うんだけど……。どう?」
「「十分!!」」
「良かった。本当は柔らかいパンを作りたかったけど、時間がないからー」
「「柔らかいパン??」」
あっ、食いついた。
でも、色々と面倒なのよねぇ。ドライイーストがないから、天然酵母を作るのに1週間ぐらいかかるんだもの。
でも、2人の視線的には……作るのよね?
「じゃあ、後でパンの元を作りますから、まずは朝食を作りましょ」
「あっ、そっすね。時間が足りなくなるっす」
「じゃあ、やりますか」
「「おー!!」」
サラダとスープはベン、オムレツがアーサー、フレンチトーストを私が調理していると……
「えぇーーーーーー!?嘘でしょーーーーーーー?」
「「「ん?」」」
3人で顔を見合わす。
何?今の声は、お母様?
「奥様ですかね?」
「たぶん」
「「「……」」」
「ジョアーーン、ジョーーアーーーン。どこーーー?ちょっと来てーーーーーー」
「よ、呼ばれました。途中でごめんなさい」
「い、いや、早く行った方がいいっすよ。あれは」
「ですね。行ってきます」
タッ、タッ、タッ……。
お母様の部屋に向かう。
えーなんだろ?何かしたっけ?
全く思い当たる節がないわよ?
お母様の部屋まで来ると、扉の前にお父様とグレイ、ナンシーがいた。
「おはよう、ジョアン。待っていたよ」
「おはようございます、お父様。お母様、どうしたんですか?」
「ともかく中に入ろう。説明はそれからだ。
マギー、ジョアンが、来たよ。入って良いかい?」
「えぇ、大丈夫よ」
部屋の中に入ると……。
ガシッ。お母様に、いきなり抱きしめられた。
えっ?どういう状況?怖いんだけれど……。
「ジョアン、あなた凄いわ!!絶対、どこにも行かせないからーーー!!」
ぎゅーっ。
「お、お母様、く、苦しい……」
「あっ、ごめんなさい。つい嬉しすぎて……」
「ケホッ、ケホッ、何があったんですか?」
「ウエストが細くなっているのよ。それだけじゃなく、気になっていた目元の皺も薄くなっているの」
「えっ?あっ、それは良かったですね。でも、なんで私にお礼を言うのです?」
「昨日、ジョアンの作ったドライフルーツを食べたからだと思うのよ」
「はっ!?だって、昨日食べて一晩でなんて、無理でしょう?さすがに」
「だがな、ジョアン、私もグレイも疲れと目元のクマが消えているんだよ。だから、もしやと思ってサーチしてみたんだ……」
「で、どうでした?」
「うん……。私のサーチでは、ブレープのドライフルーツとしか出なかったんだよ」
えーっ?なんなの?
何でお父様、何で遠い目をしているの?
グレイは、そんなお父様を見て俯いて肩を震わせている。あれは、笑っているわね。
「うぐっ」
えっ?グレイが脇腹押さえてる。今の一瞬で、何があったの?
あっ、ナンシーが拳を握り締めてる。ボディブローが入ったのね。
やっぱり、どの世界も妻が強い方が多いのね……。
うん、グレイの前にナンシーを怒らせたらいけない人に認定するわ。




