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コミカライズ連載中【WEB版】享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜《第11回ネット小説大賞 金賞受賞》  作者: ラクシュミー


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322.バースとテト

院長の話では、今、孤児院に獣人の兄妹を保護したと言う。

詳しく話を聞いてみると、ある朝、孤児院の外を掃除しようと外に出た所、2人が蹲っていたと。しかも、2人共手首足首を怪我していた上に、発熱さらに栄養失調だったと言う。ようやく熱が下がったが、誰とも話さず、困っていると言う。

「その子達に会っても良いですか?」

「はい。ご案内します。」


孤児院の子供は、基本一部屋に2段ベッドが2台ある、4人部屋。でも、その子達は孤児院の子供が病気になったら、完治するまで生活する隔離部屋にいると言う。隔離部屋はシスター達が寝泊まりしている部屋の隣にある。シングルベッドが2台あり、ベッドの上に呼び鈴を鳴らせる紐がぶら下がっていて、紐を引っ張ればシスターが駆けつけてくれる。


隔離部屋に入ると、その兄妹は身体を寄せ合い、怯えるようにこちらを見ていた。

「こんにちは。私はジョアンよ。院長先生のお友達なの。」

「「……。」」

「すみません、ジョアン様。こちらの話は理解しているようなんですが、話そうとしないんです。」


兄妹を観察すると、男の子は肩までの長さの黒髪で金色の目は吊り目、人間とは違う耳は髪に見え隠れしている。女の子の方は、背中の半分まで伸びた髪は男の子と同じ黒髪と耳。目は前髪で隠れてしまって見えない。そして院長の言ったように、手首足首に縛られていたのか、擦り切れた傷がある。よく見ると首にも跡が。頬はこけて顔色も悪く、目の下にはクマがある。


「あなた達のこと知りたいから、【サーチ】させてね。」

「「……。」」



[バース]

アニア国出身。猫人族。ストリートキッズ。13才。双子の兄。


状態:風邪。栄養失調。毒薬による失声症。


補足:アニア国から奴隷として連れて来られた。

   奴隷商に毒薬を飲まされて失声症に。

   発熱の為、捨てられた。

   


[テト]

アニア国出身。猫人族。ストリートキッズ。13才。双子の妹。


状態:風邪。栄養失調。貧血。毒薬による失声症。


補足:アニア国から奴隷として連れて来られた。

   奴隷商に毒薬を飲まされて失声症に。

   発熱の為、捨てられた。

   


っ!!奴隷商?何てこと!

病気になったから、捨てるなんて!!許せない!!

でも、まずはこの2人のことね。


「……バースとテトね?」

「「っ!!」」

「院長、この子達、奴隷として連れて来られたらしく、毒薬による失声症みたいです。」

「まあっ!なんて事を!!」


毒消し……【アクア】の水で良いかな?


バッグを通してストレージを展開し、【アクア】の水の入ったコップを2つ取り出す。

「毒消しの薬だから、コレを飲んでみて?」

バースとテトに、それぞれ渡す。2人は、恐る恐るながらもコップを受け取る。バースは、匂いを嗅いで、おかしくない事を確かめると口を付けた。


スノーちゃん達は、甘いって言うけど、まあ、一般的には普通の水だから、無味無臭なんだけどね。


コクッ「……うま……。っ!!」

「っ!!」

「まあっ!!」

バースは、自分の声が出ることに、驚いていた。それを見ていた、テトも院長も。バースは、テトにも飲むように頷いている。

コクッ「……おいし……。」

テトも声が出るようになり、コップを置いて兄妹で抱き締めあっている。それを見ていた院長の目からは、一筋の涙が。


院長には、兄妹についてお父様に連絡を取ってくれるようにお願いした。もし、奴隷商がまだジェネラルにいるようなら、捕縛してもらわなければならないから。

エグザリア王国では、奴隷及び人身売買は禁止されている。しかし、裏社会ではやり取りがあることは知っていた。


院長が去って、部屋には、私たち3人。ちなみに、パールとメテオは、外で孤児院の子供達と遊んでいる。

「2人共、お腹空いてない?」

2人は、同時にうんうんと頷く。

「良かった。じゃあ、ご飯にしようか。でも、ずっと食べてなかったみたいだから、まずは少しだけね。いっぱい食べるとお腹がビックリするから。」

そう言って、ストレージから卵粥の入った小さい土鍋を出す。それと一緒に、木のスープボウルとスプーンも。


「熱いから、気をつけてね。お水は、ここに置くよ。」

卵粥を2人に手渡し、先程より冷たい【アクア】の水をベッドの間のサイドボードの上に置く。

「っ!!……美味い。」

「うん……。バース……美味しい。」

その後は、無言で食べ続ける2人。食べ終わると名残り惜しそうに、スープボウルをジッと見ている。

「ふふ、美味しかった?じゃあ、デザートもどうぞ。」

2人に渡したのは、リップルの甘露煮シナモン掛け。いわゆるリップルパイの中身のみ。


それも、きれいに完食すると、2人は顔を見合わせて頷く。

「「……ありがとう。」」

「どういたしまして。」

それから、私は2人のこと、奴隷商のことを聞いた。


親に捨てられたと言う2人は、ストリートキッズとして同じ境遇の子供達と路上生活をしていたらしい。ある日、バースが食料を探して寝泊まりしていた空家に戻ってくると、テトが何人かの男達に無理矢理馬車に連れ込まれそうになっていたらしい。そこをバースが助けに入ったが、後ろから何かで殴られて、気がつくとテトと共に鎖で繋がれていて、船の中だったそうだ。


食事は日に一食出たそうだが、船が王国に着く前日に失声症の原因となった毒入りスープを無理矢理食べさせられたそうだ。その後、陸路を荷馬車で走っていたそうだが、途中雨に降られ幌が付いていなかった為に、2人は風邪をひいた。2人を攫った男達は、病気持ちは面倒だと言い、森の中で2人を置き去りにしたらしい。その後、2人はどうやって孤児院まで辿り着いたかは、覚えていないと。気がついたら、隔離部屋で寝かされていて、シスター達が看護をしてくれたと話してくれた。







 

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