314.新ネタ
春になり、私もクラスメイトも全員無事に2年生に進級した。フレッド殿下やエレーナ先輩、クロエ先輩は最高学年だ。
そして、私の愛する双子ちゃんが一般科に入学した。
あんなに小さかった2人が、もう学院に入るだなんて……。子供の成長って早いわ〜。なんて、騎士寮の食堂で呟いたら、一緒に食べていたソウヤ達から「どこの親類のババァだ!?」と総ツッコミが入った。
ソウヤ達とも6年の付き合いになり、ツッコミが年々上手くなってきたなぁ〜と思う、今日この頃の私です。
プライベートでは、なかなか放課後に時間が取れなくて、週末しか冒険者活動が出来ない。だから、なかなか昇格試験を受ける為のポイントが貯まらないのが、目下の悩み。
でも、夏季の長期休みになったら、野営しつつ討伐依頼を片っ端からやろうと密かに計画中。さすがにバレると、止められそうだから誰にも話してない。
前にベルと話していた、蓋つきの四角のガラス容器は、カリムに話したら、スミス伯爵に文を飛ばしてくれた。私の説明に興味を持ってくれたようで、早速試作品を作ってくれるとのこと。楽しみ〜。ガラス容器が出来たら、ティラミス作りたいなぁ〜。
ちなみにコーヒーは、ダッシャーさんの所で、帰り際に見つけたのだ。もちろん、買ってきた。帰ってきて、お父様達に飲ませたら、お父様とグレイは目が覚めるとブラックコーヒーにハマったようだった。飲み過ぎはダメだから、ナンシーに管理をお願いした。
そして2ヶ月後には、デビュタントパーティーがある。
まだ、15才の私だけど、早生まれになるので数え年でやるらしい。前世で言うところの七五三と同じ考え方なんだね。
《デビュタント》
王族が主催する夜会の中でも、16才の子息子女がいる貴族が家族で出席するため、かなり大規模な夜会。社交界に最初に出る舞踏会のことで、ようやく大人として認められる。
デビュタント以降は、結婚の対象とみなされるようになる。ちなみに舞踏会とは社交界、政治的側面の他に、婚活パーティー的な性質を持っている。
デビュタントが終われば、ようやく大人の仲間入り。
そう!酒が飲めるのだ!本当に待った。前世の記憶を持ってから、10年。長かった〜。
もちろんその日は、おつまみとカクテルを作り、朝まで飲み明かす予定。
デビュタントパーティーに参加する子女のドレスコードは、純白ーーオフホワイトやアイボリーなどは不可ーー、そしてドレスに併せた白のオペラグローブーー肘上まである長い手袋ーー。
ということで、我が家でドレスを選んでいる。
朝から、ニッキーさんとお母様、お祖母様そしてなぜかジュリー叔母様が、あーでもないこーでもないと相談している。
それを、私は離れた所から紅茶を飲みながら見ている。
『どうして、主役が傍観者なの?』
私の足元で、同じようにお母様達を見ながら、パールが聞いてくる。
「ん〜、私も色々と考えてたけど、熱量が違うから……。」
『あー、納得……。』
『ねぇ〜、僕の石をネックレスとかにしたらどうかな?』
サイドテーブルの上で、クッキーを食べていたロッソが言う。
「えっ、ロッソの石?どうやって?」
『えっ?こうやって?……はい。』
ロッソの額にあった、ガーネットのような赤い石が、ゴロッと取れた。
「『えーっ!?』」
私とパールの叫び声に、お母様達もバッと振り向いた。
『大丈夫だよ。何年かに1回取れるんだから。今回は、そろそろかな〜って思ったから。ジョアンが、使ってくれるなら嬉しい。』
よく見ると、額には取れた石よりも小さな石が既にあった。
「あ、ありがとう。……お、お母様、ロッソから、貰いました。」
「え、ええ、そのようね。」
お母様も動揺していた。でも、ジュリー叔母様は
「きゃー、カーバンクルの石!!ちょっと、見せて見せて!!」
テンション爆上がりでした。
何度か、着せ替え人形をして、ようやくドレスが決まった。
デコルテが綺麗に見えるオフショルダーで、プリンセスライン。一見シンプルに見えるが、後でファンタズモで採れた小ぶりの真珠がスカート部分に散りばめられるらしい。装飾品はロッソの石を加工して、真珠と一緒にネックレスと髪留めにすることも決まった。加工はもちろん、ガンダルさんに依頼。
「必ず、良いものを作ります」と言って、満面の笑みのニッキーさんは帰って行った。応接間には、良い仕事をしたと言わんばかりのお母様達とちょっと着替え疲れの私。ナンシーが新たに淹れてくれた、紅茶を飲みながら、デビュタントについて聞いてみた。
当日のパーティー会場は、王城。16刻開門で、18刻よりパーティーが始まるそうだ。
パーティー会場に入るのは、爵位の低い家からで、辺境伯の我が家はたぶん19刻過ぎ。臣下が入り終わった後で、王族が登場らしい。そこから、陛下の祝いの言葉があり、なんだかんだあって、陛下と王妃様、そして王子達が婚約者と共にダンスを披露して……という流れらしい。
「そう言えば、フレッド殿下の婚約者は決まったのですか?」
フレッド殿下も来年には卒業を迎える、最近は王城での仕事もあるらしく、学院でも騎士寮でもなかなか会わない。
「いいえ、まだみたいよ。でも、聞いたところによるとディーゼル侯爵令嬢が候補者として上がっているって話よ。他にも、何人か候補者はいるらしいけど。」
「えっ!?お母様、ディーゼル侯爵令嬢って、エレーナ先輩?」
「ええ。そうよ。家格や年齢的にね。元々はキャサリーヌ嬢もフレッド殿下の婚約者候補だったんだけどねぇ〜。アルバート殿下が、見初めて自分の候補者にしたみたいよ。」
「えっ?何、それ、初めて聞いたんですけど。じゃあ、アルバート殿下の一目惚れってこと?それって、キャシーちゃん知ってるの?」
「知らないんじゃないかしら?あの殿下ですもの、言わないでしょう?」
「へ〜、ふ〜ん、そうなんだ。まあ、キャシーちゃんに一目惚れするのは、しょうがないか〜。綺麗で、可愛いし、しっかりしてると思えば、天然だったりするし。でも、あの腹黒様がね〜。へ〜。なるほどね〜。クッククク。」
「ちょっとマギー、ジョアンちゃんに話して良かったの?」
「えっと……ちょっと後悔してる……かな?」
「確実に、いいネタ仕入れたような、悪い顔で笑ってるわよ。」
「だ、大丈夫でしょ?さすがに、不敬になるようなことでは、使わない……はず。」
私が、腹黒様の新ネタを、どうしようかニヤニヤ笑いながら考えている横で、お母様とジュリー叔母様がコソコソと話しているなんて、全然気づいてなかった。
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