313.同人誌!?
その後、ダッシャーさんとスイーツ担当の料理人に、緑茶に合うお菓子として、蒸しまんじゅうとどら焼きを試食して貰った。
結果、どちらもレシピを教えて欲しいと言うことなので、我が家の営業、お母様に連絡をお願いした。
「いや〜、ジョアン様。色々とありがとうございます。ここ最近、目新しい商品がなく、悩んでいたところだったのです。本当に、ありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ、いきなり来て提案をしてしまったのに、受け入れて頂いて本当に良かったです。……そう言えば、アリーシャちゃんは、お元気ですか?」
「ええ、もちろん。元気すぎて困るぐらいです。もう文官科の1年になるのに、どうしてか落ち着きがなくて……。先程、連絡しましたので、ここへ来ると思いますよ。」
しばらくして
トントントン「アリーシャです。」
個室に入って来たアリーシャちゃんは、以前会った時よりもグンと背が伸びたようだった。私と目が合うと大きな目をさらに大きくし驚いていた。
「アリーシャ、こちらの方を知っているかい?」
「お父様、知ってるも何も、学院では大人気の先輩ですわ。」
「「は?」」
予想外の答えに、私とダッシャーさんの頭の上にはハテナマークが。チラッとマーサを見ると、何故か頷いている。
「お父様に以前、話したでしょう?私の愛読書『騎士科の4姉妹』の話を。あのモデルになっている、騎士科の先輩です!」
「お、おお。」
「あの『騎士科の4姉妹』の3女のモデル、ジョアン・ランペイルお姉様ですわ。」
「「……。」」
アリーシャちゃん?何?愛読書って?
『騎士科の4姉妹』のモデルって……知らないんですけど!?
「あ、あの……『騎士科の4姉妹』って、何です?」
聞くのが怖いけど、アリーシャちゃんに聞いてみる。
「はい!『騎士科の4姉妹』とはですね、才色兼備の長女、ハート様。努力家だけどおっちょこちょいの次女、ダイヤ様。男勝りで運動神経抜群の3女、スペード様。そして、無口でマイペースでも話せば辛辣な4女、クローバー様。その4人が、騎士になる為に力を合わせて頑張る物語ですわ。」
「あ……そ、そうなの……?」
鼻息を少し荒く話すアリーシャちゃんに、ちょっと引いてしまった。
『騎士科の4姉妹』の名前はトランプなんだ……。
トランプって、確かアミーさんが暇で、前世の記憶で作ったんだったよね〜。トランプとリバーシ見つけた時、ビックリしたもんなぁー。
と、私が現実逃避をしていると、アリーシャちゃんはダッシャーさんをキッと睨みつけた。
「お父様!ランペイルお姉様とお知り合いだったのですか?どうして私に教えてくれないんですの!!」
「えっ?あっ、いや、その……すまなかった。」
あーあ、ダッシャーさん、アリーシャちゃんの圧に負けて、何故か謝っちゃったよ……。
「えっと……アリーシャちゃん?」
「っ!!ランペイルお姉様が、私の名前を知っているなんて……夢かしら?……痛っ……夢じゃないわ。お、お父様!お父様!私、幸せですー!!」バシッ、バシッ。
「痛っ、痛い、アリーシャ、ちょっと落ち着きなさい!」
「ハッ!?私としたことが、ランペイルお姉様の前で恥ずかしいですわ。」
真っ赤になったアリーシャちゃんは、ダッシャーさんの隣に座り俯いている。
「あのね、アリーシャちゃん?私のこと、覚えてない?前に、会ったことがあるんだけど。」
「えっ?」
「神のペガサスって言ったらわかるかな?」
「えっ!?も、もしかして、あの時の冒険者の……ジョアンお姉ちゃん?」
「うん、そうだよ。」
「でも……冒険者って……。でも、辺境伯家で……。」
「あー、うん。辺境伯家の長女だけど、冒険者もやってて、今は騎士科かな?」
「えっ?えーー!?」
それから、しばらくしてようやく落ち着いたアリーシャちゃん。
「す、すみません……。」
「ううん、大丈夫だよ。」
「でも、本当びっくりです。憧れの『騎士科の4姉妹』のモデルのジョアン様と、知り合いだったなんて……。」
「あは、ははは……。あの、その本ってどこで売っているの?」
「寮の食堂です。あと、最近は姿絵も販売されているんですよ。」
「す、姿絵!?」
「コレです。」
アリーシャちゃんはマジックバッグから姿絵と本を出してきた。
「持ち歩いてるんだ……。」
「もちろんです!」
見せて貰った姿絵は、『騎士科の4姉妹』の4人が剣を持ってポーズをとっている。前世で言うところのブロマイド。本の方は、チラッと中を見て、前世で言うところの同人誌のようだった。そして、裏表紙にかいてある作者の名前を見て愕然とした。
「REBE&MUW?……あっ!?レベちゃんとミューちゃん?マジで?えっ?じゃあ姿絵は……Cossy?……コッシーかーい!」
まさか、同級生だとは……3人して、何してんのよ!
「こ、これ、まだ売ってるの?」
「いえ、発売当初はありましたけど……口コミで瞬く間に完売です。姿絵の方も、今ではプレミア価格がついている程です。」
「そ、そうなんだ……。ちなみにいつから?」
「冬季の休暇明けてからです。」
「お話の途中失礼致します。……お嬢様、その本でしたら屋敷にございますよ。」
と、マーサが言う。
「は?何で?」
「詳しくはわかりかねますが、作者と画家が、販売する前に奥様に許可を取るのにお持ちになったとかで……。」
レベちゃん、ミューちゃん、コッシー……私よりお母様に許可を取るって、どう言うこと!?
いつ来た?冬季休暇中?アレか?私がノルデン領に行ってる時か?
「私……知らないんだけど……。どこにあるの?」
「各屋敷の使用人の食堂にはあるのは知ってますが、他はわかりかねます。」
「各屋敷って、ファンタズモも?」
「はい、左様です。」
「マジか……。」
「あのジョアン様、大丈夫ですか?」
精神的にグッタリしている私を気遣って、ダッシャーさんが心配してくれる。
「はい、なんとか……。ちょっと、驚きすぎて。」
「あの……その『騎士科の4姉妹』のイメージしたスイーツを作って販売しても宜しいでしょうか?4人の好きな、お茶に合わせてスイーツを作り、販売したいと思うのですが。」
「あー、それも、私の一存では何とも……。母に提案して頂けます?」
「はい!もちろんです!」
ダッシャーさんの横では、アリーシャちゃんが4人をイメージしたスイーツと聞いて、悶えてる。
帰ったら、先輩とベルに連絡しなきゃ……。
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