310.スイーツ食べ放題
カズール先輩が私を選んだのが、恥ずかしくて俯いていたからだなんて……。
「だからかな?まあ、ヴィンスからは、絶対ジョアンちゃんを選ぶなって言われてたけど。卒業式後にね。」
「えっ!?ヴィーが?」
「ジョアンちゃんに対するヴィンスは有名だったからね。クラスメイトは、いつもの過保護が出たって笑っていたけどね。あとは……単に、俺が興味があったから?」
「えっ?わ、私にですか?」
「うん。魔物討伐団を希望する女の子を初めて見たからね。辺境伯家の令嬢なのに、どうして危険な討伐団を希望するんだろう?って。確か、ジョアンちゃんのお祖母様は、あのリンジー様だよね?同じように近衛隊には、なりたくないの?」
確かに以前は、近衛隊に憧れた事もあった。キャシーちゃんが第一王子の婚約者に決定した時も……。
でも、どうしても魔物討伐団になりたかった。身分や属性に関係なく、実力主義な魔物討伐団に。
「んー、近衛隊に憧れた事はありました。でも……ヴィーから、聞いてませんか?私が【無】属性なこと。」
「っ!!ごめん、知らなかった……。」
「近衛隊は、貴族の令息令嬢で騎士科卒であればって聞きますけど、でも、王族や他国の要人を守れる実力が必要ですよね?それって、やっぱり剣術や武術だけでは、無理だと思うんです。それだと、【無】属性の私では難しいと思うんです。剣だけで対処出来ない場合があるかもしれませんし。」
「だから、討伐団に?」
「討伐団は、属性や身分、性別関係なく実力主義じゃないですか。以前所属していた女性団員にも話を聞いたことがあります。だからですかね?」
「でも、こう言ったら失礼かも知れないけど……令嬢ならば、結婚するっていう選択肢もあるだろう?」
「まあ、確かにそうですけど。でも、貴族なのに【無】ですよ。誰も、貰ってくれませんって。」
「その……婚約者がいないのは……。」
「あっ、断られたとかじゃないですよ?我が家は、政略結婚をしないだけです。祖父母も両親も。自分の相手は、自分で決める事が出来るので、その点では有難いですね。」
「へぇ〜、やっぱりランペイルは貴族としては、変わってるね。」
「そうかも知れないですね。でも、家族には感謝してますよ。」
何も憂いてないことを、笑顔で言う事で表す。
「ふ〜ん。過保護になるのは、【無】だからって理由だけじゃなさそうだな……。」
「えっ?何ですか?」
「ううん、何でもないよ。あっ、そろそろ曲が終わるね。」
「はい……。ありがとうございました。」
カズール先輩とのダンスが終わると、一緒に踊っていたらしいヴィーとベルが近づいて来た。
「カズール君、ちょーっと僕とお話ししようか?」
「はいはい、行きますよ。じゃあジョアンちゃん、またね。」
ヴィーに引っ張られて行く、カズール先輩は私に手を振ってくれた。
「またね。」って、言ってくれた……。やっぱり何としてでも討伐団に入らなきゃ。
「…ョアン?ジョアン?戻っておいでー。」
「ん?あっ、ベル。ごめん、何だった?」
「もう。何かドリンクでも飲みに行かない?」
「あっ、行く行く。踊ったのと緊張で、喉カラカラ。」
「うふふ、でも良かったね。」
「うん。足を踏む事もなかったよ。」
「おぉー、進歩したね〜。あんだけ皆んなの足を踏みまくっていたからね。」
その後、ヴィーやノア先輩や、他の先輩達と踊り、パーティーが終わる頃には、私のふくらはぎはパンパンになった。でも、先輩達が喜んでくれているのが目に見えたので、頑張るしかなかったのも事実。
パーティー後は、再び4人でランペイル邸に戻り、脚を中心にチームメイドにマッサージをして貰い、今日はそのまま皆んなでお泊まり。明日は、アフタヌーンティータイムの頃に、水上カフェでブライアン先生とヘクタール先生と待ち合わせ。スイーツ食べ放題だ。
*****
「「「「美味し〜!」」」」
「おお、これは美味いな。」
「「……。」」
ブライアン先生とヘクタール先生が、無言なのは……。
ーー時は遡り、9刻間前……。
「ねぇ、ケリー?水上カフェのスイーツ、今、何かおススメある?」
王都のランペイル邸のデザート担当のケリーは、休みの度に王都のスイーツ巡りをしている。時には、アニーと一緒に。
「そうですね〜。今だと、イチベリーのスイーツですかね〜。皆さんと行くんですか?」
「うん。昨日のダンスパーティーに参加する代わりに、先生達が奢ってくれるの。」
卒業生でもない私達が、何で参加するのか、前もって話していた。でも、話した時には、奢ってもらうことは話していなかった。
「あー、だから参加したんですね〜。」
「えへへ。」
「お嬢の言う、先生って、あれか?ブライアンとヘクタールか?」
「うん。そうだよ。」
「……俺も行こうかな?」
「「は!?」」
エイブさんの言葉に、私とケリーは耳を疑った。
「いや、ほら、護衛だ。護衛。お嬢の連れに、貴族令嬢が3人もいるからな。」
「いや、でも料理長が護衛しなくても、ジョアン様達なら返り討ちにするでしょう?」
「エイブさん、食べたいだけでしょ?」
「ん?まあ、それはついでだな。元部下とも交流を図りたいというか……。」
「食べたいだけだね。」
「はい、私もそう思います。」
「……。あーそうだよ。最近行ってねーから、食べたいんだよ!」
「「あははは。」」
そして、今に至る。
「……エイブ隊長、何でいるんすか?」
「あん?さっきも言ったろ?お嬢達の護衛だ。」
「いやいや、料理長ですよね?」
「料理長兼護衛だ。」
「「……。」」
「いやいや、そもそも、この4人は護衛なんていらないっすよ!」
「そうそう。何なら、止めないとやり過ぎるって言うか……。」
「それだ。護衛であり、ストッパーだ。……あっ、コレもう一つ追加。」
「かしこまりましたー。」
エイブさんは、ブライアン先生とヘクタール先生に適当に会話をし、スイーツを追加していく。
「「「「ご馳走様でした!」」」」
「美味かった。また、頼むな。」
「「……。」」
結局、私達とエイブさんは、満足するまでスイーツ三昧を楽しんだが、先生達は予想以上の出費に幾分顔色が悪い。
さすがに申し訳なく思い、ブライアン先生の自宅と、ヘクタール先生が彼女さんと半同棲している貸家に、取説付きで10日分の簡単調理キットーー下拵え済みの食材ーーと、ケリーと共に作ったチーズケーキを、時間停止付きマジックバッグに入れて届けることにした。
GW中、旅行に行く予定はないんですが、バタバタすると思います。
なるべく更新予定ですけど、出来なかったらごめんなさいm(._.)m




