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コミカライズ連載中【WEB版】享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜《第11回ネット小説大賞 金賞受賞》  作者: ラクシュミー


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308.グッドマン商会

年も明けて、私も15才になり、騎士科での生活もプライベートもいつもと大して変わらない日々を過ごしていた。


大変そうなのは、最高学年だけ。

各学科の4年生は卒業に向けて慌ただしい。卒業後の進路を決め、足りない単位を追試で取らなければならない。その間にも、卒業後の希望先での試験などもある。前世でいうところの、就活。


そういった様々な厳しい(?)面倒くさい(?)ことを乗り越えれば、卒業式&卒業ダンスパーティーがある。講堂をダンスホールに変え、軽めのお酒と美味しい食事を食べながら、踊り、卒業を祝う。婚約者や彼氏彼女がいれば、外部の人間でも同伴OKらしい。


「というわけで、ダンスパーティーにお前ら4人参加な。」

「「「「………。」」」」

今、職員室の片隅にある応接セットのソファーに座らせられている私たちに、ブライアン先生が笑顔でダンスパーティーの強制参加を命じた。


「クッククク。そこまで固まるか?」

ヘクタール先生と3-Aの先生達は、私達を見て笑っている。

「いや、だって、何で私達が参加なんですか?」

「そうですよ。今まで下級生が参加する事なんてなかったですよね?」

エレーナ先輩とクロエ先輩が、先生に質問する。

「あー、まあな。ただ、今回は卒業生のリクエストだ。知っているだろ?騎士科は、卒業生に各クラス1つだけリクエストを聞くのを。」


騎士科では、卒業するにあたって、教師達からの祝いとして各クラス1つリクエストを聞くのが伝統となっている。

これまで、1人ずつ武器が欲しいとか、卒業旅行の旅費を出すとか、王都の高級レストランのフルコースとか、色々なリクエストがあったらしいが。


「ちなみに、2クラスともお前らの参加をリクエストしたからな。」

「「「「はー!?何で?」」」」

ヘクタール先生の言葉に、声を揃える。

「ダンスパーティーで、お前らと踊りたいらしいぞ。」

3-Aの担任が言う。


「でも、ダンスパーティーは他の学科と合同なんだから、もっと綺麗で可愛らしい子いますよね?」

「文官科とか、女の子多いじゃないですかー。」

「そうですよ。騎士科の制服着れば、どんな人も2割増しじゃないですか?騎士団入団する人なんて、将来だけは有望だしモテモテでしょ?」

「喋らなければ、皆さん格好良いですよ?」

上からエレーナ先輩、クロエ先輩、私にベルが言う。私とベルに至っては、軽くディスっているけど。


「お前らな〜、アイツらが文官科とかの女の子に話しかけられると思うか?武力はあるが、その関係はヘタレだぞ?」

「しかも、文官科の貴族令嬢は、ほぼ同伴者がいるしな。平民だって彼氏持ちだ。」

「ちょうどお前らは、皆んな婚約者もいないだろ?」

「そうそう、なんだったら卒業生とくっついても良いんだぞ?」

先生達も、卒業生に対して勝手な事を言い始める。それを近くで聞いている、周りの先生達は苦笑。


話はなかなか決まらなかったが、ブライアン先生の一言で事態は動いた。

「よし!俺も男だ。水上カフェでスイーツを奢る。」

「「「「もう一声!」」」」

「うー……わかった。水上カフェでスイーツ食べ放題!」

「「「「のった!!」」」」

私達はハイタッチをし、先生達は項垂れた。



*****



そういう経緯があり、卒パ用のドレスを作るために、王都中心部のグッドマン商会にやってきた。お母様に事前に連絡を入れて貰ったので、時間制の貸し切りのはず。


「ジョアン様!皆様!お待ちしておりました!」

シルバーグレー髪を頭のてっぺんでまとめ、ベージュのシンプルなドレスでふくよかな身体を包み、首からメジャーをかけている中年の女性を先頭に、数人の女性が最敬礼をしている。


「グッドマン夫人、スタッフの皆様、お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」

「はい、お嬢様。この度は卒業ダンスパーティー用だということ。華やかで動きやすいものがよろしいと思います。奥にどうぞ」


色とりどりのドレスや装飾品が並べられた、煌びやかな空間にジョアン以外が圧倒されている。唯一、平民のクロエ先輩に至っては、口が空きっぱなしだ。


そしてドレスの横には、私がデザインしたパジャマや下着関係が鎮座している。

「パジャマや下着は売れてる?」

「ええ、もちろんでございます。初めは、王妃様や第一王子のご婚約者様がご愛用ということで興味本意に手を取られ、ご自宅にて着心地を知り感動。そしてリピーターになり、お知り合いに薦めるという流れで順調な売れ行きです。特に、セクシーな下着に関しましては、ご夫人が旦那様を悩殺できラブラブにと、利用者の方が噂を拡げてくださり、新婚夫婦への贈り物にもなっております。」


「では、お二人にお礼として絹のガウンはどうかな?もちろん色違いの夫婦ペアで。」

「ガウンとは?詳しくお願いします!」

商売魂が出た夫人に、イラストを描きながら説明をする。


「あの〜……。」

「クロエ先輩、決まったんですか?」

「いや……その……もうちょっと、リーズナブルなドレスってないのかな?と。」

私が、夫人に視線をやると、夫人も心得たとばかり頷く。


「それは了承しかねますわ。クロエ様には当店で1番のドレスをお召しになって貰わなければなりません。」

「いや……でも……。」

「まず、リンジー様の命令もありますし。クロエ様には私どもの広告塔にもなって貰いたいのです。」

「広告塔……ですか?」

「左様です。クロエ様は失礼ですがご自分の価値をわかっていらっしゃらない。クロエ様とエレーナ様と共に何年かぶりの騎士科の女生徒。その制服姿に憧れる民がどれほどいることか!さらに、クロエ様は平民とは言え、騎士科の生徒として優秀である上に、お美しい。そのクロエ様が我々のドレスを着る。どれだけの経済効果があると思いまして?クロエ様だけではなく皆様の身につけるものには全てグッドマンのGを刺繍させていただくつもりですの。」

「はあ……。」

「ですから、広告塔の報酬として、ドレスや装飾品一式は、無料で提供させて頂きます。どうぞ、遠慮なくお選び下さい。」

「えっ、良いんですか?」

「もちろんでございます。」


そう言われて、クロエ先輩も安心したのか、スタッフさんに勧められて試着をし始めた。

その後、4人ともドレスを選び終わり、採寸したあと、夫人からお茶とお菓子でもてなされた。流石、羽振りがいいだけあって、お茶もお菓子も超一流だった。




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