307.ノルデンからの帰宅
クロエ先輩の家でお世話になり、先輩の家族や牛舎のスタッフさんとも仲良くなったが、明日には帰らなければならない。
だから、お世話になったお礼として、今夜の夕食を作らせて欲しいと願い出た。
「で、何を作るの?」
「ん〜、煮込みハンバーグ、サンドウィッチ、グラタン、唐揚げ、スープにタマオンとベーコンはどうかな?」
「うん、良いと思う。」
「じゃあ、野菜の皮むきお願い。私は、スープを作るわ。」
「了解。」
今夜はスタッフの方も来てくれるということで、30人前ぐらい作る予定だ。2人で作るのにも限度があるので、唐揚げと煮込みハンバーグは既に下拵えした物、それと、サンドウィッチ用のふわふわパンを1斤、ストレージから取り出す。
ちなみに、ジョアンのストレージ内には、常時下拵え済みの食材が各20人前ずつストックされている。その為、どこででも焼くだけ、揚げるだけ、煮るだけで調理が終わる。主に、唐揚げ、ハンバーグ、ションガー焼き、メンチカツ、トンカツ、エビフライにアジフライ。下拵えが面倒で、かつリクエストが多い料理。
それもジョアンが前世で、主婦の知恵、下味冷凍レシピを熟知し、時短&節約をしていたから。だから暇な時に、厨房に篭り、ひたすら下拵えをしている。
「……。」
「どうしたの?ガラスボウルをジッと見て。」
ジャガトの皮剥きをしながら、ベルが聞いてくる。
「ん〜、下拵えのストックを入れる器が四角でさらに蓋もあれば便利なんだけどなぁ〜って思って。」
「あー。まあ、その方が場所取らないし、乾きにくいよね?でも、ジョアンのストレージは時間停止だから関係ないんじゃない?」
「まあ、そうなんだけど。なんか気分的に?」
「あー、なるほどね。わかる気がするわ。あっ、ガラス製品って、確かカリムの所が有名なんじゃなかった?」
「あっ、そうだ。よし!じゃあカリムにお願いしよう。」
学院に入って一般科から騎士科まで、ずっとクラスが一緒のカリム・スミス伯爵子息。スミス領は、様々なガラス製品を作って、王都でも販売している。
食事会は大好評だった。
食事会の後は、先輩のお母さんや義姉さん、スタッフの奥さん達に作り方の質問責めにあった。でも、予想はしていたので書いていたレシピを渡して、補足説明をした。
奥様方の質問コーナーが終わると、ブルーノさんからも、グラタンを領都の店で出して良いかと聞かれ、もちろん了承した。きっと、いろいろアレンジをして、もっと美味しいグラタンを作ってくれるだろう。
*****
「「お世話になりました。」」
乗合馬車の乗車場まで、クロエ先輩だけではなく家族総出で見送りに来てくれた。
ちなみに今回は、依頼を受けずに乗客として馬車に乗り込む。
「気をつけて帰ってね。また、学院でね。」
「「「また、遊びに来てね。」」」
「姉ちゃん達に教えて貰った練習方法で、頑張って鍛えるから。」
「ジョアンちゃんに教えてもらった、クリームや料理、上手く作れるように頑張るよ。」
「牛達のことも、本当にありがとう。」
上から、クロエ先輩、妹ちゃん2人と姪っ子のハルちゃん、ショーン君、ブルーノさん、ディックさんだ。先輩のお父さんお母さんは、それを見ながら微笑んでくれる。
「お土産、たくさん頂いてありがとうございます。」
「良いんだよ。乳製品しかなくて申し訳ないけど。」
「いえ、とっても嬉しいです。」
先輩のお父さんから、ストレージがあるならと、牛乳を始めバター、チーズと色々お土産を貰った。
「そろそろ、出るぞー。」
御者のおじさんが言う。
「「ありがとうございました〜。」」
「「「「「また、おいで〜。」」」」」
「「「「ばいばーい!」」」」
帰りは、2日目の経由地で降りて、1泊したら乗合馬車に乗らずに門を出る。人目がなくなった事を確認し、転移2回とパールの騎乗を駆使してバーストに向う。パールとロッソのお陰で、大した魔獣にも遭うことなく、バースト到着。
3泊ほどさせて貰い、その間に乳製品料理をチーム料理人に伝授した。ノルデンでは、グラタンを作ったがここでは、チキンライスのドリアを作った。アトスさん達には、焼きカレーについても教えて来たから、きっとそのうち出るだろう。
でも、チーズやバターは高カロリー。
だから、帰る時にベルママには、いつものドライフルーツを渡しておいた。ベルママに私特製のドライフルーツを渡すことは、お父様もお母様も了承済み。その代わりに、秋に収穫した新米を貰った。ビバ!物々交換!
ランペイル領までは、転移1回とパールで帰った。
乳製品料理は、我が家でも好評で、お父様は、今後コンスタントに購入できるかグレイと相談していた。
双子ちゃんは、チーズケーキ2種ーーベイクドチーズケーキとレアケーキーーがお気に入りになった。だから、双子ちゃん大好きで、甘々な私は、プルーベリーやミランジなどを合わせてみたりと、様々なチーズケーキをアニーちゃんと作った。そのお陰で、私とアニーちゃんは、しばらくチーズケーキは食べたくない……。
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