31.乾杯
ようやく、私の秘密を打ち明けることができた。
みんな、どことなくスッキリした顔で笑いあっている。
また、心配かけていたことに、本当に申し訳ないと思う。これからは、みんなの為に美味しいご飯を作っていこう。
「お父様、お母様、グレイにカクテルを作ったんです」
「「カクテル??」」
「私にもですか?」
「はい、グレイもこっちに来て下さい。良いですよね?お父様」
「お、おう、グレイもこちらに来て座れ」
「かしこまりました。失礼します」
ストレージから3人の前にギムレットを、お兄様たちにはノンアルコールのカクテルを出す。
「で、ジョアン、カクテルとは何だい?」
「カクテルは、お酒やジュースも混ぜたものです。これは、ギムレットと言って、ジンとレイムジュースを混ぜたものです。
お兄様たちのは、お酒じゃなくミランジジュースとピーナップルジュース、リモンの果汁を混ぜたものです」
「では、これからのランペイル領の発展と…ジョアンの今後に幸多かれ。乾杯」
「「「「「乾杯」」」」」
ゴクッ「「「「美味しい!!!!」」」」「うっま!!」
「あ、あと、おつまみも作ったんです」
カリカリチーズと、ラムレーズンもどきとクリームチーズを混ぜ硬いパンを切ったカナッペを出す。
「本当にジョアンのストレージは規格外だな」
「ほんと、僕のジョーは料理もできて、規格外のスキルで最高だよ」
ノエル兄様、ノンアルコールで酔ったの?
「んー、美味しいわぁ。このブレープとクリームチーズのカナッペ、ラムの香りがするわ」
「はい、ブレープのドライフルーツをラム酒に漬けたんです」
「もぉー、ジョアンが色々作ってくれるから、私太っちゃいそうよ」
「お母様は、痩せすぎだから大丈夫です!でも、気になるならヘルシーなご飯も作りますね」
私なんて、何回ダイエット失敗したかわからないわ。
なんて、今は言わないけど。
「俺、寮に戻りたくないんだけど……」
「僕も……」
「また、来週帰ってくるまで色々作る練習しておきますから、学院頑張って下さい。クッキーとドライフルーツ準備しましたから」
「「うー、ジョー」」
ぎゅーっ。
2人に抱きしめられる。
さすがに、これは……。
「く、苦しいです、ノエル兄様。ジ、ジーン兄様」
「「ごめん……」」
*****
ーースタンリーの執務室。
「やっぱり、色々なことが規格外だったな。お前の娘らしいよ」
「本当にな、旦那と奥さんの娘らしいよ」
「お前らなー。まっ、ともかく、2人ともジョアンを宜しく頼む。あのスキルで、前世の記憶持ちか……変な輩が来ないとは限らない。どうやって、あの子を守っていこうか」
「ねぇ〜スタン、あの子にある程度、護身術を身に付けさせたいのだけど。属性がないし、スキルも防御には向かないわ。だからこそ、自分でも身を守る術を教えてあげないと」
「そうだな。明日からでも、少しずつ鍛えれば5年後の学院入学までには間に合うだろう。誰か適任がいないかピックアップを頼む、グレイ」
「わかった。基本的なことは、ナンシーがちょうどザックに教えているから、一緒にやったらどうだ?」
「そうだな。ザックはジョアンと同じ年だし、ナンシーならジョアンだとしても、厳しく育ててくれるだろう」
「にしても、お嬢の知識は半端ないぞ。お菓子にしろ料理にしろ驚かされることばかりなのに、カクテルって酒のことまでとはな。つまみも美味いしな」
「前世では、家庭を持っていたと言うぐらいだ。酒も呑んでいたんだろ?」
「あっ、なるほどな。だからか、俺らが試飲してる時に、物欲しそうな顔をしてギムレットを見てたのは」
「そんなに物欲しそうな顔だったのか?エイブ」
「あぁ、間違いないよ、グレイさん。だからノンアルコールのカクテルを作り出したんだ。『お兄様にー』とか言っていたが、あれは自分の為でもあるだろ」
「あー何か想像つく」
エイブから話を聞いて、3人は呆れて苦笑する。
「じゃあ、おつまみにラム漬けのブレープを使ったのも自分の為なのねぇ」
それについては、4人で苦笑いだった。
「まっ、前世の記憶だけじゃなく、酒好きの親から生まれたんだからしょうがない」
「あははは、違いねぇ」
「「グレイ!エイブ!」」
エイブはスタンリー、グレイと同じく元魔物討伐団として、旧知の仲で時たま3人、もしくはマーガレットを含めて4人で呑むことがあった。
今夜はジョアンの作ったおつまみとカクテルで、今後のジョアンのことについて話し合っていた。




