300.ご褒美
まだ、人がまばらな騎士寮の食堂。私達の他には、5、6人生徒がいるだけだった。
講習会が終わり、今日の授業も終わりという事だったので皆んなで寮の食堂にいる。なぜなら、講習会を終えたジーン兄様とエリック様にもっと話を聞きたいと皆んなが言うから、時間を取って貰ったのだ。
「本当に良いのか?先輩達、忙しいんじゃ?」
カリムが申し訳なさそうに聞いてくる。
「あー大丈夫、大丈夫。ちゃんと見返り用意しているから。」
「何だ?見返りって。」
そうダガーが聞いた時、ジーン兄様とエリック様、そしてなぜかその後ろからヴィーとノア様、カズール様もやって来た。
えっ!?なんで?なんでいるの?
ヴィーだけならまだしも、どうしてあの2人が?
「あー悪い。待たせたな。」
ジーン兄様が言うと、私とベル以外がガタガタッと立ち上がる。
「忙しいところ、申し訳ありません。」
「「「「「「「「「申し訳ありません。」」」」」」」」」
エドに続いて、皆んな頭を下げる。
「あー、気にすんな。今日は、これで仕事終わりだし。俺らにもメリットあるしな。な?ジョー?」
「はいはい。で、何が良いの?」
「あー、俺はカツ丼とメソ汁、あと唐揚げとフライドジャガト。ランペイルドックも良いなー。エリックは?」
「じゃあ、俺も同じで良いよ。他の物作るの大変でしょ?」
「エリック様優しいー。でも、大丈夫ですよ。ストレージにもある程度あるし。」
「マジ?じゃあ、カレーがあれば。あと何かサラダ。唐揚げは俺も食いたいな。」
「じゃあ、カツカレーにしますね。……で、何でヴィーは手を挙げてるの?」
「俺も食いたい。」
「え?嫌だ。」
即答してみる。
「ねーねー、確かあの時のジョアンちゃんだよね?ご飯作れるの?」
ノア様が聞いてくる。
「あ?何で、ノアがジョアンのこと知ってるんだ?」
「えー?内緒?あははは。」
「は?言えよ。おい。」
「俺も、何でジョーとノアが知り合いなのか聞きたいけど?」
ジーン兄様までがノアに威圧を出している。
「もおー、ジーン兄様、食堂で威圧出さない!ノア様とカズール様とは、王妃様主催のお茶会で一緒だったの!」
「あー、あの時か。」
ジーン兄様は納得したようだったが、ヴィーは
「は?じゃあカズールも知ってたのか?」
「ああ、知ってたけど?……俺もその聞いたことない料理食べてみたいんだけど?」
「あっ、はい、喜んで!」
「おい!ジョアン。何で俺がダメでカズールが良いんだよ!」
「うっ……じゃあ、ヴィーも良いよ。」
「俺は?」
「はい、ノア様も。」
「ありがとう。でも、ここでは様付けいらないよ。可愛いジョアンちゃんならなおさらね。」
パチッとウィンクをするノア先輩。
「はあ……じゃあノア先輩、カズール先輩で。」
「相変わらず、俺のこと何とも思わないんだねぇ〜。」
不貞腐れたようにノア先輩は呟き、ヴィーに小突かれている。
「えーっと、先輩達はどんな物が良いですか?」
「何でも良いよ。」
「俺も〜。」
「わかりました。じゃあ、ちょっとお待ち下さい。ベル、手伝ってもらって良い?」
「もちろん。」
食堂の厨房に行くと、まだ夕飯の準備前なのでおばちゃん達がお茶をしていた。
「おばちゃん、また厨房貸してくれる?」
「おや?ジョアンちゃん、ベルちゃん。良いよ。でも、あと1刻間ぐらいだけど良いかい?」
「うん、ありがとう。あっ、じゃあコレお茶のお供にどうぞ。」
ストレージから、焼き菓子を何種類か出す。
「あら、良いの?この前のも美味しかったし、何か申し訳ないね〜。」
「そうそう、この前教えて貰った料理、ウチの旦那に好評だったわ。また、教えてくれるかい?」
「もちろん。あっ、揚げ油使うね〜。」
「何でも使いなー。」
騎士寮に来て女子が少ないのもあって、食堂のおばちゃん達は私達に良くしてくれる。そして、私が料理が趣味だと話したらちょこちょこ厨房を貸してくれるようになり、時間がある時は料理教室を開いたりしている。
唐揚げを揚げていると、ベルが近くへやって来た。
「ねー、ジョアン。あの先輩のこと気になってる?」
「へっ?な、何言ってんの?」
「だって何かいつもと違うから。えっと、カーー」
「ベル!後にしよ!ここでは、誰に聞かれてるかわからないから。」
「あー確かに。じゃあ後で聞かせてもらうからね。」
「う、うん。」
咄嗟にジュリー叔母様達から貰った、バングルの防音スイッチを入れて正解だったわ。騎士寮での内緒話なんて、身体強化使われたら内緒でもなんでもなくなるもん。
*****
食堂の方では、ある程度ジーン兄様達への質問が終わったようで、皆んなで談笑しているようだった。
「お待たせしました〜。」
ストレージから、まずはジーン兄様とエリック様のリクエストのものを出す。
「ジョーのご飯、久しぶりだ。……んまい!!」
「やっぱり、カレー美味いな。」
続いて、ヴィー、ノア先輩、カズール先輩にはジーン兄様達のものより少なめのカツ丼とカツカレーを出した。
「どっちも食べたいかと思って、少なめに2つ用意しました。」
「サンキュー。どっちも食べたかったからラッキーだな。」
ヴィーは満面の笑みだ。ノア先輩とカズール先輩は、見たこともない料理を凝視していたが、ヴィーが食べ始めたのを見て恐る恐る食べ始めた。
「「うまっ!」」
どうやら気に入ってもらったようで、一言発した後は無言で食べていた。
ゴクッ……。
料理とジーン兄様達の食べっぷりを見ていた、クラスメイトの方から変な音が聞こえる。
まぁ、カレーの匂いはお腹空くよね。
「皆んなには唐揚げとフライドジャガトあるんだけど……夕飯も同じ物出るんだ。それでも良い?」
「「「「「「「「「「良い!」」」」」」」」」」
ソウヤ達は我先にと、唐揚げとフライドジャガトに手を伸ばす。
「ジョー、おかわり!同じので良いから。」
「ジョアンちゃん、俺も。次、カツ丼で良い?」
ジーン兄様とエリック様は、既に食べ終わっている。
「早っ!ジーン兄様もエリック様も、討伐団に戻ったら夕飯あるんじゃないの?」
「あー、大丈夫、大丈夫。さっき、夕飯いらないって連絡してあるし。それに明日、休みだから王都の家に帰るから。エリックと。」
「そうなんだ。はい……どうぞ。あっ、じゃあアリちゃんにお土産持って行って。」
ストレージからおかわりを出しながら、お願いをする。
「アリちゃん……。あー、エイブの所のアリスか。」
「うん。スノーボールクッキーあるから。」
「あー、わかった。」
その後ジーン兄様とエリック様は、追加でオムライスとデザートにシャーベットを食べて、アリスちゃんへのお土産を持って帰って行った。ヴィーも、ノア先輩、カズール先輩とデザートまで食べて、食堂を出ていった。
去り際に、カズール先輩から「美味しかった。ありがとう。」と言ってもらえたのは、最高のご褒美だ。
明日は諸事情により、お休みさせて頂きます。
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