30.前世の記憶持ち
楽しく書いていたら、あっという間に30話でした。
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ーーアフターディナーティータイム。
リビングに移動する。
覚悟を決めたものの、やっぱり正直に話すのは勇気がいる。ソファに座れず、扉の前でモジモジしていると。
「どうした?ジョー。一緒行こう」
心配したジーン兄様が、側に来て手を握ってくれる。それだけで安心する。
ジーン兄様に連れられて、お兄様たちの間に座る。
2人とも近い。ここだけ、ぎゅうぎゅうしてる。
「ジョーどうしたの?さっきまで元気だったのに」
ノエル兄様も心配そうに話しかける。
『自分に都合が悪いことは早めに報告しろ!そうじゃないと、後々問題になった時、お前を助けることが出来ない』と、勤めていた頃の上司から散々言われた。
今がその状況だ。
頑張れ、私!!
膝の上で両手を握りしめ
「あの、話さないといけないことがあって…。驚かないで聞いてもらえますか?」
4人がうなずく。
「……私、洗礼式で倒れた時に……前世の記憶を思い出したのです。前世は、こことは違う世界でした。魔法はないけど、こちらで言う魔道具が色々と発展していて不便なく過ごしていました。なかなか話せなかったのは、みんなに気味悪がられると思って……」
話しながら、静かに涙が流れ落ちる。
そっとノエル兄様が拭いてくれる。ジーン兄様は背中を優しく撫でてくれる。
「そうか。それで、私達が知らないことを、色々知っていたんだね。おいで、ジョアン」
お父様とお母様の間に座る。
お母様が優しく抱きしめる。お父様も頭を撫でてくれる。
「ねぇ、ジョアン。前も話したけど、どんなジョアンでも、私の愛する娘よ」
「うぅ……ありがとうございますぅ。でも、気味悪くないですか?」
「ジョアンは知らないんだな。この世界には、前世持ちの人間は、今までもいたんだよ」
「「「えっ!!!」」」
お兄様たちも知らなかったようだ。
「魔道具師でも有名な人が、前世の記憶で色々と便利な魔道具を作ったり、武官として国を守っていた人が、色々な戦いで戦果を上げたり。だから気味悪いことはないし、何だったら前世の知識で周りから敬われる人なんだよ。王宮に呼ばれるぐらいにね」
「えっ?王宮?」
王宮って城よね?
「父上、王宮にジョーを渡したくはありません!」
「兄上の言う通りです。なんでジョーを王宮なんかに」
ありがとう、兄様たち。
「もちろん、ジョアンの気持ちを尊重するよ。ジョアンはどうしていきたい?」
「私は……王宮に行きたくありません。私が持ってる知識には、立派な魔道具を作る技術も武力もありません。前世では、販売業をしていて、家庭を持っていて、旅行と食べること、料理することが好きだった平凡な人間でした。だから、王宮に行っても何の役にもたちません」
「そうか、わかった。前世の記憶持ちだから、珍しい料理を知っていたんだね。じゃあ、これからも私たちに美味しい料理を作ってくれるかい?」
「っ!はい、お父様。ありがとうございます」
「「っしゃー!!」」
お兄様たちがハイタッチをしている。
「ジョアン……もっと美容に関して知ってること、お母様に教えてくれるかしら?」
「うふふふ。私の知ってることなら、もちろん」
良かった、みんなに受け入れて貰えたわ。
こんなことなら、早く打ち明ければ良かったわ。
それにしても、私以外にも前世の記憶持ちがいたなんて。もしかして、醤油や味噌、お米もあったりするのかしら?そしたら、もっと料理の幅が広がるわぁ。
でも、元82才の高齢者って言うのは、言い難いわねぇ。
そこは、もう少し内緒にしておきましょうかね。
これまで読んで頂きましてありがとうございます。
今後も、マイペースですけど頑張って更新していきます。٩( 'ω' )و




