194.昇格試験
学院の入学まであと1ヶ月。
ジョアンは残り少ないランペイル領での生活を、ギルドの依頼に費やした。街依頼では、買い物代行や宿の掃除、時にはドブ清掃もした。配達に至っては、パール急便と称してパールに跨りストレージを駆使して多い時には、日に30件の配達をこなした。
領民は、最初の方こそ、ジョアン様にやらせるのは申し訳ないと言っていたが、ジョアンが冒険者のただのジョアンだと言い張り色々な依頼をこなしていったので、次第に様付けではなくちゃん付けで呼ばれ、領民のみんなから重宝がられた。
そして頑張りまくった結果、今日、登録から2ヶ月という異例の速さで昇格試験を受けることになった。
冒険者ギルドのスイングドアを開けると、チラホラと顔馴染みになった冒険者たちがいた。
「おっ、お嬢。今日だっけ?昇格試験。つか、はえーよ。まだ登録して2ヶ月だろ?」
「確かジーンも早かったけどさー。それ以上にジョアンちゃんは早いよー。」
「お前、すぐ追いつかれんじゃね?あっははは。」
「そう言うお前は、すぐ抜かされるだろうがな。がっははは」
「お前ら、うるせー。ともかく頑張れよ。」
「まあー、お嬢なら何の心配もないけどな。」
「あとで、観に行くからな。」
「あっ、俺も俺も。」
「はーい。頑張りまーす。」
「リリーさん、こんにちは〜。」
「いらっしゃい、ジョアンちゃん。もう、頑張り過ぎよ。まだ登録して2ヶ月なのに、昇格試験なんて。」
「えへへ、超頑張ったもん。入学前にDランカーになりたいから。」
「うふふ、有言実行ね。じゃあ、早速、実技試験場に行きましょうか。きっと、試験官と立会人が首を長くして待ってるわよ。」
*****
実技試験場に入ると、試験官はBランカーのギースさん、立会人としてギルマス、Bランカーでモヒカンのブライアンさん、Aランカーで水色のワンレンセミロングのニックさん。
「お嬢ー!頑張れよー!」
「ジョアンちゃーん、ギースなんかやっちまえー!」
「ジョアン!行けー!」
「ジョアンちゃーん!ファイト〜!」
「お嬢様〜、一発で沈めろー!」
周りを見ると試験場を囲むギャラリーには、ジャッカルさん、コダックさん、ルー、デニス、リリーさん、そして、いつの間に来たのかお父様、お兄様たち、ナンシー、サラ、ザックが。
確実に最後の声援は、ナンシーね……。
パールが、いつも通りでねと言い私の側を離れる。
「来たな。ったく、ホント早すぎるぞ。……まあ、良い。お嬢、準備はいいか?」
「はい!」
「では、始め!!」
ギースが、片手剣を構えると刃がブルっと震え、柄のところから紅く染まっていく。
あっ、ギースさん【火】属性なんだ。ん〜どうしよっかな?
脚が長いギースが2歩で近寄り、ジョアンを斬りつけてくる。後方にジャンプしてかわす。そのタイミングで片手剣にスキルで水をかける。ジューという音と共に水蒸気が出る。そして、水が非常に温度の高い物質と接触することにより気化されて発生する水蒸気爆発が起こり、ボンッという爆発音。それにギースが一瞬怯んだ隙にジョアンはギースに駆け寄り、片手剣を持つ右手に踵落としをし再び距離を取る。
「くっ!!」
その衝撃によりギースは片手剣を落としてしまう。
すぐに片手剣を拾おうとするところへ、ジョアンがクナイを投げ阻止する。
ギースは、クソッと言うと腰から短剣を取り出してジョアンに向かって走ってくる。切り掛かってきたところを片手剣でいなすと、ギースはジョアンの腹を蹴る。体重の差もあり、ジョアンは5m程飛ばされる。身体を捻り、着地をする。
間髪入れずギースに向かって走り、跳び上がってギースの頭を両脚で挟み込み首を軸に旋回してギースを投げ飛ばした。そして倒れたギースに素早くクナイを何本か投げ、床と服を繋ぎ留める。前世の絵本、ガリバーのようにギースは動けない。
プロレスの試合を毎週見ていて、やってみたかったヘッドシザーズ・ホイップが出来たわ。ぶっつけ本番でちょっとビビったけど……。
「止め!!」
ギルマスから声が掛かる。そして他の立会人に問いかける。
「今の試合、挑戦者勝利でいーか?」
「異議なし!」
「異議なし!!」
「今の試合、不正はねーな?」
「不正なし!」
「もちろん不正なし!!」
「よし!じゃあ俺はランクDだ。」
「Bランカーに勝利したんだぜ?ランクCだろう?」
「俺はランクDだな。」
「よし!この度の挑戦者をランクDと認定する。」
「やったーー!」
「「「「「うおぉーーーーー!!!」」」」」
「「すげーーーーー!!」」
「「「「「おめでとうーーー!!!」」」」」
気付くとギャラリーは、先程よりも人が増えていた。
「うわっ、凄い人だ。」
「なんだ、お嬢気付いてなかったのか?」
「ううん、人が増えたのは気付いていたけど、ここまでの人がいると思わなかった……。」
「そりゃあ、気になるだろ。たった2ヶ月で昇格試験うける奴なんてそうそういねーんだし、しかもお嬢だからな。」
「そうそう、俺も立会人じゃなかったら。ギャラリーで観るつもりだったからな。」
ギルマスとニックさんと話していると、ブライアンさんにクナイを取ってもらい動けるようになったギースさんがやって来た。
「それだけ、ジョアンは凄いんだぞ。学院に行っても、力をひけらかすなよ。変な輩に絡まれるぞ。」
「そうそう。言っておくけど、領主様の家自体がおかしいからね?ジョアンちゃんの強さなんて、一般的にはおかしいレベルだから。」
「ブライアンさん、どういうこと?」
「普通、5才から鍛錬なんてしないから。特に貴族令嬢が。しかも領主家だけじゃなく使用人も含めて腕利きばかりだから、マヒしてるだけだよ。」
「たぶん、城の騎士団集めてもランペイル家には勝てねーだろうな。」
「マジか……。」
「「「マジだ!」」」
我が家が最恐だった……。
うん、なんとなく気付いていたよ。
鍛錬の内容とか、お兄様たちが学院で武術の授業免除とか……。
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