176.ザーラからのオマケ
「サラちゃんはさ〜、彼氏とかいるの?」
そう言いながら、シャクレ男のジャクールがサラの手を取る。
「いえ、いませんよ。」
サラはそっと手を外しながらいう。
「マジで!?こんなに可愛いのに?ランペイルの人間の目、腐ってんじゃないか?」
手がダメならとサラの肩を取ろうとしたところ……ガタッ。と大きな音がしたので、音がした方を見るとベンが立ち上がっていた。ベンの両脇に座っているアーサーとマイクが
「まあまあ、落ち着けって。大丈夫、大丈夫。後でな。」
「あっははは、お前、焦りすぎだから。」
と、ベンに声をかけていた。
ん?ベン、どうしたのかしら?
酔っ払ったのかな?
「じゃあさ、サラちゃんの好きなタイプってどんな?」
「そうですね〜。優しくて、面白くて、私より強い人ですかねぇ。ここのギルドのSランカーぐらい。」
「じゃあ、俺ピッタリじゃない?もうすぐ、Sランカーになるし。」
ん?シャクレも酔ってるのか?
サラはランペイルギルドのSって言ってるのに。王都ギルドのランクBがなんでもうすぐSなの?それに、王都のSなんてここのAでしょうよ。
あんたこそ、耳腐ってるでしょ。
「サラちゃん、王都に一緒に行かない?案内するよ〜。」
「でも、仕事ありますから……。」
「えー、こんな田舎より王都の方が稼げるって。だって仕事の給料が安いから冒険者やってんでしょー?」
「いえ、違いますよ。冒険者はストレス発散というか、運動のためです。」
「ストレス発散?ふ〜ん、ストレス溜まってんだ。そういうお誘いも良いね〜。」
おい、シャクレ!ニヤニヤすんな!!
サラのストレス発散は、普段暴れることないからだ!!ウチの戦闘メイドをいやらしい目で見んな!!
「ジャクール、お前いい加減にしろよ。飲み過ぎだぞ!!」
あまり会話にも参加せず酒を飲んでいたタヌキ男のキヌタが、ドスのきいた声で言う。
「わ、悪かったよ、キヌタ。」
頭を掻きながら、ジャクールがサラに寄せていた身体を離す。
「ごめんねー。コイツ、酔っ払うとしつこいんだよ。」
さっきとは打って変わって、ニコニコと笑顔で謝ってくる。
「そろそろあたしたち帰らないと。ね、サラ。」
「う、うん。そうね。」
「じゃあ、外も暗いし送って行くよー。」
そう言って、キヌタがそそくさと店員を呼び会計をする。周りを見ると、いつの間にか半分以上席が空いていた。
「会計も終わったし、行こうか。」
「はーい。ごちそうさまでーす。」
外に出ると7刻すぎと言うこともあり、辺りは暗くなっている。
「家はどっちの方?」
「あっちー。」
と、お屋敷と逆の方を指差す。差した方にはマーケットや店舗が並んでおり、その先には平民の住む住宅街がある。もちろん、そちらには薄暗い裏道や前の被害者ーー幸いにも皆んな、未遂で終わっているがーーの証言で、連れ込まれた空き家もある。
6人で歩いていると、声が掛かる。
「そこのお嬢ちゃん、お花どう?お母さんにお土産喜ぶよー。」
花屋のおばあちゃん、そう、トム爺の奥さんのザーラだ。
「あっ、あたし買うー。……じゃあ、そこのミニブーケにしようかな?」
「まいどありー。」
ブーケと共に、何かを渡される。周りに気づかれないようにソッと見ると、可愛く包装された飴だった。
「優しいお嬢ちゃんオマケだよ。落としちゃダメだよ。なんてたってウチの旦那特製のピッカーって眩しいぐらいの美味しさだからね。」
そう言ってウインクするザーラ。
「ありがとう。後で食べるね。」
「おまたせー。」
「お土産買えて良かったねー。じゃあ行こうか。」
しばらく歩くとシャルが
「あそこの住宅街だとさ〜コッチに近道あるんだよ〜。」
「へえ〜そうなの?王都の人なのに知ってるんだねー。」
「俺〜、知らない街歩き回って抜け道探すの好きなんだ〜。」
シャルの誘導で裏道に入って行く、この先には例の空き家がある。
「ん?何か聞こえな〜い?」
シャルが言うので、みんな立ち止まって耳を澄ますが何も聞こえない。
「何も聞こえないよ?」
「いやいや、聞こえたって〜。あそこの空き家かな?ちょっと、見てみよ〜ぜ。」
「えー、怖いよー。」
とサラにしがみつき、ザーラから貰った飴を1つ渡す。
「大丈夫よ。私が守るから。」
「俺たちもいるから、大丈夫、大丈夫。」
そう言ってシャルは先頭を切って空き家へ入って行く。
しばらくすると中から
「うわーっ!」
というシャルの叫び声が聞こえた。
「「えっ?」」「「「シャル!?」」」
「よし!シャルを助けに行こう。ジョアンちゃんとサラちゃんも手伝って。」
そうジャクールが言って、おう!という返事をしたベアードとキヌタに背中を押されて中に入る。真っ暗な空き家の中に入ると、後ろからハンカチらしき物で口と鼻を覆われた。
これはヤバいと思い、薄れる意識の中でザーラの飴を出して投げようと思うも力が入らない。しょうがなく足元に落としてふらつきながらも飴を踏む。すると眩ゆい光が空き家を明るく照らす。暗闇の中にいた犯人グループは、その光で目潰し状態になり
「うわっ、眩しい……。」
「このガキ、何しやがった!?」
「クッソー、全く見えねぇー!」
「うぅ……目が〜目が〜。」
犯人たちがジョアン達を離したことで、サラとジョアンが倒れ込む。スローモーションのように身体が倒れながら、これは痛いよなぁと思っているとモフモフの弾力あるクッションにダイブした……ん?違うな。パールだ。
ーーありがとう、パール。サラは?
ーー大丈夫、サラは演技だから意識あるよ。それに、今ナンシーが扉を開けたからベン達も来たよ。
ーーそっか、良かった……ごめん……もう……無理……。
パールと念話をして、私は意識を失った。
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