幕間:エイブの披露宴
昨日に引き続き、幕間の話です。
ランペイル領に戻って来て、自室で着替え厨房へと転移する。
王都のお屋敷からも応援が来ているとはいえ、手が足りないのは間違いない。
シュン。「お待たせ〜。」
「「「「「「うわっ。」」」」」」
「ジョアンちゃん!厨房への転移はダメだって言ったっすよね?」
「はい……ごめんなさい。……よし、作ろっか。」
「切り替え早っ!!」
「バリーさん、それがジョアンちゃんです。」
ちょっと、アニーさんや。胸を張って言う事ではないし……。
ディスられてるわよね?
今回の披露宴は、立食形式にした。その方が気兼ねなく楽しめるし、何より給仕が楽。コース料理だと、料理人のエイブさんと侍女のスージーさんが落ち着いて食べられないと思ったからだ。
「えーっと、メインのローストビーフとスープのヴィシソワーズは既に作ってあるし、あとはエビと蛤のアヒージョと梅しそフライかな?」
「パンは、もう少しで焼き上がりまーす。」
「お嬢様、そのアヒージョ?と梅しそフライ?って、どんなのですか?」
「あー、それ俺も知らないっすよ。」
「えっと、アヒージョはオイル煮かな?梅しそは……よっと、この梅干しを潰して、しそと一緒に豚肉に入れてパン粉つけて揚げるの。」
「梅干し?なんすかそれ?食えるんすか?」
「食べれるに決まってるでしょ。……はい。」
ベンとデルコさんに渡す。
「「ん?すーーーっぱ!!み、水、水……。」」
「そんなにか?」
「あっ、ケンさんとバリーさんも食べてみる?」
「じゃあ……おっ、これはなかなか、酸っぱいな。」
「ん、確かに。でも、俺は好きかも。」
「ジョアンちゃん、これを豚肉に入れるんすよね?大丈夫っすか?」
「大丈夫!」
ケンさん、デルコさんがアヒージョ。バリーさん、ベンが梅しそフライ、ケリーさん、アニーがケーキの担当になった。
「ケンさん、デルコさん、エビを殻剥いて、ベーコンを拍子切り、しめじをバラして、コトメット(ミニトマト)のヘタ取っておいて。
バリーさん、ベンは豚肉に塩胡椒して、梅干しから種取って包丁で叩いてペースト状にしておいて。」
「「「「了解!」」」」
下拵えが終わったところで、
「アヒージョは、オリーブオイルにガーニックの微塵切りと……このアンチョビを微塵切りしたものを入れて中火で香りが出てきたら、具材を入れて。」
「その、アンチョビって何ですか?」
「えっと、イワシを発酵させたもの。」
「……どこで手に入れたんです?」
「これ?ファンタズモのマーケット。」
「ですよね?初めてみましたもん。」
「へぇー、そうなんだ。」
「豚肉にしそと梅のペーストをおいて、こう……クルクルと巻いてあとは衣を付けて揚げるだけ。あっ、ついでにチーズ巻きも作ろっか。」
「それは間違いなく美味そうっす!」
「「あははは。」」
ベンは梅干しが口に合わなかったらしく、チーズ巻きと聞いて凄い喜んでいるのでケンさんとともに笑った。
ケーキは3段とかのウエディングケーキは難しいので、1段のスクエアタイプ。ケーキ自体はイチベリーとクリームをサンドして表面もクリームでコーティング。イチベリーとプルーベリーで飾りつける。クッキープレートにアイシングで文字をケリーさんに書いてもらい、その間にイチベリーをハートの形にデザインカットしていると視線を感じる。顔を上げると全員が私の手元を見ている。
「うわっ!な、何?」
「あっ、悪い。凄い器用な事してるなぁーと思って。」
「えへへ、可愛いでしょ。あとね、こんなのもあるの……じゃじゃーん。」
ストレージから星と鳩の型抜きクッキーを出す。
「この星の黄色は何を塗ってるんです?」
「アイシングクリームに、リモンジャム入れたのよ。」
「「「「「「なるほど〜。」」」」」」
料理が完成したところで、サラが呼びに来る。
「ジョアン様、そろそろ会場へ。」
「あっ、はーい。じゃあ後はお願いね〜。」
「「「「「「はい!」」」」」」
会場となるパーティルームに行くと、部屋の片隅で参列者からバーテンダーとなったアーサーがいる。そして、その近くにはアーサーに話しかけようとチラチラとタイミングを伺っているセーラさんが。
「セーラさん。楽しんでます?」
「ひゃい!あっ、ジョアン様。なんか私だけ場違いな気がして。」
「そんな事ないよ。……でも、知り合い少ないから不安だよね?ちょっと待っててね。マイク〜。」
今日は庭師ではなく、従僕として給仕をしていたマイクを呼ぶ。
「はいはい、ジョアンちゃん。どうした?」
「あのね、そろそろアーサーと交代してもらっていい?ほら、腕上がらなくなってる。」
「あー、ホントだ。帰ってきてから、ずっとカクテル作ってるもんな。了解。」
そう言って、アーサーと交代してバーテンダーをやってくれる。
「アーサー、お疲れ様。……痛いの痛いの飛んでけ〜。」
「ジョアンちゃん、ありがとう。いや〜、さすがに腕ヤバかったからマイクがきて助かったよ。じゃあ、俺は一旦厨房ーー」
「あっ、厨房は大丈夫だから、アーサーはコッチ。」
アーサーの袖を引っ張ってセーラさんの所へ戻る。
「「えっ!?」」
「さっき式でも会ってるし、ここでセーラさんは知り合い少ないからアーサーが話相手になって。」
「あ、あの…ジョアン様?でも……。」
「俺が話相手でも良いんですか?平民だし、何にも面白い話ないですよ?」
「あ、あの……私も平民なので……。」
「じゃ、お願いねぇー。」
ジョアンが立ち去った後、2人は最初はぎこちなかったが次第に楽しそうに話すようになった。
披露宴は、参列者たちに好評だった。食べたことのない料理、飲んだことのないカクテル、皆んな驚きながらも何度も料理やカクテルを取りに行き堪能していた。
主役の2人も楽しそうに料理を楽しみ、参列者との会話を楽しんでいた。
「2人とも、改めて結婚おめでとう。」
「お嬢、ありがとう。スージーとのこともだがペガサスのことや料理のこと。」
「ジョアン様、本当にありがとうございます。感謝してもしきれないです。」
「今日の料理はね、前世で縁起の良いものを選んだの。豚肉の梅しそフライの梅はね、梅干しのしわしわのその見た目からしわが寄るまで元気に過ごせますようにという長寿祈願の縁起物なの。アヒージョのエビの尻尾が曲がっている姿を老人に見立て、腰が曲がるまで末永く幸せにという願い。蛤の貝殻は、最初から対になっているもの以外は合うことがないんだって。
だから夫婦円満の縁起物なの。決まった相手とじゃないとちゃんと合わないって、夫婦になる2人にぴったりでしょ?」
「「……。」」
スージーさんの目から涙が溢れる。
「えっ!?ごめん、何か嫌だった?」
「違う、違うんです。そこまで考えてくれて……本当に嬉しくて……。私……幸せです。」
「スージー……。お嬢、ありがとう。」
「ううん。エイブさん、スージーさんを幸せにしなかったら私が許さないからね!」
「お、おう。大丈夫だ。絶対、幸せにする!」
その後、披露宴は夜遅くまで続いた。
私は、式の参列と料理で疲れていてそうそうに自室に戻って、夢の中へ旅立った。
エイブさん、スージーさん、お幸せに〜。
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