149.ハイキング
王都から帰って、エイブさんは早速お父様に報告した。まだ、すぐに結婚とはならないがエイブさんは31才、スージーさんは26才……早くて16才、一般的でも23才前後で結婚するらしいこの世界では、2人は遅い方だ。お互いに貴族なら問題は少なかったが、エイブさんが平民、スージーさんが男爵令嬢ということもあり、簡単に、はい結婚とは言えない状況だった。
「お父様、普通こういう場合はどうするんですか?」
「ん?あー、身分差のある結婚かい?まぁ〜、例えば平民の方がどこかに養子に入るとか、極端な例だと貴族になれるような功績を……あっ、それだ。」
エイブさんが執務室を出て行ってから、ふとした疑問をお父様に聞いたら、私に説明しながら何かを閃いたらしい。
「グレイ、すぐにアレックスに連絡を。」
「かしこまりました。」
そこから、お父様の行動は早かった。
陛下が魔物討伐団に所属している時に、一度遠征でエイブさんに危ないところを助けてもらったことがあったらしく、それを功績として騎士爵を賜った。エイブさんは、初め断っていたが皆んなの勧めもあり拝受することにした。
そして、スージーさんのご両親は、以前からスージーさんがエイブさんのことを慕っていることを理由にどんな良縁も断っていて、結婚を諦めていたらしい。だからエイブさんが挨拶に行った時は、男爵家総出で盛大なお出迎えをしたそうだ。スージーさんが次女というのと拗らせていたのもあり、相手が平民でもしょうがないと諦めていたのに、スージーさんの為に騎士爵まで取ったエイブさんにご両親はいたく感動したらしい。
結婚式は、来年の春の季に行う予定となった。結婚後、スージーさんは侍女を辞めるか悩んでいたが、エイブさんの勧めもあり通いで続けることになった。それには王妃様も他の侍女たちも喜んで、エイブさんの株は上がった。そしてエイブさんは春の季から、ケンさんと交代で王都の屋敷に異動となる。
新居は、王都の屋敷の一角に建てることになった。エイブさんもスージーさんも断っていたが、お祖父様やお祖母様からも説得されようやく了承した。
皆んながバタバタしている時に、新しい料理のカレーを作るのはなんとなく申し訳ないなと思い作ることを延期にしていた。
だから、私はとーーっても暇だった。
トントントン…。「ジーン兄様〜、いますか〜?」
「いるよー。」
ガチャ…。「何してるの?」
「ん?今、学院の課題終わったとこだけど、どうした?」
雷の日のため、いつも通りに帰宅していたジーンの部屋に来てみた。
「暇なんです。遊んで下さい。」
「あー、エイブさんのことで皆んなバタバタしてるからな。よし、じゃあスノーに乗ってどっか行くか。」
「行くー!」
私とジーン兄様はスノーちゃんに乗って、クリムゾンウッズの手前のパンパスの丘までやって来た。
パンパスの丘は、秋の季にはススキでいっぱいになる。
スノーちゃんから下りて、敷物を敷きストレージからお茶とクッキーを出す。スノーちゃんのキャロジンも忘れずに。
「ここなら、魔獣が出てきてもホーンラビットやコボルトぐらいだから俺でも倒せるからな。」
「ホーンラビットは角のあるウサギ系魔獣で、コボルトは小型犬のような魔獣?」
「正解!ちゃんと本読んでるんだな。」
「もちろん!兄様たちみたいに学院に入ったら、冒険者登録するんだもん。すぐ追いつくよ。」
「あははは、頑張れ頑張れ。今、俺はFだからな。ジョーが登録するまでにはランクDかもな。」
「くーーっ。負けない!登録の時にランクFになるもん!」
「あははは、無理無理ー。……ん?何かいる。」
「うん、小さいかな?」
「そうだな……。(もう気配で大きさわかるまでなのか!?マジで追い抜かされる?)」
スノーちゃんも辺りをキョロキョロする。
ガサッと音がする方にジーン兄様が走って行き、キューッと鳴き声がなくなるとジーン兄様がホーンラビットを持って戻って来た。
「わーっ、兄様すごいね。」
「まあ、ホーンラビットぐらいチョロいぜ。ジョー、捕まえたら血抜きしないとだぞ。」
そう言うと、ジーン兄様は自分の収納袋から皮の袋を出す。そしてホーンラビットを中に入れ後ろ足を2本出した状態で口を固く閉める。
「こうしておけば、血が抜けるし血が外に出ないから、他の魔獣も寄って来ないんだ。」
「へぇー、そうやって血抜きするんだ。」
その後、お茶を飲みながらジーン兄様に冒険者ギルドのことを聞いたり、今までどんな依頼を受けたかなど聞いたりして、そろそろ帰るとなった時遠くの方からクゥーーンという小さな鳴き声が聞こえた気がした。
「ジーン兄様、何か聞こえませんか?」
「ん?気のせいじゃね?」
「気のせいかな?スノーちゃんは聞こえた?」
『小さな鳴き声がするね。なんか助けて欲しいみたいな?』
すると、またクゥーーンと今度は先程よりハッキリと聞こえた。
「うん、今のは聞こえた。コボルトの子供とかじゃねーの?」
「でも、もしかしたら普通の仔犬かも知れないし……。」
「わかったよ、ちょっとだけ探していなかったら帰るからな。
「ありがとう、ジーン兄様。スノーちゃん、どっちの方角かわかる?」
『えーっと、森の方だよ。』
「げっ!?マジか。ジョー、さすがに森の奥までは行けないぞ。探すのは手前までだからな。」
「うん、わかった。」
そりゃあ、私だってジーン兄様と2人だけでクリムゾンウッズには入りたくないわよ。
この前の時みたいなことになりたくないもの……。
私とジーン兄様は、スノーちゃんに乗りクリムゾンウッズの方へ走り出した。
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