145.なぞの呪文
米の炊き方は、呪文を唱えながら……。
「じゃあ、そろそろお米炊こう。」
米を30分浸水の後、コンロに鍋を置き弱火にする。
「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火をひいて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣いてもふた取るな。」
「「「「えっ!?」」」」
皆んなが、キョトンとした顔をする。
ベンが
「なんすかそれ?魔術使うの?」
「あはは、やっぱりそう思うよね?私も初めて聞いた時、そう思ったもん。お米を美味しく炊く時の手順なの。『はじめちょろちょろ中ぱっぱ』は、はじめは弱火で中頃は火の粉がぱっぱって飛び散るくらいの火力、強火にして沸騰させる。『じゅうじゅう吹いたら火をひいて』は、沸騰して吹きこぼれてきたら、吹きこぼれない程度に火を弱める。『ひと握りのワラ燃やし』は、鍋の余分な水分を加熱して飛ばすの。最後に『赤子泣いてもふた取るな』は、火を止めて蒸らすんだけど、赤ちゃんがお腹空いたって泣いても、どんなことがあってもふたはとったらダメですよってこと。」
「「「「へぇ〜。」」」」
土鍋以外で炊いたの初めてだから、大丈夫かしら?
今度、何処かで土鍋作ってもらおうかしらねぇ〜。
だいたい30分ぐらいで炊き上がり、ドキドキしながら蓋を取ると、ホワ〜ッと炊き立てのいい匂い。
木のヘラで下から混ぜると、ちゃんとおこげも出来てる。
「あつっあつっ……んーーまーーーい!!ご飯だ、ご飯だ。」
「あっ、俺も……あーっつ……うっま。」
私とベンに続いて、エイブさんもアーサーもアニーも熱さに耐えながら食べる。
「噛めば噛むほど、甘みが出るな。」
「はい、最初味ないと思っていたけど美味いです。」
「これ、さっきのスープに合いそうですね。」
「よし!熱いうちにオニギリを作ろう。」
「お嬢、オニギリってなんだ?」
「このご飯をーーー」
「あのっ、お米じゃないんですか?」
「んー、お米を炊くとご飯になるんだよね?何でかは知らないけど。」
「でも、朝食やランチとかもご飯って言いますよね?」
「うん、何でだろね?あっ、アーサーそんなことよりオニギリ、オニギリ。」
「で、オニギリってなんなんだ?」
「このご飯を手で握るの。見てて。まず、手につかないように手を水で濡らして、手にご飯を……あっつ、あーっつ。」
「そりゃ、そーだろ。お嬢、大丈夫か?」
「う、うん、でも……あっつ……握る。最後に塩をつけて海苔つけて……はい、塩にぎり。どーぞ、エイブさん。」
「お、おう。……美味い!さっき食べたより、塩味があって米の美味さ感じやすいな。」
「でしょ。じゃ、皆んなで握るよ。」
5人で熱さと戦い、大量の塩にぎりが完成しストレージにしまう。
ご飯があると、色んな料理出来るわねぇ〜。
寿司、カレーライス、ハヤシライス、パエリア、親子丼、カツ丼……。やっぱり、お米はなくてはならない物だわ。今だと……カレー食べたいわねぇ〜。
スパイスって何処で売ってるのかしら?
「ねぇ〜エイブさん。スパイス売ってる所って何処かな?」
「スパイスって、胡椒とかだろ?色んな種類扱ってんのは、王都の商店だな。」
「そっか、王都かー。」
「なんだ、何か欲しいのか?何作るんだ?」
「えっとね、カレーライス。カレーってスパイスで味付けたとろみのあるスープをライス、ご飯の事なんだけどそこにかけて食べるの。前世では、老若男女に人気の食べ物だったんだー。」
「まあ……旦那に聞いてみて、許可がおりたら買いに行くか?」
「えっ?いいの?」
「俺がついて行くのは構わねーが、まずは旦那次第だな。」
「うん。じゃあ、聞いてくるーー!!」シュン…。
「転移した……よっぽど欲しいんすね。スパイス。」
「いやベン、スパイスってよりはカレーってのが食べたいんじゃねーか?」
「お嬢は、食に貪欲だな。誰よりも料理人だよ。」
「ジョアンちゃんですからね〜。」
「「「間違いない。」」」
料理人達がそんな話をしている頃、執務室に転移してカレーライスについてアツくプレゼンをし見事に王都に行くことを許可貰った。そして厨房に戻り、エイブさんと相談した結果3日後の雷の日(金曜日)に行くことになった。
雷の日だと、お兄様達が帰って来る日だしちょうど良かったわ。楽しみだわ〜。
王都は、登城した以来行ってないしスパイス屋さん以外にも何かいい物あったら良いわねえ〜。
その日の夜、さすがにお兄様たちがいない時に芋煮会は出来ないと言う事で、通常通りダイニングで食べることになったが、芋煮と塩にぎりは家族にも使用人にも大好評だった。




