119.人たらし
セバスチャンさんとロッテンマイヤーさんが、カートを押して戻って来た。
あっ、そろそろ寝酒ね……。じゃあ、ツマミ出しちゃいますかねぇ。
「そう言えば、昨日、乾物屋さんでスルメと餅を見つけたんです。」
「スルメと餅と言うのは、前に話していた物よね?」
「ええ、そうです。コレなんですけど。」
ストレージからスルメと餅を取り出す。
「スルメとは、クラーケンの干物か?して、この餅とは何じゃ?」
「餅は、米を蒸してこねた物です。」
まぁ、正確には餅米だけれどねぇ〜。
「確か、焼いて食べるのよね?」
「はい。焼いた物がこれです。」
○分間クッキングのように、焼き上がった物をストレージから取り出す。
「わっははは、準備がいいのぉ。」
「スルメはマヨネーズ七味唐辛子を付けて食べて下さい。餅はセウユを付けた磯部焼きにしました。」
「あら?餅の黒い紙は何かしら?」
「あっ、海苔と言って海藻を乾燥させた物です。そのまま食べて下さい。」
ちなみに七味と海苔は、さっちゃんの店を出る時に偶然見つけて即購入した物。
「おぉー、このスルメは噛めば噛むほど味が出るのぉ。これは酒が欲しくなるわい。セバス、何かーー」
「どうぞ。お祖父様。」
「ん?これは水じゃろ?ワシは酒がいいぞ。」
「いいえ、水ではありません。東の国のお酒で清酒という物です。」
「なんと、このような透明な酒があるのか。どれ……美味い!呑んだ後に鼻にスーッとふくよかな香り、それに角のないまろやかな口当たり…。スルメにも合うな。」
ゴクリッ………バチッ……。
「うっ。」
うっわ、セバスチャンさんが生唾飲み込んだら、ロッテンマイヤーさんの電撃攻撃……。そして、そのロッテンマイヤーさんは、私何もしてませんけど的な感じでキョトンとして首を傾げてる…。可愛らしいけど、電撃攻撃……まるでピ○チュウね。
「えっと、その、ロッテンマイヤーさんもセバスチャンさんも良かったらこちらに来て座って下さい。ね?お祖父様、お祖母様いいですよね?」
「お、おう。いつもよく働いてくれてるからな。2人ともこちらに来て、たまには一緒にどうじゃ。」
「ふふふっ。そうね、たまには良いんじゃないかしら。」
「「失礼致します。」」
「ささっ、どうぞどうぞ。」
清酒を2人に勧める。
「では……おぉ、これは… 舌の上をまろやかに滑っていく、実に舌触りのよい酒ですね。そして、このほのかな香りがとても良いです。」
セバスチャンさん…素晴らしい解説です。ソムリエのようです。そして、間違いなくいける口ですね。
「とても呑みやすいお酒ですね。奥様好みでは?」
「ええ、確かに呑みやすくて飲み過ぎそうね。」
「ところで、この清酒はどうしたんじゃ?」
「あっ、さっちゃんから、乾物屋さんのさっちゃんから購入しました。」
「あぁ、あの乾物屋ですか。確か、タイキの祖母でしたかね?」
やっぱり、知っていたのね…。
「あら?でも、映像には清酒を購入するところ映ってなかったわよね?」
「はい、帰る前に豚汁…オーク汁をあげたんです。その時に、東の国の物が他にあったら教えて下さいってお願いしたら、奥から出てきました。」
「「「「……。」」」」
どうして、みんな黙るのかしら?
「わっはははは。いや〜ジョアンはさすがじゃな。」
「えっ?何が?」
「お嬢様。まず、あの乾物屋は街の人間でも中々寄り付きません。店構えもそうですが、店主があの様な方なので入りにくいのです。」
「ああ〜。なるほどです。」
セバスチャンさんの説明は、確かに納得できるわ。
「にも関わらず、お嬢様は商品を値切って購入した上に、奥に置いておくぐらいの逸品を出させて購入してくるとは……。」
「いや、でも私は何もーー」
「いいえ、お嬢様。お話中申し訳ありませんが、お嬢様はあの偏屈で有名なサチコに、オーク汁という賄賂を渡したではありませんか。サチコも喜んでおりました。」
「えっ?ロッテンマイヤーさん、さっちゃんと知り合い?」
「はい、昔馴染みでございます。あのサチコの懐に入れるとは、さすがでございます。」
「ふふふっ、ジョアンちゃんは『人たらし』なのね。」
「えーーっ!?そんなお祖母様〜。」
「わっははは。ジョアンに胃袋掴まれたら、もうどうにも出来んわい。」
「ちょ、お祖父様まで〜。」
「そうだ。こんなのも作ったんです。」
そう言って、ランチに出さなかった手羽の唐揚げを出す。
「これは、マック達が食べていた?そういえば、お嬢様がストレージに仕舞っていましたね。」
「あっ、はい。そうです。」
あの時、しれーっとストレージに仕舞ったのバレていたのね……。恐るべしロッテンマイヤーさん。
「おおーコレはまた、塩味の唐揚げとは違う美味さがあるな。清酒よりもーーー」
「はい……ドンッ……エールです。」
ウィルの話を遮って、グラスまでキンキンに冷やしたエールを出す。
「「「「っ!!」」」」
4人は、まさかキンキンに冷えたエールまでジョアンのストレージから出るとは思わず、驚いて固まった。
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