最終話 推し推し関係
新年度。
2年生が始まる……のはまぁいい。ただ問題はクラス替えだ!
「未来ちゃんと同じクラスになれますように未来ちゃんと同じクラスになれますように未来ちゃんと同じクラスになれますように未来ちゃんと同じクラスになれますように未来ちゃんと同じクラスになれますように」
「わお! 言霊だ!」
手を合わせて神に祈る。普段は神様なんて信じていないけど、こういう時だけ現金なものだ。
「文ちゃん、もう貼られているよ? 見なくていいの?」
「見るのが怖い!」
「もう……仕方ないなぁ。私が見てあげる」
「ママぁ……」
未来ママが先に見てくれるらしい。肝が座ってるね。
「おー! これはこれは……そうきましたか」
「未来ちゃんひどいよ!」
「あはははっ、ごめんごめん」
私がゆっくり目を開けると、未来ちゃんは右手でVサインしていた。
「同じクラスだよ。またよろしくね、文ちゃん」
「〜〜〜〜!! うん!!」
超嬉しい!
私たちの関係は推しと推しの関係。
そして、友達。
さらにその先へ……行きそうで、まだ行かない。
一番甘酸っぱい、そんな時期だ。
「ねぇ文ちゃん」
「なに? ……どしたの?」
未来ちゃんはニヤニヤしたまま、黙ってしまった。
こうして私の顔を覗き込んで、こっちを照れさせるつもりだ。
「その手には乗らないから」
「あー、成長したなぁ。よしよし」
「ママぁ……」
「でもオタクなところは抜けてないね♪」
「アイデンティティだから!」
変わるところはこれから変わっていく。変わらないところは変わらない。
それが私の推しの推しが私である、この数奇な関係性の未来だろう。
◆
6年後
「では『学園百合は突然に』のアニメ第1話アフレコを始める前に、原作者の東山文さんからの挨拶です」
名前を呼ばれて、カラッカラの口の中を感じながら前に出た。
「はっ、はは初めまして! 原作者の東山文です。今回初めてのアニメ化ということで緊張しています。私自身オタクで、声優さん、スタッフさんの実力はわかっているつもりです。なので全任せで大船に乗った気分でもいるんです。変な話ですけど……とにかくこの作品をよろしくお願いします!」
結局のところ、花森学園:高等部は本になることはなかった。
ただそれを改良して、推敲して、その要素も足したこの作品こそ、ついにアニメ化にまで辿り着いたヒット作になった。
「じゃあ主演から挨拶を」
「はい!」
よく、耳にする声だ。
安心するし、任せられるし、何より……世界で一番好きな声だ。
「主人公、七星永遠ちゃんを演じる星ヶ丘未来です♪ 原作を何度も読んでいるので、私の中の永遠ちゃんを演じさせてもらいますね!」
「ふふ、よろしくお願いします」
「……なんか初対面に見えないけど?」
監督さんが首を傾げるのも無理はない。だって私たちは……
「「だって私の推しですから。あと同棲してますし」」
まぁ、6年も経てば変化はこんな感じだ。
ただ、推しへの感情は6年経っても不変だ。
これが私たちの、推し推し関係だ。
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