036 推しと遠足:終
ショッピングを終えた私たちはキッチンカーで軽食を食べたりしている内にあっという間に16時になってしまった。
「うわっ! もう16時じゃん!」
「楽しい時間はあっという間だね〜」
未来ちゃんの言う通り、今日という日は本当に短く感じた。でももし私1人だったら……未来ちゃんが転校してきていなかったら、こんなに楽しめていられなかったと思う。
西陽に照らされながら、私たちは先生の指示に従ってバスに乗り込んだ。帰りは2・2の席ではなく、後部座席で4人広がる形になった。
「あー楽しかった! モモ、絶対また来ようね!」
「……うん」
高畑さんは満足そうな表情だ。貢献したと言えるかは分からないけど、少しだけ影響を与えることはできたみたいなので胸を張ろう。
バスが出発すると最初はガヤガヤとした車内も疲れからか、だんだんと静かになっていった。
それでも夕陽が綺麗だったので、小声で未来ちゃんに話しかけた。
「未来ちゃん見て。綺麗な夕陽だよ」
「…………」
「未来ちゃん?」
隣を見ると未来ちゃんも八田さんも高畑さんも、みんな穏やかな顔をして眠っていた。
「……あっ、写真3枚目撮ってないじゃん」
しまったと思ったけど、それならば……と機転を利かせることにした。
私は人生初の自撮りポーズに悪戦苦闘しながらも、なんとかシャッターを切ることができた。
写ったのは奥から高畑さん、八田さん、未来ちゃん、私。
私以外、みんな寝息を立てている写真だ。
「恥ずかしいかもだけどごめんね。まぁこれも青春ってことで」
誰に聞こえているわけでもないけど、私はそう言って微笑んだ。
未来ちゃんは私の肩にコテンと頭を転がせた。オレンジ色寄りの金髪からすごくいい香りが飛んでくる。
「えへへ文ちゃーん……ずっと推しててね〜」
「すごい寝言だ……」
言われなくても、勝手に推させていただきますよ。誰よりも、強く、深く。
バスは眠れる美少女3人と鳴かず飛ばずのアマチュア小説家を揺らしながら、私たちの学舎へと走っていった。




