035 推した報告
ショッピング開始から1時間経って集合の時間になったので、私と未来ちゃんは約束の場所に移動した。
まだ八田さんと高畑さんはいなかったけど、4〜5分で2人とも合流できた。
「星ヶ丘めっちゃいいマフラーじゃん! アゲ〜」
「八田さんもいいスニーカーだね。可愛いよ〜」
本当だ! 靴変わってる! すぐに気がつける未来ちゃんすごいな。
盛り上がる2人と対照的に、無言の私と高畑さん。何も買ってない様子だから話しかけにくい……。
「……東山、ありがとう」
「え?」
無言のままでいられるかと思ったけど、高畑さんは私にお礼の言葉を述べてきた。当然だけど、お礼を言われるようなことをした覚えはまったくない。
「えっと……私何かしたっけ?」
「推している気持ちは言わなければ伝わないって言ってくれたでしょ?」
「……えっ!? じゃあまさか……」
このアウトレットでしちゃったの!? 実質的にその……愛の告白的なことを!
私の言葉に高畑さんは頬を染めて応えた。思ったより大胆な子だなぁ。
「でも言葉にはしていない」
「ほ、ほう?」
「でも伝わるよ。だって私たちは幼馴染だから。東山と星ヶ丘とは違うかもね」
「なっ……ふふ、意外と挑発みたいなことするんだ」
「言われっぱなしは性に合わない。伊達にゲーマーやってない」
確かに、ゲーマーで負け続きを容認する人なんていないだろう。
アドバイスを求められて、どうしたものかとこっちが考え込んじゃったけど自分たちで解決しちゃったか。
なんだか幼馴染って羨ましいなぁ。もし私と未来ちゃんが幼馴染だったら、いちいち声に出してなくても分かり合える関係になっていたのかな……
……いや! そしたらこの限界オタクな思考がダダ漏れってことじゃん! それはダメだね、引かれるわ。
「おーいモモ、東山〜! 新しいの買った記念で写真撮ろうぜ〜」
八田さんが笑顔で呼びかけてきた。それに応じる高畑さんは、もっと笑顔だ。
まぁ……うん、外様の私が介入せずに解決できてよかったかな。でも背中くらいは押した気がするけど? 私だって負けることは好きじゃないからね!
「マフラーは写りやすいけど、スニーカーはどうしようか」
「ベンチに座って、スニーカー脱げば良くない?」
「なるほど〜、ユウちゃん頭いい!」
「でしょ〜、未来っちも頑張れ〜」
……あれぇ!? なんか仲良くなってない!? いつの間にか下の名前で呼び合ってるけど!?
「おーい文ちゃん、こっちこっちー」
「あ……うん!」
ベンチに座って詰め寄せて、みんなで写真を撮った。
……はは、高畑さんの表情、分かりにくいけど新品のスニーカーよりキラキラ輝いている気がする。
羨ましいけど、幼馴染にしか築けない関係性があるように、私と未来ちゃんにしか築けない関係性があるはず! 私はそこを狙っていこうか。




