033 推しと遠足③
ナガシマのアウトレットは1階に高級ブランド、2階に現実的に買えるブランドが並んでいるように感じる。だから私たちは2階に上がって、4ケタの値札から安心感を得た。
「文ちゃん見て見て! さっきのマフラーに似てない?」
「本当だ! それいいじゃん」
「お値段は……4500円。うん、ありだね!」
未来ちゃんはマフラーを試着して、くるくる回ってみせた。
今さら言うまでもないけど、未来ちゃんは可愛い。だからアウトレット内でも結構注目を浴びてしまっている気がする。
「ねぇ……あの子芸能人かな?」
「かもね。華があるもん」
「でも隣の子は芋っぽいよ」
聞こえているぞ女子大学生っぽい人たち! まぁ未来ちゃんを褒めていたから許してやろう。
「見て見て文ちゃん! このマフラーよく見たらちょっと長いよ!」
「ぁ……本当だね」
「じゃあこんなこともできちゃうね♪」
「ポゥ!?」
なんと未来ちゃんは自分に巻いたマフラーを、私にまで巻きつけてきた。
こ、これ……恋人とかリア充とかがやるやつじゃん!
「どう? 暖かい?」
「はいとっても!」
なんなら背中から汗をかくくらいには暖かいですわ!
もし……もし未来ちゃんとデートなんかしちゃったりして、寒いね〜なんか言って公園のベンチでマフラーを巻いてもらっているうちに手は握っちゃったりなんかして……
「ロマンティックが止まらない!」
「ど、どうしたの?」
「何でもないです」
「そ、そう……?」
急に叫んだら不審者になっちゃうよね。気をつけよう。
「うん、値段もいい感じだし、これを買おうかな」
「いいの? 他にまだまだお店ありそうだけど」
「2人で巻けるのは楽しそうだし、それに私は最初に見つけたこのマフラーに運命的なものを感じちゃうから!」
「運命か〜」
ロマンティストな考えだ。まぁでも買い物って運命だったりするよね。このキャスケット帽子もたまたま目に入っていいなと思って買ったから、運命で買ったものの典型だ。
未来ちゃんはマフラーをレジに持っていって、会計をしたらニッコニコで戻ってきた。可愛い。
「この冬はいっぱい出かけようね。寒くなったらマフラー巻いてあげるよ」
「え……もしかして未来ちゃん、そのマフラーを選んだのって私のため……?」
「ふふ、内緒でーす」
「え、えー! 何それー!」
「あははは」
恥ずかしくて、まともな顔をしていられなかった。




